第三章6
「変えようとするだけ無駄なのよ!」
「だとしても! そうだとしても!」
エレナは左下から回り込むようにして突進、空中でミーシャに全身そのものを叩き付けるかのような左フックを叩き込んだ。拳に肉が砕け、骨の軋む感覚が走る。
「人の本質は悪だとグリャーズヌイ特別区で証明した女が、何を寝言を!」
エレナは口から大量に吐血しながら右フックを放ったミーシャの懐に潜り込み、身を屈めたまま右腕を引き、指を小指側から一気に折る。
「寝言と笑え! 好きに言え!」
自らの放出する粒子でプラチナブロンドの髪を赤く照らすヴァルキリーはありったけのマナ・エネルギーを引いた右手に集中させ、裂帛の気合と共に突き出した。
「私は信じ続ける!」
エレナの顔が熱い返り血を浴びて汚れるのと同時に黒いオープンフィンガーグローブで覆われた右手がミーシャの背中から肉を砕いて飛び出す。
「私はどうしようもなく!」
エレナのマナ・クリスタルに亀裂が入った。
「ろくでもないアルカという土地にあっても!」
叫びの声量が大きくなり、
「明日は輝くものだと信じている!」
エレナのマナ・クリスタルに更に大きな亀裂が入っていく。
「誰にどう言われようと、誰にどう思われようと、私は信じ続けてみせる!」
「勝手に……言って……」
そしてエレナが張り裂けんばかりの声で叫んだ直後、限界に達したマナ・クリスタルとミーシャの肉体が木っ端微塵になって四散した。