表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/48

『The gate of ability』 序章Ⅴ

  鎧をまとった女性の戦士は両手で剣を下段に構えて、こちらに一直線に突進してくる。

 4メートルを超える巨体の割には、素早い身のこなしだ。


 だが、どうだろうか?


いくら素早い身のこなしとは言えど、それは俺の目にはスローモーションにしか映らない。


 走っているときに見える、女性戦士の鎧に覆われていない白くて美しい太ももの筋肉の浮き沈み、コンクリートの地面を激しく鉄の靴で蹴っているときに生じる小さい火花、走っている最中に生じる上体の左右の振動、それら全てが俺の目にはスローモーションに映っている。

 だから、俺はこのレベルの速さの攻撃ならいくらでも回避することが出来るわけだ。


 さて、とにかく俺はどうやってハリセンだけでこの戦士と戦ってやろうか。

 まず、見たところ鎧に覆われてる部分は攻撃が通らないはずだ。

 だとすると、攻撃の通る場所は鎧に覆われていない太ももの部分か、或いは、上腕部しかないだろう。

 まあ、上腕部は少し俺から距離が遠いので太ももの方が作戦としては有効だ。

 今から、この女性戦士は俺を切りにかかるだろう。そして、剣を振り上げて俺を攻撃してくるはずだ。この構えからして。

 そのときに女性戦士は俺が攻撃範囲に入ったのを確認すると、足を止める。

 その瞬間を狙って、俺は戦士の太もも目掛けてハリセンで思い切り叩く。

 これで攻略完了だ。


 俺があれこれ考えている間に、女性戦士はもう俺の目の前まで迫っていた。

 そして、女性戦士の剣を振るう腕がわずかに上へと動く。


 ここだ、この瞬間を狙え!


 俺は素早く右にジャンプして女性戦士の剣の振り上げ攻撃を余裕で回避した。剣の切っ先の風を切り裂くすさまじい風圧が俺の耳をちらとかすめる。


 そして、女性戦士の足元に侵入し、ハリセンで女性戦士の左太ももをハリセンで思い切り叩く。



 

 パァァァァァンという心地良い響きが周囲にこだました。




 勝負あったか?


 俺は期待をこめて女性戦士の体力ゲージを確認する。


しかし、女性戦士の体力ゲージは満タンだ。


 俺はあまりの弱さに思わず愕然とする。

 何だ、どうなっているんだ?

 そして、俺は思わず視界右上の【option】をタッチし、その中にある【status】をタッチして自分の能力値を確かめる。


 HP0・000001、スタミナ10、筋力0・000001、物理攻撃0・000001、魔法攻撃0、物理防御0・000001、魔法防御0・000001、素早さ100000、相手の攻撃によってダメージを受けないスキル、攻撃を与えることに成功した相手のスキルを1分間だけ使用不可にするスキルって…………



 

 弱すぎだろぉぉぉぉぉぉ!




 いくら何でもこりゃねえだろ!

 少数点って何だよ? 小数点って!

 ここまで貧弱なステータス値とか生まれて初めて見たわ!!




 俺は自身のあまりの弱さに絶句し、地面にひざを突いて落ち込んでいると女性戦士の左足から鋭い蹴りが繰り出される。


 俺はその蹴りに対応することが出来ず、そのまま最悪の蹴りが俺の身体に直撃し、時速400キロの速さで俺は後方へとぶっ飛ばされ、そのときに衝突した後ろのコンクリート壁に大きなクレーターを残すのだった。


 耳をつんざくようなすさまじい衝突音が辺りにとどろく。


 もし今の俺に、相手の攻撃によってダメージを受けないスキルがなければ、俺は今頃この場からすぐさま退場していたに違いない。

 とにかく、ヤツとの戦闘は回避すべきだ。

 どうやったって勝ち目がない。

 ここは高い素早さで目的地にたどり着くことを、最優先とするしかないみたいだ。


 俺は、ゆっくりと体を起こすと、相手の様子をうかがった。

 相手は、今にも飛び掛ってきそうな勢いで剣を構える。


 次の瞬間、俺は全速力でこの場から飛び出す。


 女性戦士は俺のあまりの素早さに、視界から俺の姿を思わず見失ってしまう。

 俺はものすごい速さでこの空間から脱出し、そして、横幅1メートル、高さ6メートルほどの細い通路に出た。その通路はまるでどこかの研究所の通路のように、薄汚れたコンクリートに囲まれていた。俺はこの空間から脱出した速さを保って、そのまま移動する。


 先行く道中で、敵と思われるものがフォトンから生成されるが、俺のあまりの速さに、プログラム処理が間に合わず、俺は敵と戦うこともなく難なく目的地にたどり着くのだった。


 俺の目の前が真っ暗になり、『NOW LODING……』の横文字が視界に流れた。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ