PROMISE 6
戦闘が終わってから数時間が経過したキブツではBFから戻ってきたシャローム学園の兵士達がヴァルキリーやDRFLA兵士の死体に本校から持参したグレン&グレンダ社のロゴ入り装備をそれらしく乗せて写真を撮り、これから世界を事実上支配する巨大多国籍企業に対して行われるであろう恐るべき情報戦の下地作りを行っている。
「初めまして。Sちゅ……失礼、サブラ・グリンゴールド中佐です」
乾いた敵の血で全身を赤黒く染めたままキブツ内の臨時救護所に足を運んだサブラはフィリピン人衛生兵から手当を受けていたレアに敬礼する。
「私が第一線でやれたのは昔の話ね……今日でよくわかった。さっきはありがと」
「貴方を助けたのはこれが最初ではありません――とS中佐ならば言うでしょう」
衛生兵が場の空気を読んで立ち去るなりサブラはレアに柔和な微笑みを送る。
「レアさん、貴方はS中佐のことをお茶目な女の子だと思っているようですが、彼女はイスラエルという道徳的にも社会的にも正当化されたユダヤ人国家の敵を排除する完全なキリングマシーンです。彼女は貴方のことを友人と認識してはいません」
「自分のことは自分ではわからないものよ」
「わかる必要などありません」
「サブラ・グリンゴールド中佐は道徳的にも社会的にも正当化されたイスラエルというユダヤ人国家の歯車だから、でしょ?」
「随分と不遜な方ですね。しかしその通りです」
苦笑したレアは話題を変える。
「S中佐にこう伝えてもらえる? 『後からアルハンブラで会いましょう』って」
「質問に質問を返してしまって大変申し訳ないのですが、その会費は割り勘でしょうか。S中佐にはこの後もスケジュールが入っていますので」
「いいえ、私持ちよ」
それを聞いたサブラはキリッと音が鳴りそうなぐらい得意げな様子で度が入っているのか入っていないのか本人もよく知らない眼鏡を親指と人差し指で直した。
「たった今、暇になりました」
終劇




