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転生したらテイマーで、相方がヤギだった件について/ハイファンタジー(制限時間60分)

 気が付くと、俺は真っ白な空間へと続く行列に並んでいた。

 そこにいる人たちに共通点はなく……というか、人間に限らず普段なら人間を狙うような肉食動物やモンスターまでもが皆、お行儀よく静かに整列している。

 あまりに静かな空間で「これは何の行列ですか」と聞くことも憚られて、俺もみんなと同じように大人しく列が進むのを待った。


「引くがよい」


 行列の行きつく先にいたのは、白いひげをたくわえた、人のよさそうな老人だった。

 老人はくじ引きに使うような中身の見えない箱を手にして俺を待ち構えていた。


「ほれ、引くがよい」


 老人はそれしか言えないのか、箱を俺に差し出したまま笑顔で繰り返す。

 俺は言われるままに箱に手を差し込み、中に入ったくじの中から一枚を選んで取り出した。


「テイマー!」

 

 老人が高らかに叫んだかと思うと、俺の視界は光に包まれた。





 目を開くと、そこは見知らぬ街だった。


「転生おめでとうございます。こちらは相棒のみどりちゃんです」

「めぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


 目の前にいた女の人はテキパキと喋りながら、一冊の本とリードを手渡してきた。

 リードに繋がれていたのは……――。


「ヤギ?」

「めぇぇぇぇぇぇ!!」


 みどり「ちゃん」ってことかはこの子は女の子かー。

 なんて思いながら手渡された本に目を落とす。


【テイマーの手引き】


 見たこともない文字のはずなのに、内容がスルスルと頭に入ってきた。

 要約すると、俺は異世界に転生しモンスターを使役する「テイマー」という職業になっているらしい。

 ……ということは、相棒のヤギも実は?


「よっこいしょっと。じゃ、行きましょうか」


 みどりちゃんはすくっと二本足で立ちあがると、トコトコと歩き始める。

 そしてコケた。

 その拍子に首についていたリードがぴんと張られ、ぐえ、と苦しそうに声を上げた。

 なんだ!? ドジっ子か!?


「ええと……喋れるし立てるんだね?」

「はい」


 ドヤ顔で胸を張る。

 気が付くと緑の髪の女の子の姿になっていた。

 なるほど、だからみどりちゃん?


「友好の証です。どうぞ」


 言いながら手渡してきたのは……ツノ?

 ヤギのツノ??


 その辺に放り投げておくわけにもいかないので、ツノはとりあえずカバンの底に押し込んだ。




 みどりちゃんはドジでうっかり屋で、目を離せないところもあるけれど戦闘力はバツグンだった。

 おかげで俺たちは最強のパーティーとして一躍有名になった……のだが。


「みどりちゃん最近大きくなった?」


 俺の腰くらいの身長だったはずなのに、いつの間にか見上げるほど大きくなっている。

 成長期かなぁと思いながらリードに手を伸ばしたが、上手く掴めない。

 あれ? と思って手元を見ると、そこにあったのは蹄。

 立ち上がろうにも足に力が入らず、つんのめるように倒れてしまった。


 混乱しながら姿見の前に向かうと、そこにいたのは一頭のヤギと緑の髪の女の子。

 なぜかヤギの頭には片方しかツノがない。


「もう片方のツノもあげましょうね~」


 そう言いながらみどりちゃんはどこからともなく取り出したツノを俺の頭に押し付ける。


「めぇぇぇぇぇぇえ!!」


 絶叫すら上げられず、失意のまま視界が真っ暗になっていくのを感じた。




「おつかれさまでした。説明書はきちんと読んでいただけましたか?」


 気が付くと、あの日の案内役の女性が目の前にいた。

 彼女が差し出したページには「関係が親密になるほど同化します。ご注意ください」の一文が。


「なるほど。その反応はご覧になられていないようですね。今後の参考にさせていただきます」


 女性はメモを取りながら歩き去っていく。


「えぇと、あの、俺は……」

「ああ、もういいですよ。好きに生きてください」


 そう言って送り出された先にあったのは広大な草原。

 そこには一匹のヤギが。

 きっとあれはみどりちゃんだ。


 俺もみどりちゃんもヤギ。

 使役する役もされる役もこれからは関係ない。

 これからは幸せに生きていける……はず!!

お題「転生したらテイマーで、相方がヤギだった件について」


追加指定「実は使役していたヤギは、仲良くなればなるほど本人と同化していくホラー」

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