21話 【side:ガーバー】認められない醜態
むろん、うまくいくわけもなかった。
前回同様にDランクの魔物に惨敗し、やぶれかぶれで帰ってくる。
ガーバーはコボルトに襲われ、再び右腕を負傷させられていた。
さらに、ファイアオーガにより両足は大火傷。
もともと万が一の救急手当を担当していたのは、チェーロであった。
その彼を追放してしまったガーバーたちには、ろくに手当の方法も分からない。
傷跡はひどく爛れてしまって、見るも無残な姿になっていた。
結果は、前回と変わらない。
まるで全く歯が立たなかったのだ。
「もう間違いない、やはりあの、チェーロが私たちになにかの力を与えていたのだ」
「……その可能性は高いな」
ワンダーとボーゲンは、認めざるをえなくなって、言う。
さしものガーバーも、口にはせずとも、もう分かってしまっていた。
自分たちの力は、チェーロによってもたらされていた可能性が高いことを。
嘘みたいな現実に、ガーバーはひとしきり放心したように笑ったのち、ぎりぎりと歯噛みする。
しばらくそうしたのち、思い至ったのは……
「はっははっ。な、なら! あの魔法属性『空』のカスを呼び戻せばそれで済む話。そういうことだよなぁ、お前ら!」
チェーロをパーティに再加入させると言う案だった。
彼の中でのチェーロのイメージは、凝り固まっていた。
誰にも必要とされず、魔法も使えない弱者そのもの。
今も誰からも必要とされず、路頭に迷っている社会のはみ出し者。
そう、決めつけていた。
だから、こちらから呼び戻せば、しっぽを振って喜んで帰ってくるに違いない。
「……正気ですか、ガーバーさん。あんな追い出し方をしておいて戻ってくると思いますか?」
ワンダーは、その案がいかに都合のいい考えであるか気づいていた。
しかし、ガーバーは『戻ってくる』と信じてやまなかった。
その頭の中にはただ、『チェーロが戻ってこれば、全てが元通りうまくいく』そんなビジョンだけが描かれていた。
「当たり前だ。元の待遇で雇ってやろう、そうだな、月給8万だ。野宿生活でも無職よかマシだろ!! 草でも食わせとけば、俺たちが十全に戦える!! 家畜を一匹飼うと思えばいいのさ!!!」
傷だらけのガーバーによる狂ったような高笑いが、ダンジョンの入口付近に響き渡る。
「…………悪いですけど、今回ばかりはガーバーさんにもついていけませんよ」
「同感だ。馬鹿馬鹿しい。連れ戻せるものなら、一人でやってみるがいい」
これが、パーティの亀裂を決定的なものにした。
ワンダーとボーゲンは早々と帰途につく。
「ワンダー、ボーゲン!! てめぇら、吠え面かくなよ!? 俺様が今に家畜、いや間違えたチェーロを連れ戻してきてやる!!」
叶うはずもないことに縋り付く者ほど、醜い者はいない。
ガーバーの決意表明だけが、その場に虚しく響き渡った。
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