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エピローグ4
アルカ南東部――旧名上山市ことハンガリーの学園都市フェルニゲシュ・コシュティにトランシルヴァニア学園はその校舎を構えていた。
「そうよ。今度は私達の手で英雄を作らなくてはいけない」
学園の一室で一人の女性教員が電話で何者かと話をしていた。彼女の机の上にはヴォルクグラード人民学園関連の調査報告書が広がっている。
「自らの意思によって動くことのない、コントロールできる『完璧な英雄』を」
クローンヴァルキリーの情報に目を通した女性教員の口元が歪む。
「キャロライン、今回はよくやってくれたわ。約束通り、準備が整ったら報酬として貴方の完全なクローンを作らせてもらうわ。名前はビクトリアだったわね……ビクトリア・ブラックバーン。ヴォズロジデニヤ計画の先行試験にもなるし、ちょうど良いわ」
女性教員の視線が赤く『TOP SECRET』と印を押された一枚の書類に移る。そこにはマリア・パステルナークの顔写真が貼られていた。
「全てが始まるのはそう、これからよ」
女性教員こと、シュテファニア・グローフの瞳がレンズの奥で邪悪な光を放った。