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サブラ対メカサブラ 3
足早に今はブラッド・シーと呼ばれる日本海上に浮かぶ島の砂浜を後にしたボアズは逃げ込むようにしてここまで乗ってきた軍用車の中へと戻った。
「先行者こそが成功者になれるとは限らない。後発に追い抜かれることもある……」
ボアズは項垂れるかの如く手汗がたっぷりと染み込んだハンドルに額を押し当てる。
「僕はサブラ・グリンゴールドが憎いわけじゃないんだ」
胸中の素直な感情を吐露する少年の反対側の座席にはS中佐直筆のサインが描かれた彼女の水着グラビア写真がスリーブを三重にかけられた状態で置かれている。ボアズはこれを大切にしている一方、自分の目で直視することができなかった。見るたびに制御不可能な情念が胸中で渦巻き、体調にまで悪影響を及ぼすからだ。
「僕は彼女の大ファンだ。誰よりも応援している。尊敬もしている。でも……!」
ボアズは殴り付けるようにしてダッシュボードの中にある無線機を手に取った。
「目標はトビシマ・アイランドにいる。最終調整は中止、あれを発進させる!」