前へ目次 次へ 25/285 第三章10 「もしもここ以外に私が生きても良い場所があるのなら、それはとても嬉しいことなんだって……そう思うんだ」 あの日……雲一つない青空の下、風に揺れる緑の中でワンピース姿の少女――かつてのマリア・パステルナークは悲しげに呟いた。 だが、マリアの言葉はエーリヒに向けられたものではなかった。 彼女が見ていたのは、 彼女が悲しげな笑みを送っていたのは、 彼女が言葉を投げ掛けたのは、 エーリヒの隣にいた、自分と同じ遺伝子配列を持つ『弟』だったのだ。