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学園大戦ヴァルキリーズ  作者: 名無しの東北県人
学園大戦ヴァルキリーズ新小説版 RAID ON FINAL FRONT 1950
188/285

エピローグ3

 フォートナム・アンド・メイソンのビスケットを摘みながら、三人のヴァルキリーは会話を紡ぐ。

「ソノカ、色々悩んでたみたいだけど、もう大丈夫なの?」

「はい」

 キャロラインに対してソノカは素直にそう答え、コーヒーカップの波面を見る。

「守るものや大切な人がいなかったら、戦っちゃいけないんじゃないのか……そう思って悩んでいたけど、そんなことはないってわかりました。楽しいんです。戦って人を殺すことが。そうやってお金をもらえる。今回の戦争を通して、私はいかに自分が幸せな立場にいるかを実感できたんです」

「ソノカは変な漫画や小説でも読んだのかな。平和な社会で作られる戦争を題材にした作品を読むのは当然戦争を知らない人達だ。そういう人達は『大金が欲しい』とか『人の手足を千切りたい』という、実際の戦場においてはリアルな戦う理由に拒否感を示す。守りたい人のため、大切な場所のため、そういうわかりやすくて身近なものじゃないと受容できないんだよ。決して悪いことじゃない。住む世界が違うからね」

 ノエルは顎に手を当ててそう言い、

「さて、これからの未来の話をしよう」

 反対側に机を挟んで腰掛けたキャロラインを見た。

「数分後にドアがノックされ、部屋を出るとそこにはエーリヒ・シュヴァンクマイエルが立っている。エーリヒは君を労い、ゆっくり休むように言う」

 ノエルは続ける。

「エーリヒはダークホーム社を再建してはもらえないかと君に言うだろう。君はブリティッシュ・エアウェイズの飛行機でロンドンの自宅に帰り、ビールとフィッシュ&チップスを嗜む。そして暫く休んだあと、両手で数え切れないほどのゼロが付いた銀行の預金残高を見て驚く」

「それはありがたいことなんだけど……私が戻ってくるまで貴方達はどうするの?」

 キャロラインは両手で髪を掻き上げてノエルを見た。

「アルカにはもう敵がいないじゃない」

「中小PMCを潰してもしょうがないから、スピリットウルフの社内でローテーションを組むよ。私もソノカと殺し合ってみたいしね」

 ノエルがソノカに視線を向け、ソノカはウィンクを返す。

「休んでいたら……戦場に戻る気が無くなってしまうかもしれないわ」

 キャロラインは胸中の不安を吐露する。

「よくわかるよ」

 ノエルはキャロラインに相槌を打つ。

「オフの日に家にいると、オフィスでペンを走らせて朝の八時から夕方の五時まで働く仕事の方がいいのかなと思うわ。アルカで戦うより多くのお給料をもらえるし……ただ自分の中のサイコパスな部分が『平和は退屈』、『退屈は嫌だ』って言うの。一日中部屋で椅子に座っているのなんて嫌、もっとナイフで人を殺したいって……」

 そう話すキャロラインに向けられるノエルとソノカの視線は、古い友人が誰にも話せない悩みを吐露するのを見つめる人間のそれに似ていた。

 やがて小奇麗な取調室のドアが小さくノックされた。コンコンという音が部屋に響く。

「でもね、私はこの仕事が好きなの。好きなことをしてお金をもらっている。それなら結果を出さなきゃいけないわよね。結果が出なかったら、私をここまで評価してくれたエーリヒをがっかりさせちゃう。アルカの評判だって落ちるわ。アルカで戦えるのはとびっきりクールなウォーリアーだけなんだから。今はエーリヒに誘ってくれてありがとうとは言わない。だけど、いつかあの人の首にナイフを突きつけて『誘ってくれてありがとう。見ての通り正解だったでしょう?』と言いたいの。素直にそう思う」

 キャロラインは立ち上がり、背を向けて肩越しに二人を見る。

「じゃあね。また冬にこの場所で会いましょう。それまでしばしお別れよ。ソノカもノエルも元気でいてね」

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