『The gate of ability』 序章Ⅲ
『The gate of ability』、アメリカ最大規模のゲーム会社であるICW社によって開発された世界初のVRMMO。
まさかこんなゲームが本当に存在するとはな。てっきり俺はネットの都市伝説の中だけの話だと思ってたぜ。
授業を全て受け終えた俺は、家に帰るとすぐにパソコンを立ち上げ、ネットでこのことについて調べ上げるのだった。
なるほど、これが『The gate of ability』か。
世界初のVRMMO……、ついに、そんな夢のようなゲームが実現できたのか。アメリカはえらい。日本ももう少し頑張るべきだ。そうでなければ、このめまぐるしく変わりつつある2040年の技術革新に追いつけなくなるぞ。
VRMMO、この概念が生まれたのは確か2000年代後半辺りからだったはずだ。
それ以降、VRMMOは未来のゲームとしてフィクション作品で頻繁に登場するようになった。
そして、そのゲームがついに登場した。
これは、間違いなくゲーム業界に名を残す、技術革新となるだろう。
俺は、さっさとパソコンをシャットダウンさせると、ワイシャツを脱ぎ、私服に着替えて、いそいで駅前のゲームショップに向かうのだった。
このときの時刻は17:13、駅近くの学校に在籍している学生の群れや放課後帰りの学生の姿が、コンビニやファミレス、ファストフード店などが立ち並ぶ駅直通の広い大通りで数多く見受けられた。
俺は、自転車で国道からその大通りに入ると、自転車でこいで7分くらいのところにある大きめのゲームショップに入る。
そこには、最新のゲームソフトのほかに、中古のゲームソフトも多数売られている。だから、俺はゲームを買うときはいつもここで買っているわけだ。
今回、俺が欲しいと思って『The gate of ability』。実はと言うと、これは今から1ヶ月くらい前に発表されたばかりのゲームらしいのだ。
アメリカでは、どうだったか知らないが、少なくとも日本ではテレビのコマーシャルや、日本語版に翻訳されたネット上での宣伝活動は一切やっていなかった。
ついでに言うと、ゲーム雑誌ですらこのゲームのことは載っていなかった。
世界史上初のVRMMOというすごい技術が施されたゲームなのだから、普通なら宣伝すべきだったのだ。ICW社は。
それなのに、そのようなことを一切していなかった。
それは、宣伝がなくとも確実に売れるだろうという、企業の自信から来るものなのだろうか?
それとも……、
俺はここで自問自答を中断し、『The gate of ability』のパッケージを確認すると、それを手に取って、レジへ向かうのだった。