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27話 醜い笑い方


「レベッカ、思いっきりやろうか、雷魔法」

「おっきましたね! 待ってましたよ、丸焦げにしてやりましょっ!」


俺はレベッカと同時に詠唱、エレクトリックショットを発動する。


その高威力の電流は一瞬にして、葉や根の細胞を焦がし切ったらしい。

灰があたりに舞うなか、俺はトレントの本体を探す。


「ふう、やっと見つけた。あれだな、本体の幹は。

あの幹に浮かんだ口で、冒険者から魔力を吸い取り、食らう。恐ろしい魔物だな、まったく。危険度はAって話だけど、それ以上かもな……」


 ついに、ご対面だ。

前のパーティにいたときにその姿は拝んでいたから、数週間ぶりのことだ。



「うわあ、こっわ。あと、ビジュアルが生理的に受け付けません。まじ無理。あーいうのNGです」

「レベッカちゃん、そんなこと言ってる場合やないよ!?」


二人は口々に言いつつも、警戒の態勢を取る。



長期的な戦になると踏んでいるようだったが、そうさせるつもりは毛頭なかった。


自分でも自分が消えた感覚だった。

腰から下に風属性魔法をまとわせて、俺はすぐさまビッグトレントの本体へと急接近する。


「風よ、その勢いを刃に変えて穿て。疾風斬り・シャープブラスト!!」


極限まで魔力を研ぎ澄ました風属性魔法の剣技で、連撃を食らわせてやった。


「キシャアアアアアアッ!!!」


森を支配せんとしていた魔物。


あまたの冒険者を餌食にし、肥料として大きくなった怪物。だが。



「……切り刻んじゃえば、ただの植物だな」






あたりの木々がいっせいに力をなくし、枯れていた。

緑だらけだった景色が、今やこげ茶色に変化しているほど。


それはつまり、このあたり一帯すべてがトレントの身体の一部であったということだ。


「倒しちゃった……! あんな大物を、それも一撃で! チェーロさん、やっぱり天才だっ!」

「うんうん、なんか戦ってる姿を見るたびに成長していってる感じがするなあ。どんどん高みに向かってるっっていうか、それこそそらに向かってる感じやね!」


二人がこう褒めてくれるのを聞きながら、俺は感慨に浸る。



魔法に覚醒してからというもの様々な敵と戦ってきて、自分が強くなったことは分かっていた。


ただ、どこか現実味がなかったのだ。



けれど、こうして前パーティで、討伐し損ねていた敵を、打ちのめしたことにより、それが確信へと変化していた。



これでやっと、前パーティでの忌々しい過去を本当の意味で乗り越えられた。

そんな気がする。



「二人の協力があったからだよ、ありがとうな」


俺は二人に手のひらを向ける。


するとレベッカもセレーナも笑顔を弾けさせながら、それに合わせてくれた。

勝利のハイタッチが交わされる。



充実感に満ちた歓喜の瞬間、


「はははははっっ!!!! やるじゃねえかよ、荷物持ちィ!!」


それを打ち破ったのは、聞き覚えのある声であった。



幸せな日々を過ごしていても、その醜い笑い方は忘れるべくもなかった。


元パーティリーダー・ガーバーの声であった。



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