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3話 致命的な命中率の悪さも、俺のバフ魔法にかかればコントロールが効くらしい。


ひきつづき、よろしくお願いいたします。


 魔法や特殊スキルが使えたうえ、よもやあんな大物を倒してしまえるとは。


思考の整理がつかないでいると、



「すげえ、なんて強さだ! 終わったと思ったぜ」

「助かったよ。まさにヒーローだ、あんちゃん!」


状況が気になって、近くに残っていたらしい冒険者らが脇からでてくる。


あっという間に、俺と雷魔法の少女とは周りを囲まれる。

拍手や歓声が、いたるところから上がっていた。


「なあ、あんたたち。なんで初級ダンジョンなんかにいたんだ? あんたたちなら、もっと上のダンジョンだって攻略できるだろ」

「い、いや、この子とパーティを組んでるわけじゃありませんから。それに、魔物と戦ったのだって今が初めてで……」

「はじめて? 冗談よせやい! 歴戦の冒険者様だろう? なんせ、そんなぼろ刀一本であのドラゴンを倒しちまうんだから」


いやいや、本当なんですって!


混乱していたこともあった。

律儀に応対していると、腕がぐいっと引っ張られる。


「ねぇ、炎の冒険者さん! ちょっと来て、こっち!」


人波をかきわけて、俺をどこぞへと連れて行ったのは、さきほどの魔導士の少女だ。


「ふー、ここまで来たら、まともに話せそうかもです」

「でも、ここダンジョンですよ。森の中ってまた魔物が出るんじゃ……」

「その時は倒しちゃいましょう、えいっと」


頭に被っていたフードを脱ぎつつ、おどける少女。


戦っている最中はよく見ている余裕もなかったが、こうして改めて見てみれば、なんとまあ可愛らしかった。


小さな顔に、くりくりと大きな丸い目。

通った鼻筋と、魅惑そのものをたくわえて潤んだ唇。


またベージュ色のショートヘアがよく似合っていた。まるで花飾りのように、さらに彼女の可憐さを引き立てる。


自己紹介をしあえば、彼女は名をレベッカというらしい。


年齢は俺の一つ下の17。だが、そうとは思えぬほど、彼女はどこか垢ぬけて見えた。


「さっきはありがとうございました、チェーロさん。とても、とても感謝しています。なんの魔法を使ったんです? 私の魔法力まで底上げされた気がしますけど……」

「えっと、魔法を使ったのはさっきがはじめてで」

「あはは、もう冗談は大丈夫ですよ~。私以外誰も聞いてません」


彼女はまるでジョークを聞いたかのように、肩を何度かたたいてくる。


が、冗談じゃないんです、これがなぜか。


別に隠すことでもない。

俺は、魔法が使えなかったこと、殺されかけて追放されたことなど。

今ここに至るまでの経緯をざっくりと話した。すると、少女は目を丸くする。


「じゃあ、私の技が安定したのは、あなたも分からない謎のスキルのおかげ……?」

「えっと、たぶんそうかと思いますけど」

「そんな魔法、聞いたことないですよっ。……ないですけど、でも、たしかに私の魔法が安定したのはたしかだし、誰かの魔力に包まれる温かさを感じたというか。

あの、よければ今もう一度試してみてもいいでしょうか」


「というと、俺がバフをかけた時と、かけてない時とを比べるってことです? いいですけど、うまくいくかどうかは保証できませんよ」

「とりあえず、実践あるのみですよ」


ものは試し、と彼女はさっそく先ほどと同じ魔法・エレクトリックショットを詠唱とともに近くの大岩に向けて振り付ける。



が、それはあらぬ方向、空の彼方へと飛んでいく。

きらーん、と最後に輝きを残して雲間に消えていった。


やっぱりコントロールはいっさい効いていない。

この時点で、鑑定してみれば、さきほど同様、命中率は2/100だ。当たりようがない。


「ほら、やっぱりだめだ……。ね、お願いしますチェーロさん。もう一回、私に力を貸してください」

「そりゃいいですけど。できるかどうか」

「まあまあ、減るもんでもないですよきっと♪ どーか、どーか!」


レベッカは、自分の武器がよくわかっている。

その圧倒的な美貌にぐいっと迫られて本気で祈られたら、むげに断るわけにもいかなくなる。

俺はひとまず、さっきと同じようにして祈ってみることにした。


「エレクトリックショット!!」


と、それが、うまくいったらしい。


轟音が鳴り渡る。

彼女が詠唱とともに放った白い雷の一撃は、まっすぐに走り、大岩を砕いていた。


「ほらねっ」


ふたたび鑑定で見てみれば、たしかに彼女の『命中率』項目はまた70/100まで上昇していた。


ぴょんと跳ねるように俺の方を振り返り、笑顔を見せるレベッカ。


「やっぱりチェーロさんが私にさっきのバフを与えてくれていたんですよ! やっぱりすごい冒険者さんなんですね、チェーロさん」


なぜか自分ごとのように、得意げな表情をしていた。


どん、とそれなりの主張を見せる胸の丘を張り出す。


「俺は落ちこぼれでしたよ。それに魔法属性だって、『から』と下されたくらいですから」

「それ、たぶん間違ってたんですよ。そう思い込まされていたんです。それこそ魔法が使えないってわかってからは、詠唱なんてしてこなかったのでは?」

「……たしかに」


から」属性と判断されて最初のころは、魔法の使用を諦めきれず、何度も詠唱を繰り返した。


しかし、それが無駄な努力と気づいて以来、むなしさに襲われたくなくて、むしろ一切しなくなった。


からじゃないですよ、きっと。だって実際に魔法も使ってましたし、バフもかけてくれました。これは間違いありませんよ。

 あ、そうだ。よかったら、もう一度、判断を下してもらいますか?」

「もう一度……? 魔法能力の再鑑定ってことですか?」

「そうです、そうです。鑑定する神官の経験が浅い場合、魔法属性やスキルの見極めに失敗している場合もありますし。私のお屋敷に来てくださいっ。

 何人もに鑑定を下している百戦錬磨の神官をお呼びしますよ。知り合いなんです」





夜も投稿する予定でございます!

次はいよいよ鑑定のときであります。


ぜひお気に入り登録、評価などをいただき、楽しみにいただければと思います。


たかた

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