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洋館に忍び寄る怪人Ⅹ

「それにしても、髪をくくっているヤマトもいいけど、髪をほどいているヤマトも可愛らしくていいわね」

 ルリアはヤマトに抱きついた状態で、上目遣いをしながらヤマトに笑顔を送った。


「うーん…………、そう言われても」

 ヤマトは照れくさそうに、髪をいじりながら言った。


「特にその胸は反則よ、 は ん そ く ! 一体何をしたらそんなに大きくなるのかしらねぇ?」

 ルリアはヤマトに抱きついていた腕を開放すると、ニヤニヤしながらヤマトの胸を服の上からではなく、直接肌の上から人差し指で触れながら言った。ヤマトはルリアが腕を開放したと同時に、ルリアに抱きついていた腕を開放する。


「さあ、遺伝じゃない? 特に何もしていないし」

 唐突なルリアの問いに、ヤマトは首を傾げた。

「へぇ、遺伝なのね。それは残酷な答えだわ……」

 ルリアはヤマトの答えに、深い溜め息をついた。

「いやいやいやいや…………特に何もしていないとは言っても、本当に何もしていないわけじゃないんだぞ」

 ヤマトは、落ち込むルリアを何とか励まそうとして、あたふたしながら言った。


「本当に? 何か秘訣でもあるの?」

 それを聞いたルリアは、サファイアブルーの瞳を無邪気な子供のように輝かせながら尋ねた。


「例えば…………、よく食べること……とか」

 ルリアの唐突な問いに、万全な答えを準備しきれていなかったヤマトは、自信なさげな苦笑いを浮かべて答える。


「それはアンタだからでしょうが!」ルリアはヤマトのいい加減な答えに、鋭い突っ込みを入れた。「そもそも、あんなに食べてスタイルを維持できるのは、遺伝という言葉でしか説明できないじゃない。全くアナタの遺伝がうらやましいわ」


「それなら、私もルリアの遺伝がうらやましい!」

「何で? どうして私の遺伝がうらやましいの?」

 ルリアは、ヤマトの発言を不可思議に思ったのか、急に怪訝けげんな表情をして尋ねた。

「それは……、ルリアの白い肌だったり、そのブルーの瞳だったり、人形のように整った可愛い顔だったり、本当に女の子らしいから」

 ヤマトは面と向かって、少しも恥ずかしがる様子もなく堂々と言った。


「……そ、そう……、それは、ありがとう」それを聞いたルリアは、まるで自身の容姿を直接褒められた気がして、顔中をりんごのように真っ赤にしながら、恥ずかしそうに言った。「それにしても、私とヤマトが融合したらルックスは完璧になれるのかしらねぇ?」

「い……いや、それは物理的に無理だろ」

「ちょっと言ってみただけよ。もし、私とヤマトのルックス的な長所、例えば私の顔、肌、瞳、ヤマトの身長、身体、これらが上手く合わさればルックス的には完璧なのかしら?」

 ルリアは、面と向かって、しかし、どこか遠くを見ているかのような、キョトンとした表情でヤマトに尋ねた。

「確かに、そう言われてみればそうだよな。高身長に抜群のルックス、まさに文句の言いようのない完璧なルックスなんじゃないか」

「もしも、私がこの世に生まれ変われるのであれば、こんな美人に生まれ変わってみたいものだわ」

「そこまで、ご自身の身体からだに不満あり!?」

「別にそういうわけじゃないわよ。ただ、言ってみただけ。『美人になって生まれ変わりたい』なんて、全ての女性の希望に違いないのだから。ただ、私のママは顔だけでなくスタイルも良かったわ」

「それじゃあ、ルリアの身長も胸もまだまだ可能性ありってことだよな?」

「さすがに、身長は厳しいかもしれないけれど、確かに胸の大きさは何とかなるかもしれないわね。でも、どうやったら胸が大きくなるのかしら?」

 ルリアは何か考え事でもするかのように、あごに手を当てて言った。


「さあ……、医者じゃないんだからそんなこと分かる訳ないだろ。それじゃあ、例えば風呂場の時みたいに私がルリアの胸をみまくるなんてのはどうだ? 一説ではそれにより乳腺が刺激されてバストアップにつながったって話もあるらしい」

 ヤマトはキツネのようにニヤリと不気味な笑みを浮かべた。


「それは駄目ね。例え、医学的に正しかったとしても、次にそんなことしたらビンタ一発じゃ済まされないわよ」

 ルリアは片手に拳銃の形を作るとニッコリと笑って、人差し指の銃口をヤマトに向けながら言った。


「いや~、それは参ったなあ。まあ、もし私が必要な時があれば、その時はいつでも呼んでよ。

必ず力になるから」


「ありがとう、感謝するわ」ルリアは満面の笑みを浮かべた。「ところで、ヤマト? 私は少しついでとして水着の方を買いに行きたいんだけどどう?」


「でも、まだ4月でだぞ? ちょっと水着を買うには早すぎる気がしないか?」

「いいのよ。今の方が安くてちょうどいいじゃない」

「そういうものなのか?」

「そういうものなのよ」


「でも、私……かなづちなんだけど……」


「えっ、そうなの? 大丈夫よ。それなら私が教えてあげるから」

 ルリアは自信満々の表情で言った。


「でも、私……一回も学校で水泳の授業を受けたことがないんだけど」


「何で?」

 ルリアはヤマトの一言に思わず目を丸くする。


「だって、震災とか色々なことがあって、水が怖かったから。トラウマでしかない……。だから、中耳炎をわずらっていると嘘をついて水泳の授業を見学していたんだよ」

 ヤマトは深刻そうな表情で呟いた。


「それじゃあ、プールに入ったことは?」

「ない」

「水着を着用したことは?」

「ない」


「うわぁ、もったいなぁ。せっかく、そんな抜群のスタイルをしているというのに、水着を着れないなんて勿体無いわ。でも、私が教えてあげるから安心していいわよ。水泳は私の得意科目なんだから!」

 ルリアはほとんどない胸を張って、腰に手を当てながら自信満々に言った。


「水泳が得意なのは、水の抵抗となるある部分が小さいから?」

 ヤマトは、ルリアの胸に視線を合わてニヤニヤしながら尋ねた。

 その後、指摘されて顔中が赤くなったルリアに腹部を思い切り殴られたのは言うまでもない。


「とにかく、あなたは6月までには泳げるようになるのよ! いいかしら!?」ルリアは、激痛に腰をかがめて腹部を抑えるヤマトに対し、人差し指をビシッと向けて何かを要求するような強い口調で言った。「それじゃあ、水着のコーナーに向かうわ」


「お……おう」

 ヤマトは硬く片目をつぶって、苦しそうな表情で言った。



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