第2章:ライバル、神崎龍馬!
佐藤優希(18歳、高校3年生)は、電車の中でスマホを握りしめていた。画面には、渋谷のスクランブル交差点でメモしたノートアプリのデータ。ギャルたちの恋バナ、ケンカ、友情。あのドタバタから一週間、優希は原稿『異世界転生したら最強ハーレム無双!』の改稿に全力を注いだ。ヒロインの聖女エリカに、ギャルの「フラれたけど前向くぜ!」みたいな感情を追加。エリカがヒーローに「君を信じてるよ」と言うシーン、なんかグッとくる感じになった。よね?
でも、不安しかない。だって、相手はあの山下哲史だ。星雲社の「鬼の編集者」。先週、優希の原稿を5秒で「凡庸」と切り捨てた男。今回は「魂が見える」と認めてくれるはず! でも、もしまた「まだ足りん」とか言われたら……。優希はゴクリと唾を飲み、バックパックを握りしめる。A4用紙300枚、新たな魂(?)を込めた原稿が詰まってる。
(山下さん、絶対認めてくれよ……! 俺のラノベ、ヒットするんだから!)
電車が渋谷駅に着く。優希は人波に押されながら、星雲社の雑居ビルへ向かう。5月の陽射しが、なんか応援してるみたいだ。
星雲社の編集部は、いつものカオスだった。原稿の山、鳴り止まない電話、誰かが「2章でヒロイン殺すな!」と叫んでる。優希はソファに座り、改稿と渋谷のレポートを手にドキドキ。レポートには、ギャルたちの恋バナを「エリカの感情分析」としてまとめた。めっちゃ頑張った。自分的には、魂バッチリ!
「佐藤くん、お待たせ!」 林美咲(22歳、新人編集者)が笑顔で駆け寄る。メガネがずり落ち、ポニーテールが揺れる。原稿の束を抱えて、よろよろ。「山下さん、今別の作家さんと話してるけど、すぐ来るよ。改稿、めっちゃ頑張ったでしょ?」
「う、うん、頑張った……と思う!」 優希は苦笑い。渋谷のギャルたちとの遭遇、顔から火が出るほど恥ずかしかったけど、エリカのセリフが生き生きした。たとえば、エリカがヒーローに「君の笑顔、守りたいんだ」と言うシーン、なんか泣ける感じになった。よね?
そこに、聞き慣れない声。「へえ、君が佐藤優希?」
優希が振り返ると、めっちゃイケメンが立ってた。背高っ! 髪サラサラ! シャツのボタン、わざと2個開けてる! こいつ、まるでラノベのライバルキャラ! 優希の背中に冷や汗。「え、誰?」
「神崎龍馬、19歳。よろしく」 龍馬がニッコリ微笑む。なんか、ムカつくくらい余裕ある。「君の原稿、編集部でチラッと読んだけど……まあ、頑張ってね」
「は!? 読んだ!? 勝手に!?」 優希が立ち上がる。編集部の空気がピリッと凍る。美咲が慌ててフォロー。
「や、やだな、龍馬さん! 佐藤くんの原稿、編集部で回覧されただけだよ! 龍馬さんの『魔王転生クロニクル』も、みんな絶賛してるし!」
「絶賛?」 優希の目がキラーン。「どんな話!?」
龍馬が肩をすくめる。「まあ、魔王に転生して、世界を改革するダークヒーローもの。ヒロインは7人、みんな個性的。編集部じゃ『新人賞の最有力』って騒がれてるけど、僕的にはまだまだだな」
(7人のヒロイン!? 個性的!? 最有力!?) 優希の心臓、ドクドク。自分のハーレム、3人なのに! しかも、エリカ以外、ちょっとテンプレっぽいかも……。悔しい。めっちゃ悔しい!
そこに、ドスッ。重い足音。山下哲史が現れる。黒いシャツ、ネクタイゆるゆる、コーヒーマグから湯気モクモク。「佐藤、騒ぐな。神崎、余計な挑発すんな」
「挑発だなんて」 龍馬がクスクス。「ただ、ライバルに挨拶しただけですよ」
「ライバル!?」 優希が叫ぶ。「こいつ、新人賞狙ってるんですか!?」
「当然」 龍馬がニヤリ。「佐藤くんも、だろ? 負けないよ」
優希、ムカーッ! 「やってやる! 俺のエリカ、絶対お前のヒロインより魅力的だから!」
山下がコーヒーをズズッ。「佐藤、嫉妬は創作の毒だ。ライバルに勝ちたきゃ、自分の物語を磨け。神崎、お前もだ。口ばっか動かしてねえで、原稿直せ」
龍馬が「了解」と軽く敬礼。優希は唇をかむ。(嫉妬、ダメなのか……。でも、負けたくない!)
山下が優希のレポートと改稿をパラパラめくる。「渋谷の観察、悪くない。エリカの感情、ちょっと血が通ったな。だが、まだ足りん」
「まだ!?」 優希が叫ぶ。「でも、龍馬の原稿、めっちゃ評価されてるじゃないですか! 俺、負けてる!」
「だから何だ?」 山下がニヤリ。「負けてると思うなら、超えろ。自分の物語で、読者を、俺を、ぶち抜け!」
優希、胸が熱くなる。「分かりました! やってやります!」
美咲が拳を握る。「佐藤くん、応援してるよ! 新人賞、絶対獲ろう!」
龍馬がクスクス。「面白いね、佐藤くん。楽しみだよ、対決」
優希、拳を握りしめる。(龍馬、覚えてろ! 俺の魂、絶対見せてやる!)
翌日、学校の昼休み。優希は購買のパンをかじりながら、ノートにアイデアを書き殴る。龍馬の「7人のヒロイン」に負けないため、エリカのバックストーリーを強化しよう。たとえば、エリカが聖女になった理由。幼少期、村が魔物に襲われて、唯一の友達を失ったトラウマ。それでも希望を信じて、ヒーローを支える。そんなエリカ、めっちゃ魅力的じゃん!
「佐藤、めっちゃ集中してるね」 エリカが教室の窓辺に現れる。銀色の髪、白いワンピース、ミステリアスな笑み。優希の小説のヒロインそっくりの転校生。優希、心臓バクバク。
「エ、エリカ!? なんでまた!?」
「ふふ、君の物語、気になってさ。どう? 新しいアイデア、できた?」
優希、ちょっと自慢げ。「うん! エリカにトラウマ設定追加した! めっちゃ深いキャラになったよ!」
エリカがクスクス。「いいね。君の情熱、ちゃんと伝わってるよ。でも、もっと『君自身』を入れてみたら? 君の物語、もっと輝くよ」
「俺自身?」 優希、首をかしげる。「でも、俺、テンプレばっか書いてて……」
「テンプレでも、君の気持ちがこもってれば、魂になるよ」 エリカが優希のノートに指を滑らせる。「君、読者を笑顔にしたいんだよね? それ、めっちゃ素敵だよ」
優希、胸が熱くなる。(読者を笑顔に……。そうだ、俺、読者が「うおお!」ってなる物語書きたいんだ!)
「エリカ、ありがと! なんか、めっちゃやる気出てきた!」
「ふふ、よかった。じゃあ、頑張ってね。君の物語、楽しみにしてるよ」 エリカが微笑んで、教室を出ていく。
優希、ノートを見つめる。(エリカ、ほんと何者!? でも、彼女の言う通り、俺の魂、ぶち込むぞ!)
その夜、優希は部屋でPCに向かう。エリカのトラウマ設定を原稿に反映。彼女がヒーローに「君の笑顔、守りたい」と言うシーン、なんか泣ける。龍馬の7人ハーレムに負けない! でも、なんか不安。龍馬の原稿、編集部で「最有力」ってマジ? 俺、ほんと勝てる?
翌週、星雲社。優希は改稿を提出。山下が原稿をパラパラ。「ふむ。エリカの動機、悪くない。少し、魂の欠片が見える。だが、ビジュアルと動きが弱い」
「ビジュアル!?」 優希、ビクッ。「え、エリカの衣装、ちゃんと書いたっすよ! 白い聖衣で、キラキラ光るやつ!」
「キラキラじゃ分からん」 山下がコーヒーをズズッ。「衣装の素材、動き、戦うポーズ、全部具体的に書け。読者が『おお!』ってなるビジュアルだ。次だ。取材に連れてってやる」
「取材!? どこ!?」
山下がニヤリ。「東京ビッグサイト。コスプレイベントだ」
優希、絶句。(コ、コスプレ!? 俺の人生、どんどんラノベ化してる!)
美咲が笑う。「佐藤くん、楽しそう! コスプレ、めっちゃ参考になるよ!」
優希、顔真っ赤。(コスプレイベント!? 山下さん、マジかよ! でも、龍馬に勝つため、行くしかねえ!)