HOMECOMING 5
七時間十二分後。
キブツにある学生寮には爽やかな夏の朝が訪れていた。
「ただいま」
ショー&ナイ・エアベースから帰還したS中佐は部屋に戻るなりテーブルで寝息を立てているシャローム学園の女子生徒にそっとタオルをかける。
「んっ……」
レアが目を覚ました。
「おはようございます。すみません、起こしてしまって。只今戻りました――とグリンゴールド中佐が伝えてくれとのことでした」
無事に戻ってきたルームメイトを見上げたレアは「バカ。遅いわよ」と微笑み、静かな動作でタオルを取って丁寧に折り畳んだ。
「でも許してあげる。無事に帰って来てくれたから――ってサブラに伝えて」
「当然です」
S中佐は得意げな様子で眼鏡を直す。
「わた……失礼、グリンゴールド中佐はアルカ最高にして最強のヴァルキリーですので」
「はいはいわかりました。朝ごはん、まだ食べていないんでしょ?」
「ええ勿論。食べないで来ました。私はレアさんの料理が好きなので」
「下手なお世辞ね。何も出ないわよ」
レアはやれやれと苦笑いしてキッチンへと向かった。
しょっちゅう自分の正体をうっかり口走りかける、少しとぼけたルームメイトの朝食を用意するために。
終劇