第一章3
Q――車中で恐縮ですが、早速お話を聞かせてください。
A――お話通り積極的な方ですね。何からお話しましょう?
Q――貴方がサブラ・グリンゴールド中佐なのですか?
A――いえ、私は彼女ではありません。私は……そうですね、便宜上『S中佐』と名乗らせて頂きます。機密保持の意味もあり、せっかく来て頂いて申し訳ないのですがグリンゴールド中佐に直接インタビューを行うことはできません。しかし、彼女のことをよく知っている私が代わりに応じさせて頂きます。
Q――S中佐とグリンゴールド中佐はどのようなご関係なのでしょうか?
A――姉妹同然の付き合いがある親友同士です。彼女は優れたノンフィクション作家である貴方に是非とも戦争の真実を書いてほしいと話していました。
Q――光栄です。しかし、それは何故なのでしょうか。それこそ秘密が外部に漏れてしまう可能性もあるのでは?
A――貴方が真実を書くことで、イスラエルは自らの生存のためならばあらゆる選択を躊躇せず、例え全世界から嫌われてでも生き残る国家であることを少しでも外部にアピールできるからです。そして、それは結果として我が国の国益にも繋がるのです。
Q――なるほど、わかりました。しかしイスラエルとソ連がアンゴラのダイヤモンド採掘権を巡ってアルカで戦った第四次ダイヤモンド戦争は極めて謎の多い戦いでした。情報が錯綜し、一体どれが真実なのか誰もわかっていないのが現状です。
A――第四次ダイヤモンド戦争は、公式記録にはシャローム学園のタスクフォース・ハヘブレとヴォルクグラード人民学園のタスクフォース599がホテル・ブラボーをBFとして戦い、前者が勝ったと書かれています。ええ、公式記録には。