第8話
「はぁ…はぁ…」
息は全体的に浅くなってるし、冷や汗がすごい。
ぼーっとするし、世界を遮断するように耳鳴りがする。
ほんとに危なかった。
このまま立てなかったら、僕は地面と一生一緒だったかもしれないと考えると、歯を食いしばってでも耐えてよかった。
ていうか、ほんとにここはどこなんだ?
たんぽぽと雑草が生い茂っていて、周りには桜や梅などが辺り一面に咲いている。
6月なのに季節外れすぎないか?
遅咲きなのか?
いや、そんなの生まれてから1回も聞いたことない。
右にぶつかった原木、その後ろに滝、続けて境界線のような川がある。
滝のとなりにはにはそこそこの高さをした崖が僕を威圧するように佇んでいる。
そっか、多分あそこから落ちたのか…生きてて、骨も折れてないってすげーな僕。
なんて事をぼーっとしながら呑気に思ってしまう。
一旦見覚えのある道へでなければ。
あの崖の上にに向かえば墓地がある保証もないし、だからといって動かないわけにもいかないし…
というか、スマホはあるよな。
…あれ、ポッケにない。
周りを見るとスマホが崖の下にぽつんと放り出されている。
落ちている途中にポケットから投げ出されたのか。
僕は土を足で引きずって耕しながらスマホの方へ向かう。
拾ったスマホは画面がバリバリでイカ墨でも塗ったように黒くなってる。
まじか…スマホが使えない…ほんとにどうしよ。
てことは…これは遭難ってこと?
遭難なんて、友達の会話とかテレビでしか見たことも聞いたこともないし、そんなこと日常で起きないと思ってた。
意外とそういうことはあるものなんだ。
って感心してる場合じゃないって。
太陽の位置を見るに多分今お昼ぐらいだから…時間がない。
とりあえず、まずはこの森を抜け出さないと。
見渡すが道という道はさすがにない。
道っぽいのは何個かはあるけど…
僕は石化したように止まって考える。
ここにしよう。
僕は川沿いの獣道が一番マシで帰る方角にある道っぽかったので、僕はその道を歩くことにした。
川が泳いでいる音とウエハースを食べたときのような土の音を耳に入れながら、
僕の体の悲鳴を少しでも忘れようと歩きながら試みてみる。
全然上手くいってないけど、さっきよりはマシだ。
「…なんで僕なんだ、」
そんな事を呟いてしまう。
今朝から人生3年分経験したんじゃないかというぐらいイベントが多い。
僕の心の中の自分といい、体全体の訴えかける悲鳴といい、僕のなかにいる僕たちはどんだけ自己主張が激しいんだ。
僕だけ被害者面をまだ続けていると思うと反吐が出る。
僕は何をやってるんだ。
ーもうちょっと現実と向き合える時間が欲しかったな。
あーあ、非現実的なこと言ってもな…。
まただ。こんな事しか思い浮かばない自分に嫌気がさす。
前向きになれないのかよ。




