EP:【ジャック視点】
ジャック視点
『あんまりおいたをすると、お仕置きするよ?』
鎮痛剤の件、21時以降の禁止、突然の誘惑、食事中の途中退室。
流石に目を瞑れない。
使用人に示しを付けておかなければ、そう思っての行動だった。
そしたら、彼女は顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせた。
驚いた。随分と初心な反応をされた事に。
太陽の様な、情熱のある綺麗なオレンジ色の瞳、よく手入れされた艶やかな髪。
学園で彼女はとても目立っていた。
俺は興味もなかったが、周りの人物の噂の的だった。
同い年だったことも相まって、彼女の噂は絶えなかった。
だからこそ、彼女を求める声は多かったはずだ。
つまり、悪く言えば遊んでいると思った。
あんな、顔を真っ赤にして、心くすぐられる様な反応をされると思わなかった。
柄にもなく、ドキッとした。
『レイニーはとても可愛らしいですね』
そう伝えると、目をまんまるくさせた。
その後顔を伏せて、こちらを見なくなった。
あぁ、この女、面白いな。
いろんな意味を含めて、そう思った。
最初の話し合いの時に思った事がある。
彼女は、自分の事に頓着していないのか、もしくは、異常者なのではないか、と。
俺が言うのもなんだが、相当に酷い扱いをする、と話をした。
現にその通りになっている。
彼女が、国に管理されているとしても、彼女の人生を理不尽に縛るこの”契約婚”は、第三者から見ても、あまりに酷い。
この契約が国からの勅令である事を踏まえても、拒否、あるいはもっと抵抗していい。
普通の令嬢なら、泣き叫んでもおかしくない。むしろ、それが正しい反応だとさえ言える。
同情の余地がある。俺が悪者で、その構図が正しい。
しかし、彼女は文句の一つも言わなかった。
それを、この異常な契約婚を、受け入れたのだ。
それが、どれほどの異常なのか、理解していない様だった。
彼女になにもメリットが無い上に、無期限で人生を縛っている。
俺からの寵愛も見込めない。
最終的に捨てられる運命にもかかわらず。
それなのに、あんな反応をされるとは。
どうかしている。本当に、理解が追い付かない。
だから、面白いと思った。
まるで”狂った人形”の様だ。
彼女は国に脅されているのか?
もしくは、愛する人でも人質に取られているのだろうか?
まさか、国に対してそこまでの忠義があるわけでは、あるまいな?
あるいは、俺の予想通りなら……。
なんにせよ、俺には都合がいい。
彼女は懐柔しやすそうだ。
「君」に近づく為にも、彼女を存分に利用させて頂こう。
あぁ、やっぱり、俺にとって相当に理想的な状況だ。