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EP:【ジャック視点】

ジャック視点



『ジャック』


耳元で囁かれたそれに、びっくりした。


思わず顔が赤くなった。


それを見て、楽しそうに笑うレイニーを可愛らしいと思った。


耳元で名前を呼ばれた事に反応したのではない。

完全な不意打ちに、面食らったのだ。


これでもそれなりに強いと自他ともに認めている。

だからこそ、若くして軍大将校に任命していただく栄誉を得た。


確かに、まだまだ技量不足な部分はある。

資料を見て、領地に関して問題を抱え、対策を考えていた。

入出者に対し、意識外ではあった。


それでも、後ろを取られる程の隙は見せていない。


それが、全くの不意打ちを食らった。

何時以来だろうか。


お得意の奇跡を使用したのか?

そうでなければ納得できない。


彼女自身に強さは感じない。

彼女自身の強さよりも、奇跡の扱いに長けた女性だと認識している。

魔道具の作成をしていると言っていたので、その方面で重宝されていたのだろう。


だが、そんな彼女でも、奇跡を使えば人の背後を取れる、と。


思った以上にやっかいだな。

俺の護衛なんて、という気持ちは大きかったが、案外馬鹿にならないかもしれない。


やはり、懐中時計は常に身に着けておこう。



明後日からは遠征だ。

隣国のイシュタンが少々不穏な動きを見せているらしく、その調査に赴かなければならない。

友好関係である事を踏まえると、すぐ開戦とはならないだろうと予想されているが。


新婚で、結婚式も控えているというのに、皇帝陛下は人使いが荒い。


俺も出来れば行きたくなかった。

奇跡に関する情報を集め、「君」に一刻も早く近づきたかった。


それでも、皇帝陛下からの命であれば行かねばならない。

それが俺の仕事だ。



明日はレイニーと共に結婚式の準備と、急ぎ教会に行かねばならない。

公爵家が突然の結婚、何か理由を勘繰る奴は多くいる。

いくらか情報は操作せねばならない。


それから、彼女を護らなければ。

俺には多くの敵がいる。

嫉妬、妬み、恨み、なんでも。

その地位が、年齢に似つかわしくないのだ。


彼女を護る騎士を見繕わなければ。


他にも色々やらなければならないが、優先順位を考えると後回しでいいだろう。



奇跡の訓練は、思った以上に悪かった。


俺は要領よくいろんな事をこなせる。

だから、奇跡に関してもなんとかなるだろうと思っていた。が、甘かった。


俺の切り札である「後天的魔力保持」に関しては、検証が出来ていない。

何故ならば、奇跡を扱う必要があるからだ。


その希少故、他の誰に依頼する事も出来ない。

それに、今の想像の段階では下手に検証も出来ない。


実のところ、まだ仮説であり、可能性がある、程度でしかない。

奇跡を使える事はマストとして、その後も時間がかかる。


このままでは皇帝陛下の懐に入るのは何年後か。


くそっ、焦る気持ちが苛立ちを煽る。


思った以上に状況は悪い。


レイニーから「君」に関する一切の情報は得られそうにない。

回答が一貫して「伝えられない」だった事から、何か制約でもしているのだろう。

仮に、知っていたとしても、情報は得られそうにない。


レイニーの懐柔は意味が無いのかもしれない。

彼女の存在を無下にする必要は無いが、これ以上の干渉は無駄だと判断できる。

お飾りの妻でいいだろう。彼女に期待する事は無くなった。


それから、思った以上に奇跡の秘匿性は高そうだ。

後天的魔力保持者になるまでこの世界について何も知らなかった。

裏社会ですら、話を聞いたことは無い。

レイニーの様子からも、厳重な管理がされていそうだ。



ただ一つ、朗報があるとすれば、目の前で奇跡を見た時、記憶の断片が帰ってきた事。


「君」は僕に奇跡を使ってくれた。


どんな奇跡で、何をされたのかは分からないが、また一つ、「君」に関して思い出せた。

神の遣いで奇跡を使う。

それから実力も兼ね備えた恐らく赤い髪の毛の女性。


随分と絞り込めた。


が、神の遣いに関して情報を集める事ができるか。それが問題だ。


それからもう一つ懸念がある。

「君」の姿は、記憶で見たものと同一か?幻の可能性はないか?

あの赤い髪の毛は、雰囲気が女性だったのは、奇跡でその様に変化させていただけではないか?


分からない。奇跡に関する事は何も知らない。

レイニーに確認しなければ。



その後は、いつも通り過ごし、シュラクと今後の方針について話した。

悪い結果を元に、方針を変えなければならない。


奇跡の扱いも難しい、懐柔も無理、調査しても情報は手に入らない可能性が高い。

切り札も、今のところまだ使えない。



どうすれば君に会えるだろうか。

手が届きそうで、離れていく「君」を想う。


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