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洋館に忍び寄る怪人Ⅰ

時刻は今日の午前10時ごろ。


 大統領邸であるホワイトハウスを舞台としてストーリーは展開される。午前10時といえば、江戸川春人が前後を江坂沙姫と天音美架にはさまれて、憂鬱気味に授業を受けている時間帯だ。その頃、ここホワイトハウスの内部では、ある事件が起きているところだった。ただ、事件といっても、人が殺されていたり、物が盗まれていたりするような重大な事件ではない。今のところは。


 今日の午前6時くらいだろうか。ホワイトハウスのポストの中には、ある郵便物が入っていた。それが何時ポストの中に運ばれたのかは定かではないが、それを家内に仕える者がポストから取ってきて、大統領へと手渡しし、大統領が封筒の封を開けて、中身を確認したのがこの時間帯である。彼は封筒の中身を確認したとき、一瞬眉をひそめた。そこにはこんなことが手紙に記されていたからである。『21:17に私はあなたの家内にある【マジェスタンスの肖像画】を取りに行く。楽しみに待っていてくれたまえ。 怪盗四面挿花かいとうしめんそうかより』。【マジェスタンスの肖像画】といえばこの世界を代表する肖像画の一つであり、ちょうど今日、ルーブル美術館に搬送される予定のものである。したがって、どこの馬の骨とも分からないような怪盗などに渡すわけにはいかないのである。ちなみに、この怪盗四面挿花。彼は欧米のあらゆるところの世界的な芸術品を盗みに来ることで有名で、現在世界のマスメディアから最も注目されている人物の一人である。このホワイトハウスには、観光地という側面もあり、【マジェスタンスの肖像画】はホワイトハウス1階内部にあるホワイトハウスキューレーターズオフィスという歴史博物館に展示されている。ホワイトハウスの一日の来訪者数はスタッフ、職員、観光客などを合わせて、平均5000人にも及ぶが、大統領の命令により、今日のホワイトハウスの観光は禁止になり、それを今日の7時頃に大統領が会見のついでとして発表したところだ。


 いつもなら、観光地として大きな賑わいを見せているホワイトハウスも今日はそうはいかないようだ。ホワイトハウスの周囲には特殊警察官のみならず、自衛隊ですら警備にあたっているのだった。


 彼らは、互いに睨みを利かせながら機関銃を両手に携えていたのだ。

 まるで、館内にはねずみ一匹さえ通さないような熱意だ。

 それだけ、彼らにとって今回の任務は重要な任務であるらしい。


「まったく……、なかなかえらい状況になってるわね」


 ルリアは憂鬱そうに窓から外の風景を眺めながら言った。


「ああ、本当だな。大将」


 ヤマトもこの外の厳重な警備体制に驚いたように相槌を打つ。


「何かあったのかしら?」

「さあ? 私もさっき起きたばっかしなんでさっぱりだ」

「まあ、何かあったには違いなさそうね」

「そりゃ、あれを見ればなあ…………ところで大将?」

「何よ?」


「そんなことよりも、早く服を着たらどうだ?」

 ヤマトはにやりと笑みを浮かべながら、未発達なルリアの身体を足元から胸部までなめまわすような視線を向けて言った。


 確かに今、ルリアは下着姿である。白いパジャマのシャツのボタンを全て外して羽織っていることを除けば。

 ルリアのきれいな白い肌がこれでもかと言うくらいにあらわになっている。

 下着の色は上下とも白に近い薄い青色だ。


 指摘されるとルリアの頬は紅葉のように真っ赤に染まる。

「仕方ないじゃない!! 布団の中が暑かったのよ!! ていうか、大将って呼ぶの止めなさい!!」

 ルリアは眉をつり上げ、勢いよく人差し指をヤマトに向けて言った。

「何で?」

 ヤマトは首を傾げる。

「それは…………、何かデジャブを感じるからよ」

「デジャブ? まあいいや、それじゃこれから何と呼べばいいんだ?」

「普通にファーストネームのルリアでいいわ!! 呼んでごらんなさい」

「ルリア……」

 ヤマトは心のこもっていない、ただ言ってみただけといった調子で言った。

「そうよ、それでいいの。ところで、朝ごはんはまだなの? お腹すいたわ……」

 ルリアは途中、力なさげに言った。

「ああ、そういえばもうそんな時間だったな。ちょっと待っていてくれ。私が遣いの者を呼んでくるから」


 ヤマトはそう言うと、歩き出して扉を開けようとドアノブに手を伸ばした。

 

 すると、何者かがドアを開ける。


 ドアの前には黒いスーツ姿の女性が両手にものすごい量の料理を乗せた直径50センチはありそうな巨大なお盆を手のひらに乗せて突っ立っていた。

 

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