5.神器
眩しい日差しで私は目が覚める。体が異様に重たくて上手く動かせない。ふとお腹の方を見ると、ルージュが私の上で寝ていた。
私はルージュをゆっくりと地面に寝かせてから、立ち上がる。昨日本気で戦ったせいか、筋肉痛が少し酷い。まあ、耐えれないというわけではないので、私は川で顔を洗う。
今日は王都ニールに出発する日でもあり、クレオメとお別れの日でもある。最初は何とも思わなかったが今は少しだけ寂しい。
「ほおっほおっ、あらかた準備が整ったな」
起きたルージュと一緒に朝ごはんを食べてから、私達は魔法で必要な物を収納し準備を終わらせる。
ちなみに準備したものは、4日分の食料と水。そして簡単な地図と、クレオメが書いた王都に着いた後にある人に渡す紹介状。
そして、最後は新しい服。
「ふむ、似合っておるのう」
クレオメがいつの間にか作った物らしく、怖いことにサイズを測ってもないのにぴったりだった。けれど、そんなこと気にせずに、ルージュは嬉しそうにお礼を言う。
「今までありがとうございました。お世話になりました」
「気にせんでいい。強く生きるんじゃぞ」
「私も、ありがとうございました」
「ほおっほおっ、元気でな」
ルージュ、そして私の言わないと失礼だ、そう思って言ったお礼の言葉を、クレオメは静かな笑みで聞いて、いつも通りの言葉で返してきた。
きっとまたどこかで会える、思わずそう思ってしまう程の穏やかさだった。だから私は最後、ほんの少しだけ笑って言う。
「また、いつか」
「そうじゃな。またいつかじゃ」
今の私達に、別れの言葉は似合わない。
私は振り返らないと決めてルージュと手を繋ぎ、歩き出す。クレオメと一歩ずつ確実に離れていく。見えなくなる場所まで離れていく。でも不思議と、朝感じた寂しさはなかった。
●○
ルージュとサテンが去ってから数十分後。クレオメは一人川の水を飽きることなく眺め、暇を楽しんでいた。そんな背後に、人影が現れる。
「あの娘をどこにやった?」
低い低いその声には、焦りと憎しみが込められている。クレオメは振り返りもせずに、首を傾げながら言葉を返す。
「はて、何のことやら?」
「クソジジイ!出せ!あの娘二人を出せ!」
「ほおっほおっ、そう騒ぐな童よ」
「この……」
ズンッと大地が軋み、魔力が悲鳴をあげる。辺りは夜のように光を失い、その代わりに上から物凄い重圧がのしかかる。
「五、六、七か。弱いのう」
クレオメはその言葉を言い終わって初めて振り返る。とても楽しそうな笑みを浮かべて。
元々クレオメは、隣国である王国ヤタナの王都エルマからの頼まれごとをこなして、王都ニールに帰る途中、綺麗な川の水を飲もうと空から地面に降り立った。
その時たまたま、極限まで練られた魔力で空間認識阻害を受けていたルージュとサテンを見つけたのは。
けれどクレオメがそれに気付いて数分後、魔法が解けると同時に少女二人は魔物に見つかり襲われ、それを助けたのだ。
誰がどうして魔法をかけていたのかは分からない。だが、一つだけ分かった。少女サテンが付けていた一見普通の指輪。
あれはきっと、この世に存在してはいけないもの。
「『重力湾曲』」
クレオメのその一言で、姿を隠していた残り六人が一点に集まる。
「ほおっほおっ、面白い話をしてやろう。儂は闇を司る大賢者と呼ばれておる。それ故、こんな話を知っておるのじゃ。深淵から蘇りし、神器の話」
もう数十年前に聞いた昔話。
神が人間に与えた三つの武器、剣、盾、指輪。その三つの武器は強大な力を持ち、三つ全て集めれば神になれるとか。故に、魔王が封印したと。
だが、その封印は人間によって数百年前に解かれたと。
「どうじゃ?面白い話じゃたろ?帰ったら主に伝えると良い。もう手遅れじゃとな。『空間移動』」
クレオメが言葉を言い終わると同時、辺りは再び明るくなり、何もなかったかのように静寂が訪れる。
ふと空を見上げると雲一つない快晴で……久しぶりに嫌いな青空をクレオメは眺めるのだった。
この小説の投稿、約九ヶ月ぶり。終わってますね。本当に、ごめんなさい。
別に忘れてたとかそういうのではないんです。時間がなかったんです……本当はちょっとやる気もなかったんですが……
ですが!これからは最低二週間に一話投稿、頑張ります!!……少ないですよね
でも、本当に完結までは必ず書きますし、こんなに投稿が止まることももうないです。
だから!許して下さい!
では!
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