表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/30

25話 上級ダンジョンも余裕の道中

区切りまで投稿します。



商談が無事にまとまり、その後。


俺たちはついに上級ダンジョンへと足を向けた。



「いやぁ、ドキドキします、私! はあああ、ついに上級ダンジョンだっ」

「うちも。これまではノワール商会に引き摺り回され放題やったからね……。パーティ組むなんて考えたこともなかったし」


「ですよね、楽しみです! メイドのエミリイに美味しいものを準備しておいて、ってお願いしておいたから、帰ってきたらぱあっといきましょうっ! あ、もちろんゆで卵もたっぷり用意してもらってますよ、セレーナさん♪」


レベッカはよほど嬉しかったらしい。

ぴょんぴょん跳ねるさまは、傍目に見れば、もはや遠足に出かける少女だ。


背中に差されている魔法杖の方が不釣り合いに思えてくる。


「おいおい、少しは気を引き締めてくれよ。上級ダンジョンは、魔物だって相応に強いだろうし……なにが起こるか分からないから身構えておいた方がいい」

「分かってますよ〜、オンオフの切り替えは得意技なんで大丈夫ですって。というか、それを言うならチェーロさんのそれはいいんですか?」


レベッカが指すのは、俺が腰に提げた短剣だった。


「もっといいものを揃えてからでもよかったんですよ? それこそ今日だってお金が入りましたし、パーティのお金はまだ余裕もあります」

「んー……とりあえずはいいよ。壊れるまでは、これを使ってみる。冒険者初めてからずっと使ってて一番手に馴染むし、それに思い入れもあるからさ」


たしかに安物だしガタもきてはいるが、苦しい苦しい三年間をともにした愛剣だ。


それに、持っていることで、気が引き締まるというのもある。


おかげさまで、今は幸せにやらせてもらっている。

だが、だからこそ過去に舐めた辛酸を忘れてはいけない。境遇に甘んじて、ガーバーのように傲慢になってはいけない。


自分への戒めとしても、ちょうどよかったのだ。



「うちやって、本当ならもっと強く止めてるとこやけど……。というか、うちなら絶対、武器も防具も完璧にそろえてるやろうけど。

その短剣一つで、めちゃくちゃな人数の敵を倒す姿をこの目で見てもうたからなぁ。チェーロくんなら、問題ないね」

「たしかに! 泣く子も黙る衛兵団の荒くれものを黙らせる、チェーロさんの向かうところ敵なし♪」

「だから油断しすぎないでくれよ!?」


がやがやと話をしつつも、俺たちはついにダンジョンの中へと踏み入れる。



上級ダンジョン『深層の森』。

そこは、その字面どおりの場所だった。


一歩踏み入れた途端にうっそうと植物がしげり、中には魔植物なども混じっている。


そしてそして……。

そんな先も見通せぬような草陰から、魔物たちが飛び出てくるのだ。


まず出てきたのは、ファイアオーガであった。


身長、恰幅ともに人間の倍近くはある図体の色は、ネイビー。筋骨隆々としたその体躯でもって、こちらへ襲い掛からんとしてくる。


多少、知能のある魔物だ。この個体は、冒険者から奪ったらしい大剣を手にしていた。


ウオオオオン、という気味の悪い声とともにそれを振り上げる。


一見すると、ピンチだったが……


「な、なんですかあれ!! やば、さすが上級ダンジョン……! けどけど、鈍いですね、こいつ!」

「せやね、ほらかかった!!」



バフをかけられた二人にかかれば、敵ではなかったらしい。


セレーナが水晶から作りだした毒の沼に、オーガは足をからめとられる。



祈りをかける際、今回はあえて呪いを解除しなかった。

その代わり、端的に『威力』を「420」から「1020」まで引き上げた。


天下の衛兵団たちでさえ、「500」だったから、その威力はケタ違いだ。



火を吐くまでもなく、すでに瀕死のオーガ。


そこへ追い打ちをかけるは、元から威力全振りの魔導士・レベッカだ。今回もしっかり命中率を向上させておいたのも、対象が動きを取れなくなっていたこともあった。


杖から至近距離で放たれた強力な雷魔法が、オーガの全身を焼き尽くす。


「やりいっ! いえい、チェーロさんのおかげで今日も魔法が気持ちいい♪」

「うち、こんな広い毒沼作れたんはじめてや……! ほんまおおきにな、チェーロくん!」



あっさり勝負がついてしまった。


俺の出る幕、なし! まあいいんだけどな? バフ魔法を使うことで、効率的に戦えている証ともいえるし。


と、思った矢先のことだ。


「グガアアアアアアッ!!」:


地鳴りのような声がしたと思ったら、すぐ横手の草むらから現れたのは、ホムラオーガ。


「し、し、進化系まででちゃったんですけどぉ!?」

「ちょっ、ってか最終進化系!? これはうちの毒も簡単には効いてくれなさそうや」


勝利の余韻に浸っていた二人が、唐突に焦りだす。


だが、二人より先に気付いていた俺には余裕があった。


「炎の一薙ぎ・フレイムスラッシュ!!」


一瞬でホムラオーガの懐へと飛び込む。



先に燃え盛る炎の波動を打ち込み、その上に剣身を叩きこむ。二段構えの攻撃をその図体に食らわせてやった。



ホムラオーガは、オーガ種の中では頂点。それどころか、上級ダンジョンでも早々お目にかかれない超のつく強敵。


ダンジョンによっては、ホムラオーガがボスになっているダンジョンもあると聞く。


だが、技一つで退治することができていた。


ホムラオーガが黒焦げになって、地面で灰の塊とかしている。



「えっ、チェーロさん……こんな一瞬で、あのデカブツを!?」

「ありえへん、ほんますごい、この人……。自信なくすかも」

「いいや、その必要はないって。さっき作ってた毒沼、かなりのレベルだったと思うぞ」



しかしまあ俺も本当のところは、思わぬ力の発揮具合に驚いていた。

この間、ノワール商会の手下どもと戦ったときよりも、明らかに体が軽く動きやすいのだ。



『魔法属性:空

 

体力 5000/5000

魔力 5000/5000

 威力 3600

俊敏 3600

耐久 3250

命中率 95/100


その他特殊効スキル 自動バフ(祈りにより発動)、能力鑑定、呪いの毒術』



ステータスを見てみると、そのわけを思い出した。


そうだ、俺のスキル。バフをかけた相手の能力値をまるっとコピーできるんだった。


そりゃバク伸びしているわけだ。

セレーナはそもそもBランク冒険者相当、かなり能力値が高い戦士だったしな。



それでも計算が合わないのはきっと、俺自身の成長にくわえて、レベッカたちの成長値まで俺に加算されているからだろう。




……なんだ、これ。

うーん、やっぱり、規格外すぎるぞ、この属性!





【新作宣伝!】

https://ncode.syosetu.com/n8251ho/

『元シナリオライターの私、嫌いな乙女ゲームのモブに転生したら速攻で婚約破棄されました。もうひっそり生きていくと決めたのに、なぜか主要キャラの王太子から際限なく溺愛されて困るし、展開が変わってくれない件!』

モブキャラ令嬢が、前世の知識シナリオライターを活かして、無双!


嫌いなゲームに転生してしまったので、メインキャラとは一切関わり合いになりたくなかったのに、なぜか王子からの溺愛が止まらない!

愉快かつ、ざまあありでスカッとする一作です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作宣伝!
みんなにバカにされる陰キャな主人公が、クラスメイトの超美少女とこっそりカップルチャンネルをやるお話です。 ビジネスカップルのはずなのに、彼女はなぜかぐいぐい迫ってくる!?
★ 陰キャな俺、クラスの美少女と擬似カップルチャンネルをやっているんだが、最近彼女の様子がどうもおかしい。 美夜さん、なんで離れてくれないの? 俺たちビジネスカップルだよな? 今カメラ回ってないですよ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ