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プロローグⅣ

ここはホワイトハウスの広々とした豪華なバスルームだった。周囲の床や壁には漆色に塗られた大理石のタイルがきれいに埋め込まれ、6つほどの洗い場が横一列に並んでいた。その反対側には真っ白な汚れ一つない広大な浴槽が、かなりの面積を占めていた。広さは15名くらいなら余裕を持ってつかれそうな広さだ。


 それから、しばらくすると、裸姿のルリアとヤマトがここへやってくる。ヤマトは後ろにくくっていた髪をほどいていた。


 彼女達はクラークスから、今からご馳走の支度をするから、多少の時間がかかるので、一時間程度、バスルームに入るなり適当に時間をつぶしていてくれと聞かされていた。だから、彼女達はバスルームにでも行って、ゆっくりと体を休めることにしたのである。


「それにしても、侵入者である私達をいきなり招待しては、こんな広いバスルームに案内してくれるなんてクラークスさんはよほどの物好きだったのね」


 ルリアはこの広い浴場を一通り見回して、自身の視界の中に収めると、洗い場の席について体を洗い始める。

 すると、背後から自身の胸をいきなりヤマトに触られ、ヒャッ! と小さい叫び声を上げるのだった。


「それにしても、大将のおっぱいはまだまだちっぱいなんだなあ」

 とヤマトはにやにやした様子でルリアの胸をモミモミしながら言った。

「や、止めなさい! ヤマト! これはわいせつ行為よ、犯罪に値するわ!」

 ルリアはすっかり赤面してしまい、慌立たしくじたばたした様子で言った。彼女は自身の顔つきやルックスには相当の自信を持っていた。しかし唯一として、この胸の大きさだけが許せなかったのだ。

「いやいや、こうすることによって胸の発育が良くなることもあるんだぞ大将さんよう。良いではないか、良いではないか」

 相変わらずヤマトはにやにやした表情で、彼女の胸をモミモミし続ける。

「良くないわよ! だからと言って、そんなことをし続けられる正統的な理由にはならないわよ」

 ルリアは陵辱された少女のような恥じらいの表情を浮かべ、相変わらずじたばたした調子で言った。

「これは試練だ! 大将! 自分のコンプレックスを乗り越えるための険しい試練だ!」

 と擬似正論的なことを言いつつも、彼女がこの状況を楽しんでいることは言うまでもない。

「もう、我慢の限界よ! いい加減にしなさい! ヤマトの馬鹿!」


 壮大なビンタの音がこの浴場全体に響き渡るのだった。




「はあ……、それにしてもあまりにも破格の待遇だわ」

「まあ、確かに妙に太っ腹だよな。大統領」


 ルリアとヤマトはこのホワイトハウスの使いの者から個室の鍵を渡されると、案内通りに自分の個室の元に向かうのだった。そして、指定された自分の個室を見つけると、鍵を開けて、内装を確かめる。二人分の大きさのあるベッドが2台、パソコン付きの仕事用デスク2台配置されていた。他にはテレビに冷蔵庫、小さめのキッチン、ユニットバスが装備されており、広さは普通のホテルの倍くらいの広さがあった。


「それにしても、いくらただとは言え、ショートケーキを42個もたいらげるなんて、よほどの腹ペコさんなのね、あなたは。太っても知らないわよ?」


 ルリアはいじわるそうに呟く。彼女は疲れているのか、部屋のドアを開けると、すぐさまベッドの上に体を横たえるのだった。


「大丈夫だって、それくらい。私はこれでも着やせするタイプなんだ」


 ヤマトはそういうと、髪の毛をほどいて、ルリアの隣にあるルリアと同じ種類のベッドに体を横たえるのだった。


 それを訊いたルリアはヤマトのやたらめったらに大きい胸を見て、どうやら、栄養の半分以上はあそこに行っているみたいねと、自分の小さな胸を気にして、嫉妬の海にどっぷりつかるのだった。


「……それは良かったわね」


 ルリアは冷たく言い放ち、そっぽを向いた。それは、まるで腹を立てているようで、あまり感じが良くなかった。


「大将……ちょっと、そんなに怒らなくても。悪かったよ、(何でかはしらないけど)私が悪かったよ」


 ヤマトはあたふたしながら、何の理由もなく謝罪し、勝手にルリアのベッドに侵入し、ルリアの体を強く抱きしめるのだった。


「ちょ、ちょっと何勝手に私の布団の中に入ってんのよ! ていうか、私のどこ触ってんのよ、ヤ マ ト!」


 ルリアは手足をじたばたさせて、ヤマトの抱擁ほうように抗うのだった。


「いいでしょ、大将。今日くらい一緒に寝てくれても。私、小さい頃から愛用しているクマさんのぬいぐるみが無いと、昔から一人で眠れないんだよ。だからお願い」


 ヤマトはルリアに泣きついた。ルリアを抱きしめる両腕の力がさらに強くなる。


「仕方がない、甘えん坊さんね。いいわよ、好きにしなさい」


 ルリアは珍しく弱音を見せるヤマトを見て、口元に小さな笑みを浮かべながら、体をヤマトの方に回すのだった。そして、ヤマトの頭を右手でそっと撫でてやる。


 時計がAMの5:00を回った頃だった。


 窓辺から黄色い日の光が純白なベッドの上に静かに差し込む。ルリアとヤマトは暖かな日の光に照らされて、お互いに抱き合いながら、幸せそうに眠るのだった。彼女達がまた再び目を覚ますのは、おそらく、AM10:00くらいになるだろう。


 彼女達が起きる頃、その頃にはすでに別の物語が進行している。この物語の表の主人公は江戸川春人であり、彼女達はこの物語の裏の主人公役にすぎない。

 そして、プロローグが終わり、いよいよ本編が始まるのである。



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