夢のあと(私がみた夢10)
こんな夢を見た。
私は一人の女だった。
城の近くで花を摘んでいた時、一人の男と出逢った。
男は私を姫とは知らず、地主の娘と思ったようだった。
「私はこの花や草で染物をしているのです」
男はそう言って花を摘んでいた。
私は男から色々な話を聞いた。
花の話、染物の話。色々な話を聞くのはとても楽しかった。
だから私はよく城を抜け出し、男と会っていた。
「一緒に、いたいのです」
そう言うと男は驚いて、黙ってしまった。
「大丈夫。父も母も、分かってくれました」
「…きっと、苦労をかける」
私は首を横に振った。
「二人なら乗り越えることが出来るはずです」
辛いこともきっと大丈夫。
男は頷き、覚悟を決めたようだった。
「君を守るよ」
そう言って男は私の手をぎゅっと握った。
幸せになるはずだった。
貧しくとも慎ましやかに暮らしていければ良いと思っていた。
でも、そう言ってくれた人は、もういない。
まるで全てが夢のように消えてしまった。
私の覚悟を信じなかった父は、あっさりと男を殺してしまった。
目の前で愛しい男の首が飛んだ。
呆然とする私を愛しい男が床に転がって見ていた。
「いやぁぁぁぁ!!」
私は荒れ果てた小さな家で、愛しい男の首を抱きしめていた。