第三章8
エーリヒ達はダークホーム社の社屋内をただひたすらに進んでいた。
突然飛び出した敵兵をエーリヒはMP44K自動小銃で射殺する。銃弾を受けた敵兵は撃たれたのとは反対側から血と砕けた骨の入り混じった塊を噴き出し、またある者は弾丸の勢いで吹き飛ばされた頭蓋骨の内部を覗かせて息絶える。
更に進むと長い廊下の奥にパンツァーシュレックチームが現れた。
「隠れろ!」
エーリヒは仲間と力を合わせて横のドアを開けようとする。別の隊員は身を横に投げて窓ガラスを割りながら部屋に入った。
ドアが開くと同時に襲ってきた爆風に押されてエーリヒは部屋の中に吹き飛ばされた。既に室内にはダークホーム社の女性隊員兵がいて、刃渡り一メートルはありそうなナイフの刃を煌かせて襲い掛かってきた。エーリヒは部下の死体を押し退けて立ち上がり、女性隊員に右の肘打ち、次に左アッパーを浴びせた。そして離れ切る前に襟首を掴み、拳銃で頭を吹き飛ばす。
「連続射撃ドリルだ。行くぞ」
部屋を出て狭い廊下を進むエーリヒ達は縦一列で素早く移動し、お互いの頭越しに部屋から出てくる敵を撃つ。狭い飛行機の中で戦うハイジャック対策の訓練が役立った。
パンツァーシュレックチームを排除し、やがてキャロラインの執務室に到着したエーリヒは木製のドアに指向性のプラスチック爆弾をセット、ドアの両脇の壁に肩を押し付け、起爆した。
内側への爆発と同時に、スローモーションとなった世界へと足を踏み入れる。
ゆっくりと一人のヴァルキリーが日本刀を手に襲い掛かってくる――エーリヒは左ストレートを放ち、付き立てた人差し指と中指をカウンターでヴァルキリーの両目に突き入れた。ヴァルキリーは顔面を血まみれにして、絶叫しながらエーリヒを押し倒す。倒されたエーリヒは冷静に体勢を入れ替えると、ヴァルキリーの背中が部屋の中にいるダークホーム社のPMC隊員と自分の中間になるようにする。エーリヒ目掛けて放たれた銃弾がヴァルキリーの背中の肉や背骨を打ち砕き、即座に絶命させた。
エーリヒはそのまま腰のホルスターに手を伸ばして拳銃を抜き、絶命したヴァルキリーの脇の下から奥のPMC隊員目掛けて発砲する。二人を倒し、念のため盾にしたヴァルキリーのこめかみを撃ち抜き、死体を捨てて立ち上がる。
だが狙いを定めたエーリヒが拳銃を発砲するより早く、マナ・ローブを身に纏ったキャロラインは部屋に大穴を開けて空に飛翔していった。
「ふぅ……」
空の彼方へと消えていく青い光を見ながら、エーリヒは緊張感の無い様子で立ち上がる。
「シナリオ通り、と」