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学園大戦ヴァルキリーズ  作者: 名無しの東北県人
学園大戦ヴァルキリーズ新小説版 DOWN THE RABBIT HOLE 1949
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第一章4

 シャローム学園の最高指導者は生徒会長ではない。表向きはそうであるにしても、実際に学園の運営を行っているのは校舎の地下深くにある一室に立つ三枚のモノリスだった。

 ダビデの星が描かれ、その下にそれぞれ『01』、『02』、『03』と記された漆黒のモノリス。それこそがシャローム学園を支配するX生徒会の面々である。

「アルカへの学園建設。それは国際社会への仲間入りを意味する」

 男声のモノリス01がそう言い、

「ディアスポラ計画の第一段階は無事に終了した」

 同じく男声のモノリス02が紡ぐ。

 シャローム学園の生徒達は一九四八年にイスラエルが建国される以前、グレン&グレンダ社内のユダヤ人達が密かに進めていたディアスポラ計画――ディアスポラとは紀元後七十年にエルサレムの神殿がローマ人によって破壊され、王国再建の夢を断たれたユダヤ人達がパレスチナから世界中に離散したことを指す――によって作られたプロトタイプ達だ。ユダヤ人達はイスラエル建国に備え、将来アルカに作られるであろう母国の学園向けプロトタイプを予め各学園に送り込んでいた。アルカ各校で経験を積んだ彼らはイスラエルが建国されると同時にそれまでの母校を離脱し、イスラエルのアルカにおける代理勢力シャローム学園に強力な即戦力としてアリヤー(注1)を果たした。

「しかし、可及的速やかに計画の第二段階を実行に移さねばならない」

「アンゴラのダイヤモンドはスマイリー・ダイヤモンド社を通してイスラエルに大いなる恵みをもたらすでしょう」

 モノリス02が続け、打って変わって女声のモノリス03がその次に話した直後、部屋の壁に掛けられた大型モニターにアンゴラの地図が映し出された。

「何としても手に入れねばなりません」

 その中ではイスラエルが支援するFNLA――アンゴラ民族解放戦線と、ソ連の後ろ盾を持つMPLA――アンゴラ解放人民運動がダイヤモンド鉱山の採掘権を巡り国土を二分している様子が色分けされている。

「何としてでも」

 このアンゴラにおけるイスラエルとソ連の代理戦争が今、第四次ダイヤモンド戦争として更に代理される形でアルカに持ち込まれていた。

「しかし、アンゴラのダイヤモンドだけでは足りない」

「その通りです」

 モノリス01の発言にモノリス02が同調する。

「アルカの全校、いえ全世界にイスラエルは生存のためならばあらゆるオプションも躊躇しないことを教えなければなりません」

 モニターの画面が切り替わり、今度は大量の顔写真が表示された。

「然らば、その教えは死に至る痛みをもって」

 モノリス03のその言葉は、アルカ全土に潜伏中のモサド工作員達が行動を開始することを意味していた。そして今この瞬間、ヴォルクグラード人民学園に在籍する多くのプロトタイプやヴァルキリーの不条理かつ計画的な死は確定事項となったのである。


 注1 ユダヤ人のイスラエルへの移民。ヘブライ語で『上る』を意味している。

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