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第一話 向日葵畑

もし…あなたなら…



少しだけ延ばされた幸せを願いますか?



それとも…また同じタイミングで終わるとしても…もう一度最初からここまでの道のりを歩く事を願いますか?


僕は… 私は…



冒頭部 僕達からあなたに問いかける ー完ー





空が、青く澄んでいる。

目の前に拡がる一面の向日葵。

太陽を向いて咲き誇る姿…黄色と青のコントラスト…おそらく綺麗なんだと思う。


僕が客観的に見てしまうのは、そんな光景に負けない存在感を放つ者が視界に映っているからだ。

白いワンピースを着て、麦わら帽子を被った少女。肩ぐらいの長さで切り揃えた黒髪。太陽の光を吸収したのか?と疑問に思うくらい艶やかに光っている。


強い日射しに目を細めながら、畑の中で向日葵を眺めている少女に声をかける。


茉莉まつり、今日は日射しが強いから…あまり長居は出来ないよ!」


その少女の名は茉莉。僕の義理の妹だ。親が再婚したのが、10年前の夏の頃…。僕は8才、茉莉は6才だった。僕たちには共通点があったから…だからすぐに仲良くなれたんだ。


れんは、暑いの苦手だからね…」


「僕は、我慢しようと思えばそれなりに出来るんだ。ただあんまり意地を張って、茉莉が日焼けするのは…好ましくない。それに苦手なのは、茉莉もじゃないか…」


軽口を利いてくる茉莉を嗜める。

この子は本当に負けず嫌いというか…。

茉莉の不貞腐れた表情。僕の一番好きな表情。正確には、この表情から笑顔に変わる過程が大好きなんだ。


「茉莉…とりあえず、そこで待ってて」


「えっ!!なんで…?もうそろそろ帰るって話のつもりだったんでしょ…」


「まー、そうなんだけどさ…」


「だったら、私が蓮の方に行けばいいじゃん」


僕が立っているのは、畦道。すぐ近くには自転車…茉莉の言う通り、帰るなら茉莉がこちらに向かってきた方が良い。

そんな事は僕でも理解しているが、ここは…僕が『行かないといかない』場面だったはずだ。


茉莉が、こちらに向かおうとしているのが見えて、慌てて茉莉に駆け寄る。茉莉との距離は5mほど…急げば間に合う。

茉莉もこちらに向かって歩きだそうとして…やっぱり…つまづいた。

それを既の所で受け止める。


「うわわっ…。ふう〜、危ない危ない」


「待ってろって言ったじゃないか…茉莉、少しは人の言う事も…いや僕の言う事を聞いてよ…」


「ごめん、ごめん…注意しているんだけど…すぐにつまづいちゃうんだよ。これは仕方ない、もう諦めたよ」



そう言って、茉莉はこちらに笑いかける。

ほら、僕の好きな表情…不貞腐れた顔から輝く瞬間だ。


「茉莉に怪我がないなら…良かったよ」


「蓮には…よく助けてもらってる気がする。まさか、私が危なくなりそうだったら先回りしているとか…?ラプラスの悪魔って知ってる?もしかして…『僕はこの世の全てを知っている、全てを見通せる力があるんだ…』とか…言わないよね」


茉莉の言葉に息を呑む。動揺を悟らせない様に、すぐに口を開く。


「無理無理…そんなすごい力があったら…僕は億万長者だよ」


話を誤魔化す。


「茉莉…変な事知ってるね。ラプラスの悪魔って古典物理学だったっけ?確か量子論で否定されたような…。ハイゼ…なんとかって人…なんだっけ…忘れた」


「蓮…一時期そういうの興味示してたでしょ?」


「あ〜、そういう時期もあったね。でも、今は興味ないよ。ラプラスの悪魔…絶対者みたいな存在、現実になれるわけないんだからさ」


「ま〜、そうなんだけど…夢がないね。その年でもう枯れちゃったのかな蓮君は…」



いやらしい笑みを浮かべる茉莉のおでこを指で弾く。

強くはしてないが…痛がる素振りをするだろうと予想していた。

だが予想に反し、茉莉は何故か真剣な顔をしていた。



なあ…茉莉。君が時折見せるその真剣な表情が…僕には何故か引っかかるんだ…何を考えている?

君はそんな顔をするような女の子ではなかったよね?いつからそんな顔を見せる様になった?


この夏の日に、君が僕に疑問を抱いた様に…僕も君に疑問を抱いたのを…


茉莉…君は知っていたかい?

一応、話の筋道は決めてます。並行作品を優先しているので、今のところ更新はゆっくりの予定です。

恋愛色を強めにかけると良いのですが…自信はありません。

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