4話 魔法属性『空(から)』ではなく、『空(そら』。すべての魔法を使えるうえ、自動でバフまでかけられるブッ壊れ能力だった。
引き続きよろしくお願いいたします。
断れるわけがなかった。
魔法属性・「空」と診断されて以来、魔法の使えない無能としてしいたげられ続けて生きてきたのだ。
それが突然魔法を使えるようになったうえ、人にバフまでかけていたかもしれないときた。
出会って間もない女性の家に招かれること自体には抵抗感がなくはなかった。
が、どうしても真相を知りたい気持ちが、その不信感に勝ったのだ。
「では、改めまして鑑定させていただきます。目を瞑ってもらえますかな」
レベッカの家は、ここマーレシティの住宅地の中でも一等地に構えられていた。
周りにあるのは貴族の屋敷ばかりだ。
聞けば、彼女はジェメール公爵家のご令嬢であるという。
ジェメールといえば、王家の元、中央政権の重職を代々担う名家だ。
そんな庶民の俺には、落ち着くことのできない屋敷の一室。
大きな水晶玉を挟んで、神官と向かい合う。
「む、むむっ……これは、なんとも珍しい! チェーロさん、あなたの魔法属性はこれですじゃ」
少しののち、俺に手渡された紙に書かれていたのは、「空」の一文字だ。
わかっていたことだが、落胆する。
「やっぱり、俺の魔法属性は「空」ですか」
「から? ほっほ、なにを勘違いなされておるのかな。これは、「から」ではなく「そら」と読むのです」
……はい?
「そんな魔法属性聞いたこともありませんが」
「そりゃあ100年に一人ともいわれる超ユニーク属性ですからな。かくいう、私も長く神官を務めてきて、もう何十万人と魔法適性を見てきたが、実際に見たのはあなたが初めてじゃよ。
文献の中の幻の属性だとばかりおもっていた。だが、ううむ、間違いなさそうじゃ」
「……から、じゃなくて、そら……。それってどんな属性なんですか」
「うむ。簡単に言えば、全てですなあ。空のように、この世のすべてを包み、支える能力じゃよ。
全方向に隙のない超特級の神スキルじゃ。まさか生きているうちにお目にかかれるとは。幸運極まりない」
「……そんなめちゃくちゃな属性がこの世に?」
それって強すぎやしないか。大ハズレどころかひっくり返って大当たりでは?
俺が首をひねっていると、口をはさんだのはレベッカだ。
「やっぱり、最初にハズレだってくだした神官が無能……おっと。間違ってたんですよ。だって、さっきのチェーロさんは実際に魔法も使って見せたしバフもかけてくれたじゃないですか」
「でも、ほかの属性魔法はまだ使ってないよな」
「使ってないだけですよ、きっと。だってこれまで魔法は使えないと思い込んでらっしゃったんでしょ? なら、きっとそうですよね、神官さん」
レベッカがこう振るのに、神官は首を縦に振る。
「えぇ、レベッカ・ジェメールさま。まったくその通りです。
この空属性魔法の特徴は、なによりも、その自動バフ効果。
仲間や信頼した者、力を貸したい、力になりたいと願った相手。彼らの欠点を自動で補い、また長所をより高める能力なのです。
しかも空属性を持つ者は、このバフをかけた相手のスキルや能力を会得することができるうえ、能力鑑定すらも可能な属性!」
スキルや能力が手に入る。
それを聞いて、フレイムシールドが発動できた理由がはっきりした。元パーティリーダー・ガーバーに対して、俺は知らずのうちにバフ魔法をかけていたらしい。
「でもいきなり鑑定ができるようになったのは、どういう……?」
「はて、まだまだ未知の属性でございますからな。きっと、『魔法を使用する』ことが、能力解放のトリガーだったのでしょう」
神官は変わった属性に出会えたことで、よほど興奮しているらしい。さらに鼻息を荒くして、付け加える。
「今後、チェーロさんがこの能力をつかいこなしていけば、より高みにいたる可能性もありますぞ」
「より高みに、ですか」
「えぇ、きっと。だって、空はなによりも高いでしょう? 我々には想像もつかない境地まで、きっといつかはたどり着きますぞ」
神官は最後に優しく微笑んでいた。
最後に、神の加護があらんことを、と祈りを捧げてから去っていく。
俺がまだ現実味を持てずにいると、
「どうかお願いします。私とパーティ組んでくれませんか!? あなたしかいません、チェーロさんっ!!」
レベッカがそのベージュの瞳をうるうる潤ませて、唐突にこう懇願してきた。
すべてそのものこそが「空」!!
まだもう一話、今日投稿しようかなと考えています(検討中)。
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