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第3話 水野スミカは戦いたくない

 俺、真辺サトルは友達が少ない。

 ていうか、居ない。

 人と目を合わせることができないし、人と話すと声が震えてしまう。


「(バトル中はそんなことないのに……)」


 バトル中はアドレナリンが出ているおかげで饒舌に会話することができる。

 昨日の水野さんとのバトルでも口ごもることなく話が出来ていたと思う。


「(クラスメイトともバトルしたいな……)」


 高校生活が始まって2年目に突入したというのにこんな調子で友達を作るキッカケを失ってしまった。

 当然クラスメイトと楽しくバトルなんてしたことない。そもそも会話したこともないクラスメイトすらいるのが悲しい現状だ。

 そういう事情があったので俺はネットでのレート戦でしか対戦することが出来なかった。

 だからこそ昨日の水野さんとのバトルは本当に心が躍った。


「(今日も街でノラバトルの相手を探してみるか)」


 そう思いながら俺は放課後バトルを楽しんでいるクラスメイト達を尻目にしてひっそりと教室から出ていくことにした。







「目が合ったらそれはバチャモンバトルの合図! さぁ、始めよう!」


 さすが放課後の時間。

 バチャモンバトルに餓えたトレーナー達が向こうからバトルを申し込んでくれる。

 正直コミュ症の俺にはかなりありがたい。


「うん! よろしくお願いします!」


 短パンの男の子とのバトルが始まった。

 『ひっかく』一撃で終わってしまった。


「つ、強すぎるっ!」







「この俺と戦うなんて100000000光年早いんだよ!」


 虫取り網を持った少年とのバトルが始まった。

 『ひっかく』一撃で終わってしまった。


「しまった! 100000000光年は時間じゃない——なんだっけ」








「誰かの記憶に残ること……それが生きている証なのかも」


 エリートっぽい男性とのバトルが始まった。

 『ひっかく』一撃で終わってしまった。







「山がなくてもやまおとこ!」


 登山者っぽい男性とのバトルが始まった。

 『ひっかく』一撃で終わってしまった。







『ねぇ……サトルくん……』


「言わないでくれ……」


 なんというか、全然楽しくなかった。

 レート戦に比べると手ごたえがないバトルの連続。

 ピクシーもつまらなそうに俺の肩で足をフラフラさせている。


『やっぱりレート戦に戻ろうよ。あっちのバトルの方が楽しかったよ』


「うーん……でもレートでは悪目立ちしているからなぁ」


 ほとぼりが冷めるまでレート戦は封印しておきたい。

 それにノラにだってきっと強い人はいるはずだ。


『——あっ! ねえねえサトル! あの子!』


「えっ? あっ!!」


 見覚えのあるサイドテールが対岸上の歩道を歩いていた。

 そう——ノラでも強い人はいる。

 あの子——水野スミカさんはその代表格ともいえるかもしれない。

 あの子とまたバトルがしたい。ローレライの手の内を全部見て見たい。バチャモンについて語り合ってみたい。

 そんな欲があふれ出すように 気が付いたら俺は走り出していた。


「おーい! 水野さーん!」


 普段出したこともないような大声で彼女を呼び止める。

 水野さんは大きく肩を震わせていた。

 恐る恐るこちらを振り返る。


「き、昨日の……」


 俺の顔を見た瞬間、なぜか水野さんは顔を思いっきり引きつらせていた。

 な、なんだその反応? 俺の顔そんなに気持ち悪い? ショックなんだけど。


「覚えていてくれたんですね! 水野さん! 今日も俺とバトルをしてくれませんか!?」


 テンションが上がりきっているのか、俺はしっかりと彼女の目を見ながらハキハキとバトル申し込みをすることができた。


「え、遠慮させてもらうわ。そ、それでは……」


「えっ?」


 なぜか水野さんはダッシュでこの場から離れていってしまう。


「まってよ! どうしてバトルしてくれないんですか!?」


「うわぁ!? 追っかけてきた!」


 頑張って足を動かし、水野さんと並走する。

 運動は苦手であるが、バトル欲が俺に不思議な力をくれていた。


「今日が都合悪いのであれば、明日! 明後日でもいいので!」


「なんで貴方はそんなに私とバトルしたがるのよ!?」


「キミがめちゃくちゃ強かったからですよ! 俺、昨日バトルですごく興奮したんですよ。あんなに楽しいバトル久しぶりでした! だからまたやりたいです!」


「こっちはやりたくないの!」


「一回だけ! あと一回だけでいいからヤラせて!」


「ちょ……っ!? 誤解を招くような言い方を——」


「本気じゃなくてもいいから! お遊びでもいいから! 俺と付き合ってくれ!」


「アンタわざと言っているでしょ!?」


 水野さんがバトルの誘いに乗ってくれない。

 なぜだ? 昨日はあんな必死にバトル相手探していた様子だったのに。


「バチャモンセンターで治療してもらったとはいえお腹に大穴開いた自分のバチャモンを見てこっちは軽いトラウマなのよ!」



『あー、全力たいあたりは確かにやり過ぎたかもね。ローレライちゃんにもごめんって伝えておいて』



「本当よ。あんな目にあってローレライが可哀想——って、ちょっとまって!?」


 水野さんが不意に急ブレーキを掛ける。

 俺も習って慌てて足を止めた。


「い、いいいい、今、バチャモンが喋られなかった!?」


「『あっ……』」


 忘れていた。

 俺のバチャモンピクシーは世にも珍しい喋るバチャモン。

 少なくともクラス内には喋るバチャモンを持っている人はいない。

 クラス内だけでなく、一般的に見ても珍しいんだろうな。

 まぁ、いいや、そんなことより——


「足を止めたってことは俺とバチャモンバトルするってことの同意でいいんだよね!?」


「話をバトルに戻すな! それよりも喋るバチャモンについて——」


「さぁ、水野さん。バトル開始だよ! 早くローレライをボールから出すんだ!」


「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 結局この後も水野さんはバトルに応じてくれず、なぜかそのまま近くの喫茶店へと俺は連行されていかれるのであった。







【マスターランク】 レッド様実況スレ ver.46 【現代に蘇った悪魔】


 名無しさん023:

 レッド 昨日も現れなかったな

 引退した?


 名無しさん024:

 おちつけww

 5日間居なかっただけだろ


 名無しさん025:

 あのバトル狂がここまでレートに姿を現さなかったのって今回が初めてなんよ

 最古参ファンの俺が言うんだから間違いない


 名無しさん026:

 普通に仕事が忙しいとかそういう理由だろ


 名無しさん027:

 赤覇王って社会人なん?


 名無しさん028:

 わからん

 誰も素性知らんのよ

 レート戦はトレーナーが顔出しするわけじゃないしな


 名無しさん030:

 じゃあレッド様がおにゃのこの可能性もあるのか!

 俺の彼女になってくれないかな


 名無しさん031:

 >>30 お前の彼女バトル狂ってことになるけどいいのか?


 名無しさん032:

 男か女かよりも大人か子供かが気になる。

 レッドって子供な気がするんだよ


 名無しさん033:

 なんで?


 名無しさん035:

 8月中は平日の昼間に出没してたやん


 名無しさん036:

 普通に変型労働制なんじゃね?


 名無しさん037:

 いや 7月以前の平日は決まって夕方以降にレート潜ってた


 名無しさん038:

 あー

 なら学生説が高いわな


 名無しさん039:

 なんでや?


 名無しさん040:

 ヒント1:学校

 ヒント2:夏休み


 名無しさん043:

 レッドたんがJKだったら俺が頂いていきますね


 名無しさん044:

 いや俺が


 名無しさん045:

 俺のだ


 名無しさん046:

 赤覇王おっさんどもにモテモテでわろたwww


 名無しさん050:

 でもまじで赤覇王いないとレート静かだよな

 期待の新星とかいねーの?


 名無しさん051:

 いるかも

 最近レート順位上げまくってきているやつがいるって噂


 名無しさん052:

 へぇ。面白そう

 名前は?


 名無しさん053:

 エリィだったかな

 赤覇王みたいに可愛いタイプのバチャモン使ってる


 名無しさん054

 ふーん

 赤覇王が帰ってくるまでその子応援してみようかな


 名無しさん055:

 すでにエリィ専用スレも立ってる。

 なぜかアイドル的に祭られてる。


 名無しさん056:

 おまいらはすぐにおにゃのこっぽい名前に騙されるよな


 名無しさん057

 エリィはSNSもやっているから!

 生け花がアイコンだから大和撫子に違いないから!!


 名無しさん058:

 だからって女とは限らんて


 名無しさん060:

 俺はエリィたんが男でもかまわん!

 うぉぉぉ! えりぃぃぃぃぃ!!


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