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学園大戦ヴァルキリーズ  作者: 名無しの東北県人
学園大戦ヴァルキリーズ新小説版 DOWN THE RABBIT HOLE 1949
122/285

プロローグ

 暗黒大陸アフリカの南西部にアンゴラという国がある。

 多くの人間が地図上でしかその名前と存在を知らない国家のとある川では、まだ十代にも満たない黒い肌の子供達が膝下まで泥水に浸かって石とそうでないもの――ダイヤモンド――を一日中ふるいにかけていた。

 棍棒を持った男達に監視され、子供達がいつ終わるともしれない労働に従事していると、彼らのいる川を見下ろす道路に数台のピックアップトラックが現れた。荷台にはタンクトップから筋肉質の黒い腕を覗かせ、象牙や猛獣の骨で装飾された『世界最小の大量破壊兵器』ことソ連製AK47自動小銃を膝の上に置く民兵が過積載されている。

 錆び付いた車列が停車するなり、先頭から二番目にいたピックアップトラックの荷台に取り付けられたM2重機関銃が唸りを上げる。銃弾が鋭い悲鳴を上げてアフリカの暑く乾いた空気を切り裂き、死と破壊の凄まじい炸裂音を轟かせる。瞬く間に切断された子供達の枯れ枝のように細く華奢な手足が泥水の中に音を立てて落ち、薄い茶色の波打つ水面に赤が広がっていった。

 別のピックアップトラックの荷台から降りた民兵達は心から楽しげな歓声を上げて眼下の子供達に銃撃を加えた。七・六二ミリ弾が子供の狭い額を貫き、後頭部に赤黒い噴火口を穿つ。水を跳ね上げて逃げ惑う子供達の顔に生暖かい血が降りかかり、彼らは汚れ切った川に浮かぶ自分と同い年の死体が大きく見開いた目に恐怖した。

「お前達には我々が与えたノルマを守りダイヤモンドを掘る義務がある!」

 サングラスをかけ、ベレー帽を被り、ソ連から支給された軍服に身を包むMPLAことアンゴラ解放人民運動の指揮官は拡声器越しにそう叫んだ後、乱暴に顎を動かす。

「しかし、お前達は与えられたノルマを達成していない!」

 目に染みる硝煙で瞳を潤ませ、火薬と死臭で激しくむせる一人の子供が民兵に両脇を抱えられて道路まで連行された。

「だから今日は情けないお前達に喝を入れに来た!」

 指揮官は川の中で恐怖に震える子供達を怒鳴りつける。

 一方、民兵に連行された子供の手は丸太の上に置かれ、

「半袖がいいか? 長袖がいいか?」

 刃全体に凝固した血がこびり付いた鉈を手にする民兵はそれを見てサディスティックな笑みを浮かべる。子供は震える唇を噛み締め、ズボンの裾をきつく握り締めた。

「ノルマを達成できなかったらお前達の腕を切り落とす!」

 そして水を打ったように静まり返った川辺に子供の悲鳴と、骨と肉が強引に叩き切られる鈍い音が響き渡った。

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