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トレスティン魔法学院Ⅰ

『The gate of ability』。

 それは世界史上初のVRMMOである。パソコン内でソフトを起動し、付属品であるバイクのヘルメットのような脳波を測定する装置『ヘッドデバイス』のUSB端子をパソコン本体につなぎ、使用者がそれを頭に装着することでゲームをプレイすることができる。なお、使用者がプレイ中に第三者によって『ヘッドデバイス』を外された際には、使用者の意識は現実世界に強制送還され、ゲーム内での使用者はその場でフリーズ状態の形でゲーム内に残存することとなる。その場合、使用者が再び『ヘッドデバイス』を装着することによって、フリーズ状態が解除され、再びフリーズされた地点からゲームを続行することが出来る。ただし、使用者がフリーズ状態になった際であっても、ゲームはそれに関わらず進行されるため注意が必要である。

 このゲーム内での体感時間はリアルタイムの4倍早く、ゲーム内での1時間が、リアルタイムの15分間に相当する。

以上がこのゲームについての詳細である。これらのことに留意してゲームを正しくプレイしていただきたい。

 

 ――お試しクエストお疲れ様です――

 抑揚のない女性ボーカロイドの声が、俺の耳に冷たく響く。


 俺、江戸川春人えどがわ はるとは、あのダンジョンから抜け出すと、暗闇の中でお試しクエストの結果を待っていた。

 自分の姿ですら確認することがままならないこの暗闇の中で、何故、3Dホログラムで作り出された女性ボーカロイドの姿が視認出来るのかについて疑問に思いながら。


 女性ボーカロイドの顔立ちは人工的に作られただけあって、現実世界のグラビアモデルや女優とは一線を画すほどに、浮世離れした可愛らしい顔立ちだった。肌も文字通り透き通るほどに白く透明感があり、髪は短く光沢のある薄いピンクで、小柄な体格をしていた。


 ――ただいま、結果発表致します。あなたは、今回のお試しクエストにおいて非常に高成績を叩き出しました。以下が詳細になります――


 女性ボーカロイドはそう言うと、どこからか分からないが背後から横長の看板を取り出し、俺に見えるように両手で持って手前に差し出した。

 どうやら、この看板に俺のクエスト結果が記載されているらしい。


 俺は注意深く看板を確認した。


 総合成績評価S、目標クエスト達成時間40分、あなたのクエスト達成時間7分38秒、あなたの戦闘能力B、あなたのクエスト達成時間SSS、あなたの判断力及び行動力A、測定された攻撃力F、測定された防御力S。以上でクエスト結果を終了致します。


 ――クエスト結果をお読みになられましたか? ――

 女性ボーカロイドは首を傾げた。


「ああ、大丈夫だ。問題ない」

 ――それでは、ただ今よりゲームを開始致します。もし、何か分からないことがあればトランス・テスラのボタンを押して【selection】から【question】をタッチしていただけることで私がいつでも応対致しますのでよろしくお願いいたします――

 トランス・テスラ、それはスマートフォンのような形状だが、ディスプレイ画面がなく、表には小さなボタンがあるだけの機器で、そのボタンを押すことによって、プレイヤーの視界にゲーム画面が表示されるようになっている。


 プレイヤーの視界にゲーム画面をそのまま移植したものだと考えれば分かりやすいはずだ。

 だから、トランス・テスラにはディスプレイ画面がないのだろう。


 女性ボーカロイドは一言も噛まずにスラスラと説明をすると、深々と丁寧なおじぎを済ますのだった。

 

 すると、俺の視界が急に真っ暗になりボーカロイドの姿が霧のように消えてしまうのだった。 

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