第一章5
Q――今回のインタビューも宜しくお願いします。
A――こちらこそ宜しくお願いします。
Q――ここに来る前にできる範囲でトラック戦争について調査したのですが、わかったのはゾエトロープ作戦という単語のみでした。
A――その作戦にグリンゴールド中佐は従事し、タスクフォース・リガを率いてザ・オーへと向かっていました。今お話しているのはその道中で起きた遭遇戦についてです。
Q――作戦の詳細について教えてください。
A――ゾエトロープ作戦は入学から三年後、任務中に発狂し脱走、テロ組織ラミアーズの一員となりザ・オーに聖域を作った元和州学園のヴァルキリーである倉木マツリの殺害を目的として行われました。加えて、この作戦には彼女から直々に『ボクを殺しに来い』と指名されたグリンゴールド中佐にとって、不正規戦闘のノウハウ収集というもう一つの意味を持っていました。
Q――何故シャローム学園は不正規戦のノウハウを収集しようとしたのですか?
A――アルカにおける戦争の形態が一九四三年の二度に渡るヴォルクグラード内戦や一九四五年のラミアーズ戦争によって、ルールに則った正規戦だけではないことが証明されてしまったからです。また、シャローム学園は『人』を何よりも大事にしています。経験を積み、知識を持ち、それを生かせるプロトタイプやヴァルキリーこそが最も重要であり、マナ・エネルギーを用いるオーバーテクノロジー兵器ですらそれらを手助けする存在に過ぎないと考えているのです。
Q――敵部隊とのキルレシオが一対三十から五十という噂もありますが、実際のところタスクフォース・リガはそこまでの精鋭部隊だったのですか?
A――それについては何をもって『精鋭』と称するかによって変わってきます。なぜならそのキルレシオはBFにおける直接的な戦闘だけでなく、戦闘後に虐殺した捕虜まで殺害確認戦果に加えていたからです。
Q――殺害確認戦果のカウントはどのようにして行っていたのですか?
A――死体の耳を切断して数えていました。そのためなのかタスクフォース・リガはしばしば他の部隊から『南アフリカの面汚し』と呼ばれていましたし、装備も他校からの鹵獲(注1)品が殆どで、食料や弾薬も接収したものばかりでした。
Q――タスクフォース・リガを構成していたのはどのような生徒達だったのですか?
A――全員が一九四三年の第二次ヴォルクグラード内戦後、戦犯として母校を追われた旧マリア・パステルナーク派の生徒達でした。表向き彼らは転校生として演劇部の軍事アドバイザーや後方拠点の警備を担当していることになっていましたが、実際には非合法の傭兵部隊としてアルカ各地で今回のような表沙汰にできない任務に就いていました。
Q――当時の隊員で現在も存命の方はいますか?
A――恐らく存在しないと思います。タスクフォース・リガの平均生存率は〇・三%でした。当時約三百名の隊員が在籍していた筈ですが、現在まで生きているのは私が知っている限りグリンゴールド中佐一人だけです。
注1 ろかく。敵の兵器や装備を手に入れること。




