表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園大戦ヴァルキリーズ  作者: 名無しの東北県人
学園大戦ヴァルキリーズ新小説版 サブラクロニクルズ2
214/285

サブラ対メカサブラ 8

 撃ち落としても撃ち落としても迫ってくる大量のフィンガーミサイル群に追われ続けるサブラは急降下し、地面スレスレで高度を上げて白煙の源を自滅に追い込む。

「あれは」

 サブラはなおも追い掛けてくるミサイルを振り切り、体勢を整えるための一時的な隠れ蓑としてエルメンドルフ戦争の際、ヴォルクグラード人民学園空軍の攻撃により大破して海岸に打ち上げられたアトランタ級軽巡洋艦の残骸に逃げ込んだ。

「クラスターミサイル、用意」

 危機を感じたカモメ達が一斉に飛び立った直後にフィンガーミサイルが錆びだらけの船体表面で炸裂するも、装甲そのものは破れない光景をモニター越しに視認したボアズは着陸させたメカサブラの新たな兵装を準備する。

「クラスターミサイル、発射」

 ボアズがボタンを押すと折った右足を前に出したメカサブラの膝から迫撃砲弾のように面制圧を行う大型ミサイルが撃ち上げられ、十分な高度を取るや否や空中で炸裂して凄まじい鋼鉄の豪雨を本来の役割を終えた軽巡洋艦に見舞った。途端に濃厚なコルダイト火薬の悪臭が海岸線一帯に広がる。

「オールウェポン――」

 メカサブラは自分が自ら檻の中に入ったことを悟ったサブラが脱出する前に彼女をアトランタ級の残骸ごと叩き潰すための全兵装攻撃を開始する。

「ファイア!」

 ボアズがモニターの画面に唾を飛ばした瞬間、メカサブラの両手と背部飛行ユニットから大量のミサイルが放たれた。直線と曲線を描いて殺到した白煙は一つの例外もなくアトランタ級軽巡洋艦の残骸へと吸い込まれ、第一撃でその艦橋を倒壊に追い込む。

 ボアズは多目的誘導弾の発射を自動に切り替えると、次に機体に用意されているスペースビームとプラズマ・グレネイドをメカサブラから発射させた。

 スペースビーム、フィンガーミサイル、プラズマ・グレネイドの絶え間ない連撃!

 フィンガーミサイル、スペースビーム、プラズマ・グレネイドの絶え間ない連撃!

 スペースビーム、フィンガーミサイル、プラズマ・グレネイドの絶え間ない連撃!

 フィンガーミサイル、プラズマ・グレネイド、スペースビームの絶え間ない連撃!

 フィンガーミサイル、プラズマ・グレネイド、スペースビームの絶え間ない連撃!

 プラズマ・グレネイド、フィンガーミサイル、スペースビームの絶え間ない連撃!

 プラズマ・グレネイド、スペースビーム、フィンガーミサイルの絶え間ない連撃!

 プラズマ・グレネイド、フィンガーミサイル、スペースビームの絶え間ない連撃!

 フィンガーミサイル、プラズマ・グレネイド、スペースビームの絶え間ない連撃!

 全身が硝煙とフィンガーミサイル及び多目的誘導弾の発射煙で見えなくなるほどの凄まじい全兵装攻撃が開始されてから七分十二秒後、モニターに表示されたオーバーヒートの警告文に気付いて射撃を停止したボアズは大爆発を起こしたアトランタ級軽巡洋艦の残骸からサブラが背中に炎を纏いながら飛び出してくる光景を目の当たりにした。

「まだ生きていたのか……!」

 ボアズは舌打ちする。メカサブラには常時ラジエターをフルに使えるだけのエネルギーを賄えないという重大な欠陥があり、戦闘が始まった場合はオーバーヒートを起こす前に遠距離戦闘によって一気にサブラを倒さなければならなかったのだ。

「冷やさないと駄目か!」

 スペースビームを回避し背中の炎が一瞬で消える素早さでメカサブラに肉薄したサブラは最初に右のエルボーを自分と同じ顔の左頬に叩き込み、その勢いのまま左足を軸として左一回転し右の踵を相手の左側頭部に見舞った。

「クソッ!」

 オーバーヒートを起こし、サブラに近接戦闘に持ち込まれる――これはボアズとメカサブラにとって考え得る最悪のシチュエーションだった。

「それでも!」

 しかしボアズとて策を怠っていたわけではなく、メカサブラは殴打された勢いを利用して身を屈めながら右に一回転、その中で右足に仕込んでいたチェーンソーを展開させて高速回転する刃による足払いを仕掛ける。

「鈍過ぎますね」

 易々と避けたサブラは最終調整が終わっていない状態で出撃してしまったが故に近接戦闘における反応の鈍さを露呈してしまったメカサブラの背後に回り込み、本人同様に形の良い顎下に右手を潜り込ませ、次に手首を左手で掴み、上半身ごと体を左に捻った。

「あまりにも鈍過ぎます」

 ネッククランクと呼ばれる関節技である。

「ロケット全噴射! 脱出!」

 ボアズは必死にボタンを連打するが、モニター内のサブラは体重をかけて無理矢理足裏と背部飛行ユニットのブースターで離脱しようとするメカサブラを地面に押し付け、死に体に追い込んでどんどん首を締め上げていく。

「クソッ……こんな時に……ッ!」

 トビシマ・アイランドの某所でボアズが突然激しく咳き込みながら吐血するのと同時にメカサブラの額の傷口からオイル混じりの血液が溢れ出し、圧潰音と共に首が曲がっていくにつれて内部の回路がショートした両目が点滅し始める。

「百ドルの値打ちもありませんね」

 サブラは完全に頭部が百八十度回り切り、とうとう煙まで立ち昇らせ始めたメカサブラの顔面に躊躇なく右肘を叩き込む。首がもげ、配線だけでだらりと背中側に垂れた。

「私の勝ちです」

 サブラがそう言い放った瞬間、口元を鮮血に染まる手で押さえたボアズの最後の指令を受けて再起動したメカサブラが彼女の胴体にしがみ付く。

「サブラニ死ヲ」

 背中側にぶら下がる頭部から奇怪な電子音声を発したメカサブラは首の断面から数本のワイヤーを放出し、両腕を巻き込むようにして反応が遅れたオリジナルの全身を拘束した。

「サブラニ死ヲ」

 メカサブラの全身から断末魔の絶叫にも思える赤いマナ・エネルギーの粒子が大量に放出され始める。それが一体何を意味しているのかをサブラは瞬時に理解する。

「自爆――ッ」

 サブラがレアの笑顔を思い浮かべた瞬間、彼女はメカサブラ諸共爆発の閃光に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ