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『The gate of ability』 序章Ⅰ

俺は汗ビショになりながら、もの凄い勢いでベッドから飛び起きる。


「何だ……夢か」

 俺は深く安堵した。

  

 まあ、あれが夢でかなり助かったところだよ。

 あれが夢でなかったなら、今ごろ俺はどうしてることやら……、 

 

 俺が何となく平和なこの世界に大空を見上げながら感謝していると、下の階からもの凄い足音を立てながらこちらに何者かが向かってくるのが分かった。

 俺はそれに対し、別に気にとめることもなく、相変わらずもの思いにふけるのだった。


 まあ、この光景はいつものことだから、慣れてしまったんだよ。

 この足音が近づいてくるということは、決まって俺の部屋にアイツが来るという証拠だ。

 何者かが、騒がしく俺の部屋のドアを乱暴に蹴り開けた。


「おにいちゃーん! ご飯が出来たよ! ってゆーか、早く起きろ! …………って、あれ?」

 紹介しよう。

 今、俺の部屋の前で何故か目が点になっている、身長156センチのツインテールの女の子は、他でもない……我が妹、江戸川蛍えどがわ ほたるだ。

「な……何で、おにいちゃんもう起きてんの?」


 蛍は相変わらず目を点にしながら尋ねる。

「別にいいだろ、そんなこと。ちょっと、早めに起きてみたくなっただけだ」

 俺は、視線を蛍に向けながら言った。

「へえー、おにいちゃんにしては珍しいね。ひょっとして、明日がちょっと楽しみすぎて、夜眠れなくなったとか?」

 蛍はニヤリと奇妙な笑みを浮かべながら意地悪く言った。

「いや、それはないな」

 俺はそんな感じでとりあえずスルー。

 今はそんなことに構ってる暇はないんでな。

「な……何だろう、この敗北感は…………」

 何故だか知らんが、蛍は悔しそうにひざを突く。

「どうした?」

「もうなんなのよ、おにいちゃんのくせに……おにいちゃんのくせに」


 蛍はこっちへ振り向く。

 何故か、蛍の目には涙がにじんでいた。

 待て待て、何で泣いてんだよ。

 俺、何か悪いことしたか?


「私よりも友達が少ないくせに、私よりも成績悪いくせに、私よりも走るの遅いくせに……」

 なるほど、俺にどこか馬鹿にされたような態度が許せなかったのか。

 でも、泣くことはないだろう…………。

 そういえば、蛍は人一倍負けず嫌いだったのを忘れていた。

 だから、人一倍負けん気が強く、勉学であっても、徒競走であっても、絶対に誰かに負けないように努力しているんだよ。

 でも、その一方で、他人を見下す悪い癖があって、だから、あまり友達とかは多くないはずなんだよ…………普通ならな。それなのに、何故か友達がめちゃくちゃ多いらしい。


 いつかは、絶対に実態調査してやんよ!


「わかった、わかった。俺が悪かったよ、謝るから」

 俺はベッドに座りながら、両手を合わせて仕方なく謝ることにした。


 俺は何もしてないけどな!


「あれ、何でおにいちゃん謝ってんの? 何も悪いことしてないじゃん」

 蛍は俺を完全に嘲笑して言った。

「嘘泣きかよ!!」

「でも、嘘泣きって言っても私は本当に涙を流しているわけだし、嘘って言うのは、主にそれが事実でないことを指すわけだよね? でも、私は目から涙を流している時点で、泣くという行為を成立させているわけだから、それなのにそれが事実ではない、結局、それを嘘泣きだと言われるのはおかしいよね?」


 蛍は、まるで事前にこのセリフを用意していたかのように、スラスラと言った。

 そんなこと知るか!


「お前、そのセリフ……明らかに事前に用意していただろ?」

「さあねぇ」蛍は口元に笑みを浮かべながら答える。「そろそろ、ご飯だよおにいちゃん。早く来ないとご飯が冷めちゃう」


 蛍はそう言うと、ゆるやかな足取りで1階のリビングへ向かうのだった。


 

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