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白猫のおもち

作者: poro

「ぺるちゃん、ご飯だよ〜」

 透明な壁が開くとお皿を持った大きな手が私の部屋に入ってきた。私はそのお皿の中の物をクンクンと嗅いだ。

(うん、これはご飯だ)

私はいつも通り2粒を口に入れてゆっくりと噛んで飲み込み、また2粒を口に入れて飲み込んでを繰り返しながら空腹が満たされていくのを感じた。お皿の中身が無くなるといつも次にやることを考えてみる。とにかく考えて考えて考えて・・・。そうしてるうちにいつも気がついたら寝てしまっている。

 私の生活についてのお話はここまで。だってそれ以外に思いつくことがないんだよね。だけど私のおうちのことならお話しできることがたくさん。私のおうちはとっても広いの。私のおうちはたくさんのニンゲンが歩いてて、ニンゲンはどこまでも遠くに歩いていける。(私の部屋なのに勝手に入らないで!)とか思うときもあるけど、放っておけば見えないところへ行くし許してあげている。ただ、とってもイヤなのは私の部屋が小さいこと。私の部屋には見えない壁があって、こんなに広いおうちなのに、私は3歩歩けばぶつかっちゃう。

(ニンゲンばかりズルい!)

っていつも思う。だけどいつも部屋の中にいるわけじゃない。たまに透明な壁が開いて外に出れる時があるんだ。そのときはすごく楽しいの。だってニンゲンがいっぱい私のことを撫でてくれるんだよね。たまにお腹を触ったりシッポを掴んでくる嫌なヤツもいるけど、私はニンゲンが結構好き。だからもっとくっついていたいんだけど、たまにしか外には出れないみたい。7回くらいご飯を食べると出れるから、私はいつも食べた数を数えてて、これは私の趣味なんだよね。

(今日はなんだかいつもより騒がしいな)

まだ眠たい目をしばしばとさせながら、ゆっくりと周りを見渡すと、すごい数のニンゲンが私のおうちに来ていた。さすがにちょっと怖いななんて思いながらお部屋の隅っこで座っていたけど、すごい数の人が何度も入れ替わりながら私に近づいてくる。すると、隣の部屋で暮らしてる私よりも小さい子がお外に出ていった。

(ああ、あの子は静かで好きだったんだけどなあ)

私は知ってる。多分あの子ももうおうちを出ていくんだ。私は何度もこの経験をしてきた。もう何匹目か分かんないけど、いつも誰かいなくなっては同じくらいの歳の子が入ってくるんだよね。実は最初はそれがちょっと楽しかったんだ。だって同じくらいの歳の友達が何匹もできたから。でも最近はちょっとつまらない。だって私はもう大人だから。今はじゃれ合うよりもゆっくりお話できる友達が欲しいかな。

 そんなことを考えながら、なんとなく目を閉じて寝そべっていたらガラガラガラという壁が開く音がして驚いた。まだお腹が減ってないってことは久しぶりのなでなでの時間らしい。いつものニンゲンに抱っこされた私はいつも通り知らないニンゲンの方へゆっくりと渡された。その途端、私の見る景色が大きく変わり、自分が今とても高いところにいることがすぐに分かった。その時はとっても焦ったけど、私が爪を立ててしがみついていたら、すぐに座って膝の上に乗せてくれた。

「膝の上嬉しいね〜」

いつものニンゲンがいつもの言葉をかけながら私に微笑みかけてきた。この言葉はなでなでの合図なので、私もいつも通りドンと構えてなでなでを待ったんだけど、知らないニンゲンはなぜだか全然撫でてくれない。しばらくの間そうしてると、知らないニンゲンはぼそぼそと何かを話して私をいつものニンゲンに手渡すと何も言わずにどこかに行ってしまった。

 それから私の毎日が変わった。ご飯を3回食べると、必ずあのニンゲンが来るようになった。ちなみに私はあのニンゲンのことを『ハイ』と呼ぶことにした。というのも、ハイは私の部屋の前に来ると、いつも何も喋らないのに、いつものニンゲンに話しかけると「ハイ」と言って私を部屋の外に出して膝の上に乗せるからだ。正直何を考えてるか分からない。最初に会ってからもう何度も会ってるのにやっぱり撫でてくれないしね。だけど、私はハイのことが嫌いではない。だってハイは私が膝の上が飽きるといつものニンゲンに私を返してくれるから。でも不思議。なんでハイはこんなに私に会いに来るんだろう。

 ハイと会うのが10回目くらいになった頃、私は未だになでなでしてくれないハイに、私から話しかけてみることにした。

「にゃあ、にゃにゃあ」

私はハイの膝上で立って、前足をハイの胸のあたりに乗せながら、なんで撫でてくれないのか聞いてみた。すると、ハイは私を膝の上に再び座らせてきた。

(はあ、やっぱりよくわかんない。私を外に出してくれるのは嬉しいけど、やっぱりなんだか退屈に感じてきちゃった。)

そう思ったとき、背中のあたりが急に暖かくなるのを感じた。背中の方をちらっと向くとそこにはハイの手が柔らかく乗せられていた。このとき、心の奥のほうがぽかぽかとなるのを感じて、思わずハイの大きな膝に私の全てを預けた。

 ハイは私を連れ出すと、大きな部屋で一緒に暮らしてくれるようになった。それからは少しずつハイのことがわかるようになってきた。ハイは私から声をかけるときだけなでなでをしてくれる。多分だけど、恥ずかしがり屋さんなのかなと私は思う。それともう1つ分かったことがある。ハイが私に「おもち」と声をかけてくれるときはハイはいつも私が嬉しいことをしてくれるんだよね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

良かったら評価や感想などよろしくお願いします。

今後の励みにさせていただきます。

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