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EP:12

カーテンから漏れる光で起きた。

隣にジャックはいなかった。


本当に、いついらいだろう、全くの無警戒で寝たのは。

そのおかげか、魔力も回復して、寝不足も解消された。


代わりに、体がだるくて、左腕がズキズキと痛んだ。


あまり頭が働いてない。

何とも言えない感覚でふわふわしていた。


昨日……凄かったな……


一般的にはむしろ優しい方だったはずだが、初めてだったレイニーにはとても刺激的な夜だった。


そこで気が付いた。


あ、服……


ベッドを見回して、近くに服は落ちてない。

身体を毛布で隠し、床に落ちているネグリジェを拾って着た。


使用人は呼ばないと来ないと言っていたから、近くにあったベルを鳴らす。


何もせずベッドで待った。


出来ればメノールに来てほしいな……


そう思いながら、外から聞こえる鳥のさえずりに耳を傾けていた。


しばらくして、「コンコン」とドアをノックされた。


「はい」と声をかけて、入ってきたのはジャックだった。


びっくりして毛布を深めに掴んだ。

心臓がドキドキする。


「レイニー、おはよう」

「お、おはようございます、ジャック」


ジャックが側に来て、近く、ベッドに腰かけた。


「体は大丈夫か?」

「は、はい。問題ないですわ」


笑ってみせる。

昨夜の様に硬直したり、思考が停止することはなかった。

少し緊張するけど、普通に会話できる。


「昨夜は……」


体がビクッと反応した。

それを見たジャックが笑う。


「随分と砕けた口調だったが、もう元に戻ったのか?」

「あ……そうだったかもしれませんわ……」


「そうか、まぁどちらでも良い。俺には好きな方で接してくれ」

「ありがとうございます」


それから、しばし沈黙が流れる

ジャックの表情は見えない。


「レイニー、すまなかった」


驚いた。


「な、どうして謝るのですか?」


少し言いにくそうに、ジャックは溜めてから言った。


「思い返せば、許可はしてなかったと思うし、レイニーは選択肢が無かっただけなんじゃないかと思って」


確かに、言葉だけだと否定的だった気がする。


「だからその、嫌だったんじゃないかと思って」


そんな、優しい言葉が出てくるなんて。


「俺は、レイニーが嫌がる事は極力したくない。これは契約婚だ、夫婦のフリだけでいい」


ジャックは、もしかしたら私が思っているよりも随分優しいのかもしれない。


「すみません、ジャックの事を誤解していました。もっと性格の宜しい方かと思っていましたわ」


ジャックがこっちを見る。

やっぱり綺麗な瞳だなと思う。


「昨日の事は……私も言葉が足りてなくて申し訳なく思います」


見つめる、その時間が今は心地よい。

昨日は、あんなに恥ずかしかったのに。


「嫌ではありませんでした、むしろその、良かったといいますか……」


よかった……よかった?


「そうか、それならいいんだ」


なんていうのが正しいのか。

よかった……いや、嬉しかった……?

言葉を探していたら、ジャックが続けて言う。


「レイニーは俺の事が好きなのか?」


びっくりして思考が止まった。

ん……!?は……!?


「ん、いえ、好きじゃないです」


慌てて言い直す。


「いえ、あの、嫌いではありませんわ」


えっと、弁解はできてないか。

なんだろう、適した言葉が見つからない。


「そうか……では、これは嫌か?」


ジャックがゆっくり、私の髪の毛を触る

ピクっと体が反応したが、別に嫌なわけじゃない。


「……嫌じゃないです」


今度は、ジャックの指が耳に触れる。

やっぱり体が反応して、顔は熱くなるけど、嫌じゃない。


昨日からよくピアスに触れている。

気になるのかな……。


「これは?」

「だ、大丈夫です……」


ジャックは少し考えて、私に向き直した。


そのまま近づいてくる。


えっえっと、戸惑いながら目を瞑る。


ジャックの手が、私の腰を掴む。

頭を支えて、キスされた。


「んっ……!」


突然の事で思考が乱れる。


息がしたくて、口を開けると、ジャックの舌と絡み合う。

身体を引き寄せられる、密着が、途端に恥ずかしい。


快感が襲ってくる。脳が蕩ける。思考が止まる。


手でジャックの胸を叩く。

それでも離してくれない。


体が熱くなる。

ジャックを叩く手が緩む。

気持ちよくて、本能が求めてしまう。


それからやっと、解放してくれた。


乱れた息を整える。ゴクンッと唾を飲む。

少し見つめ合って、ジャックは悪戯っ子の様に笑う。


「これは?」


かあっと熱くなる顔を押さえて伝える。


「これはちょっとダメです……」


ジャックが笑いながら、そうじゃなくて、と言い直させる。


「嫌か?」

「い、嫌じゃないです……」


もう、どうにでもなれ、という感じだった。

思考が止まることに少し慣れた。

こういう時は混乱しないで、流れに身を任せるのが良いと思った。


ジャックは満足した様で、離れていった。


「後でメノールを寄こそう。俺は仕事に戻るから、何かあれば書斎に来い」


そう言って、速足に部屋を出て行った。


まだキスの感触が残っている。


もしかして、弱点がバレたかもしれない。

自分から伝えた訳じゃないけど、昨夜愛されている時に、沢山キスされた。

他にもいろんなところをキスされたし、ジャックがキスを好きな可能性もあるけれど、

なんか、さっきのは、確かめる為のキスだったような……。


昨夜の事を思い出して、みるみる体温が上がった。


ベッドの枕に埋まって、しばし気持ちを落ち着けた。


というか、嫌かって確認されたけど、昨夜あんなことしといて嫌なことなんてない……。

なんか、してやられた気がする……。


女性の扱いに慣れている人に、何も耐性を持たない赤ちゃんが勝てるわけもない。


もんもんとしながらメノールを待った。


しばらくして、ドアがノックされる。


「はい」と声をかけると、メノールが一礼して入ってきた。


「奥様、お体は大丈夫でしょうか」

「えぇ、問題ありません。左腕が痛むので、後程鎮痛剤を頂きたく思います」


「かしこまりました。それでは用意致します」

「ありがとう」


「朝食は召し上がりになりますか?」

「そうね……今何時かしら」


「10時を回ったところでございます」

「10時!凄く寝過ごしたわ」


あまり食欲も無いのだけど、折角の食事が勿体ない。

どうしようかな、と悩んでいたら、メノールが提案してくれた


「宜しければ、朝食を簡単にアレンジすることも可能です」

「そうね!そうして頂けるかしら。ありがとう」


「本日のご予定ですが、午後から講師がご挨拶に伺うと聞いております。ですが、後日でも構いません」

「大丈夫です、予定通りに進めてください」


初夜の後だからだろう。

ありがたいな。

その気持ちが、寄り添ってくれるその優しさが。


「その後、旦那様がお呼びです。内容は伏せられております」

「分かりました」


きっと、奇跡に関することだろう。

ジャックは忙しいと聞いているし、時間を作ってくれたのならできる限り教えたい。


「それでは一度、退出させて頂きます。またお伺い致しますので、少々お待ちくださいませ」


それから鎮痛剤を持ってきてくれた。

ありがとうと感謝を伝え、一緒に自室に戻った。


メノールが部屋を片付けてくれたのか、私が荒らした部屋が綺麗になっていた。

申し訳ない、もう焦らない様にするから許してほしい。


朝食に向かうために準備する。

本来は数名で準備するが、私の背中の傷を考慮してくれているのだろう。

メノールが一人で担当してくれている。


メノールには申し訳なさと、感謝しかない。


食堂に向かった。

温かいスープと、少量のサラダ、卵を使ったサンドイッチと、果物。

サンドイッチにアレンジしてくれたのだろう。

小さめにカットされて、自分の食べる分だけ取ってくださいのスタイル。


気分よく過ごせてとても満足した。


自室で考え事をしながら、講師を待つ。


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