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惰作

星叢

掲載日:2026/08/12

星夜の大河の水中の下、露草の群れを片手に積み、白糸雲の薄布が大河を僅かに覆う。大河に木漏れ日の様な粒粒とした星光が私を染める。しかし、蠢く光が陽の様には温かみは無いし、月の様な美しさと卑しさは無い、無味無意味な輝きだ。露草の薫りは無い、下に俯きながら、碧い花弁が螢の様に光っている、ただ薄く仄かに。


夏夜の深宵に何も求める事も勿れに袖を捲り、青臭い叢で萎む露草を摘む。朝の榮を待ちる中で、私が生暖かい掌の盤面上の叢で回る。蟲も居ない其の露草を洗いもせずに一つ食べる。苦いだけだった、其処までだったが、まぁ、喰えない物でも無い。


そんな露草を銜えながら、濁流な星夜の大河を覗き込む。刻々と蟲の鼾と雲の遅いを視る。古人なら、之を趣と言って古紙にでも文字を垂らしているだろうね、俳句か短歌か一種の物語か、退屈を凌ぎ潰す為の所業。少なくとも文学には薄くしか時めかない私には難しい事だ。自邸に帰って秀吟集でも読もうかな。


夏の時も秋毫。片手に群れる露草の聚合群城も秋の薫りに萎れ駆けている。蕭然とした夏の終わり、人間だけが四季を跨ぎ、趣を感じる。此の露草の様に夏だけ生きる何て事で人生は終わらないのが人間。


駄目だ、煙草を吸ったせいで声が枯れ枯れだ。草の牆壁を交わしながら立ち、真面に舗装もされて居ない道を黙々と進む。何故か置いてある朽ちた如雨露に松濤が響く松木の下に佇む祠、静かに五月蠅い擾乱擬きな風声に星夜では織女星が見える。


何かしらの刺激は存在する。少なくとも私の分かる範疇では。他者には、蟲の仄かな啼き歌でも聞こえているのかも知れない。其処まで私には解らない事だ、荒ぶる夏陽とは違って夜と言う物は人間の裏側みたいな者だ。所謂腹黒い的な意味合いさ、私個人の考えだがな。


苔茂む牆籬に黒瓦に挟まる住宅道を独り歩く。目の上に聳立する掛けた中途半端な名無しの月欠けは淡く光り、自邸への羅針盤に成ってる。薄い松籟の音の隙間を通りながら、自邸へ足を踏み込む。


田舎の木造の小さな平屋が自邸。枯草色の畳の上、机上の硝子の花瓶に露草の城を入れる。花瓶の水に浮く其の姿は備中高松城か忍城の水攻めの様だ。なら君は露草城か花色的に蒼黄城だな。そら浮かべ、蓮の様に。


銜えた露草は押し花にでもしようかな、栞代わりにでも使おう。ただ、今日の気分ではない。机上に置かれた抄録した華人の友人の手紙、冗話塗れで返信に悩む。適当に上海料理は美味かった、ただ上海人は何処か京都の奴らの様だとでも送ってやろうか。選民的なら双方似てるだろと私は思うし、上海の近隣街の蘇洲人の彼女なら共感する事だろう。


日本語解って書ける癖に華語で書きやがって、訳すのが面倒だな...わざわざ、華語から日本語へ訳す用の手帳で暗号解読してるかの様に思えて来る。こっちも草書体で書いてやろうかな、自分でも読めないかも知れない。辞めて置こう。


とりあえず、深宵の徘徊擬きな散歩もしたし、今日は冴えてる。眠気が来ないし、書架に眠る書籍の星雲でも探索しようかな。秀吟集、文豪籍群...其れなりには書籍の群れは混在する。


お気に入りの本や作家は居ない。どれもこれも素晴らしいし、勝ち負けが無いからだ。文豪の称号は王みたいに一人では無いし、何方かと言うと大名みたいに文で群雄割拠な事はするけれど、私みたいな常民には関係ないからね、どうでも良い。


煙草を吸う、安い安い紙質の物。葉巻吸った事在るけど、葉巻見ると、サラミに見えて欲が心の盃から溢れちゃうから嫌い。酒が欲しく成る。本一冊手に取り、頁を捲る。粗悪な黒墨の匂いと書風、ただ其れが味が有る。


少し古びた敷島と書かれた紙煙草から一本だけ取り吸う。

何時もは朝日か山櫻か安い銘柄知らずの煙草で吹かしてるけど、造幣局で勤務してる男友が偶に敷島くれるんだよね、嬉しい。


私は女子だ。ただ、男装癖が凄まじい。嫌いな言葉は男尊女卑、好きな言葉は平凡と平穏と繁栄。外見は中性的だ、名前は穣。寶塚の歌劇にでも適した顔立ちさ。だからか、男装して暮らす事が多い。今は銀輪飛ばしながら手紙を送る郵便員してる。中華とかには行ったことが有るし友人も居る。付き添いで行って出来た友達さ。


今日は休日。

優雅に百害あって一利なしと称される煙草吹かしながら、陽を見つめる。

暁色の星が昇る、曙の景色が眼に映る。こんな田舎でも良い所は有るさ、こういう自然の光景を目に映る事さ。まぁ、此処から銀輪で数時間飛ばせば、大阪位は行けるさ。用は無いがな。


さぁて、今日も陽は昇った。

朝御飯は何にしようかね、沢庵と麦ご飯...茶漬けにもして食おう。

やっぱり夏場は温めの茶漬けが一番、焼き海苔を掛けて、塩漬けした胡瓜を切って沢庵と一緒に取り皿に添えたら、もういいや。


白百合花が描かれた赤色の座布団に座り、机上に茶漬けと小皿に乗る塩漬け胡瓜と沢庵に一膳のお箸。


いただきますと手を合わせ、箸で先に沢庵やら胡瓜を食べる。

ふと窓から外を見ると、深山の付近に雲の峰が聳えて居る。

白襯衣の夏の淡い馨り、茶漬けの仄かな薫り、沢庵の歯応え。

早々に朝食を済ますと、机上にライターと煙草箱置いたまま、外へ出る。

秋蝉に成りたい蝉の声。


今日は退屈が多いから、夕焼けまで散歩でもしようかな。

少し黄金に染まる稲の畠、枯葉の落ち葉の群れ、漫ろに憑かれたかの様にぞわぞわと心が擽られる。夏の終わりの薫り、其れは終日まで匂うだろう...


稔りの秋が来る迄は。

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