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学園大戦ヴァルキリーズ  作者: 名無しの東北県人
学園大戦ヴァルキリーズ新小説版 PARTY WITH BORDER LINE 1946
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第一章6

 傭兵部隊の隊長が立ち上がって「前進!」とドーランで黒く塗られた手を前に倒した直後、風切り音と共に彼の上半身は消滅した。硝煙混じりの風によって、今や下半身だけになった持ち主が購買部で購入した特殊部隊用ベレー帽が血の霧と共に流れる。

「アフリカーナーの犬共が」

「違うわ。雇われイワンよ」

 青いマナ・エネルギーの粒子を振り撒きつつ、小丘の向こうから三体のトランシルヴァニア軍ヴァルキリーが燕尾を振って回転しながら進んでくる。

「どっちも同じだって。さっさと片付けて――」

 一人のヴァルキリーが背部飛行ユニットのノズルから粒子の潮流を噴射して前に出た時、彼女の鼓膜を機関銃の連射音が叩いた。左方向からの閃光が硝煙の青い煙を貫き、手を叩くような響きと共に華奢な肢体へと食い込む。

「たったの一連射で!?」

「九時方向から来る!」

 ヴァルキリー達は濃緑色のマナ・ローブを易々と撃ち抜いた三発の七・六二ミリ弾によって大小様々な大きさの肉片をぶちまけ、血の尾を引きながら落下していく仲間の姿から九時方向――左に視線を移す。

「あれは……」

 そこには腰部から伸びる背部飛行ユニットの支持架と背中との間に黒く長い髪を靡かせながら、高速で接近してくるサブラ・グリンゴールドの姿があった。

「リーパー2‐1、アップルジャック」

 薄い色の唇の間からそう漏らす彼女が纏った迷彩服の下には背部飛行ユニットと繋がる支持架を保持する背骨のようなパーツがあり、腰の肌が露出している部分で外部と繋がっていた。露出部から伸びる支持架の先では上下にレイルが伸びていて、強大な浮力と推力を生み出すオーバーテクノロジーの塊がそこにボルト止めされている。

「注意して! 奴は普通じゃない!」

 後続の四体と合流して六体に増えたトランシルヴァニア軍ヴァルキリー達は上下左右に青い光を振り撒きつつ展開し、

「包囲攻撃で行くわよ!」

 背中から左右に伸びる前進翼に金色のスプリングボック(注1)が印象的なドラケンスバーグ学園の国籍マークを描いたサブラを中央に捉え、

「みんなの力を合わせれば!」

 右下方に二体、左上方に二体、

「勝てない相手なんていない!」

 右上方に一体、左下方に一体の布陣で包囲攻撃を仕掛けた。

「残念ですが数の優位を揃えたとしても、圧倒的な質の差を覆すことはできません」

 しかし、地上に真鍮製の空薬莢による豪雨を降らせながら襲い掛かる四方からの銃撃をサブラは尽く回避する。

「避けた!?」

「嘘でしょ……全方位から攻撃してるのに!」

 トランシルヴァニア軍ヴァルキリー達の困惑を耳にしつつ、女性的な丸みを帯びる胸や腰とは裏腹に、改造したタイガーストライプパターンの迷彩服の腹部に彫刻のような腹筋を露にしているサブラは空中でわざと動きを止める。

「今だ!」

「お馬鹿さん! 動きを止めたりするから!」

 ここぞとばかりにヴァルキリー達は大量の弾丸をサブラに向けて銃口から解き放ったが、撃たれた側はその全てを左手に展開したマナ・フィールドで受け止める。直後、火花を上げて跳ね返った銃弾によって右上方にいたヴァルキリーは頭蓋骨の破片と脳漿をぶちまけながら顔の右半分を吹き飛ばされ、左下方にいたヴァルキリーは左足を撃たれて絶叫するなり更なる跳弾で抉られた腹部から薄桃色の腸を溢れさせた。

「化け物が……ッ!」

 回避機動を取り、サブラと同じくマナ・フィールドで辛くも弾丸を防いだ残り四体のトランシルヴァニア軍ヴァルキリーは一旦彼女と距離を開け、宙返りして反転――編隊を組みつつ切り詰めた迷彩服のズボンから張りのある太腿を露出させて飛行する敵へと迫る。

「戦力の四割を喪失してもなお撤退しないのですね」

 サブラは支持架先のレイルに載せられ、上下移動可能な背部飛行ユニットのノズルから青い粒子を噴射する。

「仲間を殺されたまま誰が退くか!」

 そして烏合の衆呼ばわりされたヴァルキリー達からの銃弾が元いた場所に届くよりも早く編隊の下へ滑り込み、耳元を銃弾が掠める恐ろしい風切り音など全く聞こえないかのように平然とした様子で下方から手にしたソ連製PKM軽機関銃の連射を浴びせた。

 PKM軽機関銃の本体下部に取り付けられた二百発入り弾薬ボックス……その中に四発中一発の割合で用意されている曳光弾の緑色の輝きが空に瞬くと同時に、一秒にも満たない間隔を置いて弾丸の射線上にいた少女達が連続して血塗れの肉片へと変わった。


 注1 南アフリカに生息する偶蹄類。

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