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EP:27

無事に聖女様のお力(指輪)を借りた事にして、背中の問題は無くなった。


これで、メノール一人に過重な負担を背負わせる必要もない。

それに、彼女の命を奪わずに済んでよかった。


今後の課題の一つは、やはり護衛術への対応である。

というより、そもそも護衛とは何たるかすら、私は正しく理解していないのだ。


先日考えた結論からは変わらない。

実践は難しい。


独学で、やるしかないか。


いくつかの教本を求めて、書店へ向かうことにする。

護衛に関する書籍を何冊か購入するが、用途について詮索されることはなかった。



その後、屋敷へ戻り、また慌ただしい日々が再開される。

夜は護衛に関する知識を学ぶ時間に充てた。


ここ半月で、使用人たちとの間にあった溝も、少しずつだが埋まりつつある。

学習の進捗も上々であり、目に見える成果も出ている。

このまま順調に進めば、結婚式には堂々と公爵家の一員として臨めるだろう。



さて、次なる課題は、ジャックとの関係の修復である。

私は、彼の妻になりたい。

少なくとも、嫌われたままでいるのは耐え難い。

夫に好かれる妻。

それが、あるべき「妻」の姿だと、私は思う。


そして、アメリアからの連絡を待つ必要がある。

ジャックの“想い人”に関する情報が欲しい。

交渉の材料としても有用だが、情報が揃えば、打つ手はいくらでもあるはずだ。



ジャックを狙う敵については、いまだ何の手がかりも掴めていない。

とはいえ、敵の正体が分からなければ、こちらとしても対応のしようがない。


先日、ジャックとの外出で目立つ行動を取った。

それによって、ジャックの“弱み”が出来たと、敵に思わせることができたはずだ。


標的がジャックであるならば、その妻である私は格好の餌となる。

アンクライトにまつわる一件も、そろそろ噂が広まりつつある頃だ。


愚かな妻が夫に夢中になっている。

夫もまた、熱を帯びて結婚している。


常識的に考えれば、私を狙うだろう。

そして、ジャックが遠征で不在の今が、まさにその好機。


おそらく、何かが近々起こる。

私の“感”は、そう告げている。



それから、もう一つ。最大の懸念が残っている。

この任務について、皇帝陛下と対話を持たねばならないのだ。


しかし、本心ではお会いしたくない。

なぜなら、私は知ってしまったから。

ジャックの生命線を。


皇帝陛下に問われたら、私は答えねばならない

「想い人」のことを。

そして、「ジャックの切り札」についても。


だが、妻として――

ジャックの未来を思えば、それだけは避けたい。

彼が幽閉される未来が、容易に想像できてしまうからだ。


とはいえ、詳細の確認は必要である。

“妻”とは何を指すのか。

“護衛”とは、どこまでを担うべきなのか。

契約の期間、達成条件は何なのか。


私の曖昧な認識のまま、任務に就くべきではない。


この件も、当面は保留とするしかない。



他に大きな問題は――ない、はずだ。

何か、忘れている気がするが……いや、今の私にできることは、もうない。はずだ。


ジャックが帰ってきたら、話をしよう。

それから、護衛を務めてくれている“彼女”にも、きちんと礼を述べねばならない。


何もない。

今、私に出来ることは何もない……はずだ。



過去の事件の少年の事はどうでもいいし……


ジャックが戻れば、正式なお披露目の場も設けられるだろう。

その時までに、アンクライトの加工が済んでいればいい。


ジャックのご両親も挨拶に来られるだろうとは思う。

私の両親とも正式に面会の機会が持たれるかもしれない。

いずれにせよ、これらは事前に連絡はあるはずだ。



他に懸念は無いし、これ以上出来る事は無い。


……にもかかわらず、胸騒ぎが止まない。

まるで、何かを見落としているかのような――


分からない。

この不穏な感覚が、何を意味しているのか。


それでも、今この瞬間に与えられた任務を遂行するしかない。

ジャックが戻るまでに、やるべきことは沢山ある。


違和感の正体は、ジャックと会えたら進むかも。

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