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学園大戦ヴァルキリーズ  作者: 名無しの東北県人
学園大戦ヴァルキリーズ新小説版 RAID ON FINAL FRONT 1950
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第二章8

 アルカ南東部。タカハタベルク。

 シュネーヴァルト学園の敷地にダークホーム社の軍用車両が入っていく。

 車列が停止し、先頭から二番目の車両のドアが開く。

「カインは他の者を殺した最初の人間だったわ」

 そう呟いて車中から現れたのは、いつも通りリングでマナ・ローブの上腕部に留めた白衣を靡かせるダークホーム社の最高責任者キャロライン・ダークホームだった。

「そして、主から『汝何をなしたるや』と言われた時――」

 キャロラインはポケットから小さな金属製のケースを取り出し、耳元で小さく振った。そしてケースを開ける。中には二つのサイコロが入っていた。

 サイコロの出目は二と三。合計で五。奇数だ。

「カインは罪を隠すことができなかった」

 部下からMG42軽機関銃を手渡されたキャロラインは、すぐにコッキングレバーを引いて安全装置を外す。ルーマニア製のAK47ことAIM自動小銃を持った他の隊員もそれに準じて安全装置のレバーを動かす。

 キャロライン達は、昼休みで賑やかになっている校内に足を踏み入れる。

「大地から叫ぶ、彼の兄弟の血の声の為に」

 キャロラインが笑顔を浮かべてMG42のトリガーを引き、銃口の先にいた女子生徒を挽肉にすると、虐殺という名の惨劇が始まった。

 銃弾を浴びて千切れた手足が飛び散り、首が転がる。

 逃げ惑う生徒達の背中に銃弾は容赦なく襲い掛かり、一度の銃撃で十数名が絶命した。

 即死できた生徒は幸運だった。右足の千切れた女子生徒が悲鳴を上げて這い、両腕を吹き飛ばされた男子生徒が壁に寄り掛かり、剥き出しになった手の断面を見て絶叫する。

 銃声が何度も響き、肉体の各部位を破壊された生徒の声が途絶え、ぱたりと地面に崩れた。鮮やかな色の動脈血が広がり、木の床を赤に染めていく。

 撃たれた生徒は泣き叫びながらのた打ち回る。何故自分が殺されるのか、彼らには理解できないに違いない。

 撃ちながらゆっくりと歩くキャロライン達の前で、血塗れになった男子生徒が両手を挙げて撃たないでくれと懇願する。

「死にたくないのね。いいわ。生きたくない奴を殺しても……」

 キャロラインはMG42に新しい給弾ベルトをセットし、手の小指側で思い切り蓋を嵌め込んだ。

「何にも面白くないから」

 MG42の銃口を男子生徒に向けたまま、キャロラインは先程と同じようにポケットから金属ケースを取り出し、耳元で振った。

 キャロラインは器用にケースを左手で開ける。出目は二と四。合計で六。またしても偶数だ。キャロラインはトリガーを引いて男子生徒の頭を四散させる。

 二つのサイコロの出目の合計が偶数か奇数か――それがキャロラインの行動原則だ。偶数だったら残虐非道なことをする。奇数だったら社会的に善行と呼ばれる行動を行う。全ての判断をサイコロの出目に委ねてキャロラインは生きてきた。サイコロはフェアだった。どんな人間にも平等にチャンスを与え、平等に地獄を見せる。そして誰も恨む必要がない。だってサイコロが決めたのだから。

 そういう『設定』のキャラクターをキャロラインは演じていた。

 キャロラインは二個の手榴弾のピンを歯で外すと、教室の中に投げ込む。青く丸い爆煙が弾け、爆発音と共に悲鳴が校内に響き渡った。

 ダークホーム社のPMC隊員達は煙の中に足を踏み入れ、生きていそうな肉塊全てに目掛けて軽機関銃や自動小銃の掃射を浴びせる。

 校内に充満した、目と喉を刺すような硝煙の臭気。

 弾けた肉片や血液が加熱した銃身に付着したことで生まれた悪臭。

 それらを鼻腔から吸い込んでも、キャロラインやPMC隊員は表情一つ変えなかった。視覚も嗅覚も既に常人ならばおかしくなっている頃である。

「二階へ行くわよ」

 フロアに自分達以外の生命体が存在していないことを確認したキャロラインは更なる殺害対象を求めて場所を変える。

 警報が鳴り響いた。どうやら瀕死の教師か生徒が警報のボタンを押したらしい。

 廊下の奥から黒い戦闘服を纏い、顔をバラクラバで隠し、バイザー付きのヘルメットを被った公安委員会の生徒が暴徒鎮圧用のライオットシールドを持って迫ってくる。公安委員会は本国の警察にあたる組織だ。

 安全委員は透明だが高い強度を持った盾を構え、横隊を作って狭い廊下を進む。

 更なる殺害対象がパンツを濡らし、部屋の隅でガタガタと震えて神様に命乞いしているであろう二階に通じる道はこの一本しかない。だから、キャロライン達は蟻すら通れないような盾の壁を突破する必要があった。

 三度、キャロラインのサイコロが振られる。出目は三と四。合計で七。

 キャロラインは「固着」と小さく言って、マナ・クリスタルが装着された右手を天井に翳す。青い結晶体が光を放ち、マナ・ローブに纏った白衣が燃え始める。炎の中で背中に飛行ユニットが形成されていき、左右に主翼が伸びた。

「まぁ……」

 本来ヴァルキリーとしてあるべき姿への変身が終わると、キャロラインは両肩のRISからマナ・ダガーナイフを取り外して逆手に構え、廊下を蹴る。

「サイコロの出目なんて……」

 ライオットシールドを横の一閃で切り払い、安全委員の心臓にナイフを突き刺してキャロラインは凄烈な笑みを浮かべた。

「どうだっていいんだけどさァ!」

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