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第一章9
アルカ北西、ブラッド・シーの海上をガーランド・ハイスクールの艦隊が進んでいる。
「もうこんな時間か」
緋色に染まる世界で直援を行っていた艦載機がエセックス級大型空母に戻っていく様子をアトランタ級軽巡洋艦の甲板上から目にした水兵は一日の終わりを悟った。
「この戦争はいつ終わるんだろうな」
「グレン&グレンダ社に投書でもしてみたらどうだ?」
ヘルメットを被りライフジャケットも羽織った水兵達は有り難いことに今日全く出番のなかった二十ミリ機関砲のすぐ横で会話を交える。
「冗談はやめてくれ。ヤマガタがアルカになったのはあの会社の上役連中が投げたダーツの矢がたまたま地図に当たったからだって聞いたぜ」
あながち嘘とは言い切れない噂話に揃って苦笑した二人が備品の片づけを始めた直後、彼らのすぐ後ろを見慣れない顔のメンテナンスクルー達が話しながら通り過ぎていった。
「なぁ」
「どうした?」
水兵の一人が訝しげな表情になる。
「あいつらの訛り、どこか変じゃなかったか?」