ご都合主義万歳
おぼろげな意識の中で神様の声を聞いた。
「転移には成功、お主の記憶を参照して主が望んだ環境に一番近い場所にいくことができた。
妾の神格はこの世界の干渉で主のなかで変異し・・・」
と言葉の途中でまるでラジオの周波数が合わなくなるかのようにノイズが混じり聞こえなくなってしまった。
同時に意識が浮上し瞼を開いた。
「目を開けたらそこは草原だった、そして今までの流れは夢じゃなかったと」
立ち上がったとき軽くふらつくが特に身体に異常はないようだ。
見渡す限り続く緑の絨毯、日本だと北海道以外視界に海か山がすぐ目に飛び込んでくるがそれもない。
「水平線はみたことがあるが地平線は初めてみたなあ」
周辺を見渡すと見慣れない鞄があった。背にかける紐がついており材質は皮のようなビニールのような不思議な材質をしている。
中身を確認しようと手を突っ込んでみるがそこが抜けたように手が際限なく鞄の中にはいっていく。
「おお、もしやこれは俗にいう道具袋って奴か」
RPGなんかでよくある重量も大きさも関係なくなんでもはいるインベントリって奴だ。
「しかしこれどうやって中身を取り出すんだ・・・」
鞄の中身のことを考えた瞬間、頭にイメージが浮かんだ。
ナイフ×1
水
パン
体力回復薬×3
魔力回復薬×3
ローブ×1
手紙
本格的にRPGのようだと思いながら、イメージのなかから手紙を選ぶ。
すると鞄につっこんでいた手に紙の感触がしたので取り出して読んでみる。
-信心へ-
「この世界へきたとき最後に残った神力を使いこの世界の簡単な情報とアイテムを生成した
この世界だが剣と魔法、神族と魔族、人と異種族が互いにバランスをとりながら存在している。
やったね、信心厨二病が叶うよ。
この近くに大きな町があるのでそこで情報収集してくれ、迷宮探索の冒険者ギルドがあるので
そこでギルド登録すればなんとかなるだろう。
ちなみに言語は神格の力で理解できるようになっている、恐れず進めよ。進めば道はあるさ。」
「神様、キャラ変わりすぎぃ。いやこれもしや僕の影響か・・・」
とりあえず一番ネックだった言語問題は解決しているらしい、ご都合主義大好き。
自分の影響をうけてしまった神様に申し訳ない気持ちになりながら手紙を読み進める。
「取り込んだ神格の影響でこの世界でいうスキルは問題なく使えると思う。なんとこの世界レベルの概念があるから
頑張ってレベルをあげてみるのもいいかもしれない。ちなみにギルドに登録すればそこら辺の説明があるとおもうので省略する。」
「ディ・モールト(大変すばらしい)、神様ありがとう僕頑張るよ」
「さて目的の町だが君の倒れていたところに矢印をつけておいた、矢印のさす方向をまっすぐ行けば街道につきあたる街道にでれば街が見えるので。
あとは道なりにいけば街につく。逆走するなよ絶対するなよ。」
「OKOK、初めての異世界命がかかってるからさすがにネタには食いつかないよ神様」
鞄があったあたりを見てみるとなるほど確かに大きな矢印がある。この矢印が指し示すほうにいけばいいんだな。
方向を確認すると鞄を手にし歩き出す。こういう世界でお約束であるモンスターや野盗がでたら「その後彼の姿を見たものは誰もいなかった」になってしまう。
悪い想像をしてしまい一刻もはやく街につこうと足を踏み出す。
と、そこで手紙にまだ続きがあるのに気づいた。
「追伸ーこの世界魔力が溢れてるせいで思ったより神格の力が落ちなかった。この世界の神や魔王たちに目をつけられるかも。めんご」
僕はとりあえず全速力で矢印の方向にダッシュした。