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比較的最近更新した短編のまとめ場所

やわらかくないシュークリーム

作者: 斎藤由希



 昔かよっていた教室で、シュークリームの作り方を習った事がある。


 私は先生の話を聞いて、ちゃんと作ったつもりだったけれど、その結果は表面が固くなってしまったシュークリームだった。


 先生はシュークリームのやわらかさは、心のやわらかさだと言った。


 それを聞いた私は、「そっか私の心は柔らかくないから、こんな風になっちゃったのか」と妙になっとくした。


 お菓子作りができる可愛い女の子。


 そう言われたいから、頑張って習っているだけで、別にお菓子作りが特別に好きとかじゃないのだから。


 



「失敗したわ。おいしく食べられないお菓子なんて、プレゼントしても意味ないわね」


 義務で作ったシュークリームが失敗した。


 会社で贈り物をもらったから、一番得意な方法でお返ししようと思ったけれど、うまくいかなかった。


 久しぶりに苦手なものを作ってみようと思ったたけれど、やはり腕は変わらないようだった。


 だから私は冷蔵庫の中へ入れっぱなしにしたのだった。





 それからシュークリームは、冷蔵庫でそれなりの時間を過ごした。


 なまものだから早めに食べてしまわないといけないのに、そんな気になれなかったからだ。


 けれど、友達が遊びに来た時に、それの存在が明らかになった。


 見るからに美味しくなさそうなのに、友達は食べたいと言った。


「へただから、プレゼントせずにとっておいたものなのに、本当にいいの?」

「ふわふわじゃなくたって、見本のようじゃなくたって、誰かが気持ちをこめて作ってくれたものなんだだから、せっかくだし食べてあげたいじゃない?」


 やがて、かちかちのシュークリームが、友達の胃の中に消えていった。


「とても硬くてシュークリームらしくないけど、シュークリームらしくなくてもこれは立派なシュークリームだったよ」


 友達の優しさが嬉しかった。


 もう作りたくないと思ったのに、また気が向いた時に作ってみても良いかなと思うようになった。




 どうしてだろうか分からない。


 その出来事がなにか関係あるのか、ないのか。


 けれど、それ以来私の作るシュークリームはかたくない、やわらかいシュークリームになっていった。




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