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2話 秘められしチート魔法、覚醒!【全自動バフ】に【能力鑑定】!



引き続きよろしくお願いします。

ブクマ嬉しいです(^^)

魔法も使えない。金もなければ、職もない。



なにもかもを失って茫然自失となった俺がその足で向かったのは、「魔の黒き湖」であった。


初級ダンジョンのある土地で、ここに出現する魔物のランクは基本的に低ランクだ。


ギルドに所属していない冒険者が立ち入れるのは、唯一この初級だけでである。



ほとんど無意識に、気づけば足がここに向いていた。


つまり、まあ冒険者をあきらめきれていなかったのだろう。


「……魔法も使えないってのに、こんな短剣一本でなにやってんだろ、俺」


腰に提げてきた武器は、護身用の短剣一本。


抜いて刀身を確認してみれば、なんとも安っぽい。ほとんど使う機会がなかったため、錆びこそないが、ほぼなまくら刀だ。

少ない給料から捻出して買うには、これくらいが限度だった。


つまり、丸腰に等しい。


「……もしコボルトに出くわしたりなんかしたら、死んだりしてな」


笑えない冗談を頭に思い浮かべたときだ。

少し先から、大きな悲鳴が聞こえた。


「た、た、助けてくれええええ!!! おそろしい魔物がでたっ」


なにができるわけでもないのはわかっている。

これまでの積み重ねで、自分の無力さは重々承知しているつもりだ。


けれど、体は勝手に動いていた。

たとえ実力がなかろうが、ここで人を見捨てて逃げるような真似はできない。


それが冒険者のあるべき姿であろう。



それに最悪の場合はその時だ。

一人で魔物にやられて死ぬくらいなら、知らない誰かでも守れて死ねるほうがいい。


それならば遠くにいる両親や姉も、少しは誇りに思ってくれるはずだ。



「な、なんだってこんな奴が初級ダンジョンに!」

「湖の主がいたんだ! こんな奴、BいやAランクパーティがいたって勝てないぞ」


悲鳴の聞こえた地点は、魔の湖の中心地だった。


たどり着いてすぐ、俺は事態が芳しくないことを悟る。



そこで冒険者たちを圧倒していたのは、水龍・アクアドラゴン。Aランクパーティにいた俺ですら対峙したことがない、強力な魔物だった。


その大きさはかなりのもので、体長は俺の10倍近い。遥か高いところから、その首がこちらを見下ろしていた。


鳴き声とともに、アクアドラゴンは水の波動を口から放つ。

それが一人の冒険者に迫るのを見て、


「頭を伏せてくださいっ!!」


俺はその前へと飛び出ていた。


水の波動がこちらへと迫る。間違いなく、終わったと思った。みじめな人生だった、と一生を後悔しかける。


しかし実家で待つ家族のことや、冒険者職に憧れていた過去の自分を思って、本当のダメ元。


「炎よ燃え盛りて、我が盾となれ。焔の盾・フレイムシールド!」


唱えたのは、元パーティリーダー・ガーバーが使っていた防御壁を作り出す魔法だ。


意味がないことは知っていた。

詠唱だけ真似したところで、魔法の適性がなければ、魔力は応えてくれない。



が、そんな俺の諦めとはうらはらに、身体を駆け巡ったのははじめての感覚だ。


そして、俺は思わず目を見開く。


「な、な、なんで…………」


 そこには願った通りの魔法、地面から吹き上げる炎によって防御壁が形成されていたのだ。


しかも、かなりの強度だ。

襲い来る水の塊を次々に、その場で蒸発させていく。勢いも一切衰えることはない。


どうして急に魔法が使えるようになったのか。

まるで分らず戸惑っていた俺の頭に、それは天啓のごとく振ってきた。


俺は、浮かんだ言葉をそのまま口にする。


「能力鑑定……!」


すると流れこんできたのは、こんな表記だ。


『魔法属性:空

 

体力 2000/2000

魔力 1990/2000

 威力 1500

俊敏 1500

耐久 1050

命中率 95/100


その他特殊効スキル 全自動バフ(祈りにより発動 効果上限∞)、能力鑑定』


謎の数値表示が、見えるようになっていたのだ。


「あんた、何者だ!? 龍の体長と変わらない大きさの防御壁なんて初めて見たぜ。……初級にくるような冒険者じゃまずありえねぇ。というか、上級にすらいないだろうよ!」


助けた冒険者が、後ろで声をあげる。

俺だって意味が分からないし人生初の魔法発動のうえに、謎の数値である。




これにより身も心も、おおいに混乱していたし、まだ半分夢見心地でいた。


が、そんな状況でもない。


「フレイムシールドっ!」


とにかく魔法を使えるようになったのだ。

ならば今は分析よりも戦うことだ。


「と、とにかく早くどこかへ隠れてください。いつまで持つかもわかりませんから」

「おお、恩に着るよ、青髪の兄ちゃん」


礼なんて言われたのはいつぶりやら。

思いながらも俺は防御を張り続けて、逃げ惑う冒険者たちの避難が完了するのを待つ。


自分でも目を見張るような強度であった。


さっきの数値表記では、『威力』の欄は1500。

推し量ろうにも比較対象がなく戸惑っていたが、はかなり高い数値のようだ。


冒険者パーティのランクにすれば、少なくともAランク以上か。


防御壁は大きな攻撃を食らってもびくともしないし、発動時間も意外なことにかなり持っている。



やがて、その場に残ったのは俺以外には一人の少女だけになった。

フードを目深にかぶっていて、その顔はよくは見えない。


「当たれ、当たれ!!」


少女は魔法杖を何度も何度も振り付ける。


そのたびに、バチバチっと音が鳴り、大きな電撃の球が放たれていた。


が、それはほとんどランダムな方向に飛んで行って、あたる気配がない。



例の能力鑑定を発動してみる。

と、自分と同じように彼女のステータスも見ることができた。


『魔法属性:雷


体力 300/300

魔力 300/500

 威力 1550

俊敏 50

耐久 100

命中率 2/100


その他特殊スキル なし』


なんだこれ……。


ほかのステータスはさておき、威力は抜群に高い。

ウォータードラゴンを抑えている俺の魔法威力が1500だからそれを上回っている。


問題は、致命的な命中率であった。


「うう~~、ちゃんと当たりさえすれば、倒せるはずなのにっ!! 相性もいいはずなのにいっ!!」


少女は意固地に言って、その場にとどまる。


そこへ、槍みたく尖った水の波動が降りそそぐ。

防御壁を彼女の前に張るには間に合わない。このままでは吹き飛ばされて、ただでは済まない。


どうにか彼女を守りたい。どうにか彼女に加護を。


「雷よ、その閃光で斬り裂け。雷光一閃・エレクトリックショット!!!!」


その思いは通じたらしかった。


圧倒的な威力で放たれた雷の球は水の玉を切り裂き、水龍の首元へと向かう。


「グ、グアッ!!」


大ダメージを負わせられたらしかった。

アクアドラゴンが、うめき声をあげ、水の下で尾を暴れさせる。


「は、はじめてまともに命中した……! なんで!? 青髪のあなた、私になにかしてくれました!?」

「えっ、いや、俺はちょっと祈った程度ですけど……」


けれど、そうだ。俺には謎のスキルがある。



彼女のステータスを再度鑑定してみると、2/100だった『命中率』の欄が、70/100にまで上昇していた。


すぐ下には、「(+68)」との記載がある。



これが、自動バフの効果……? だとすれば、補助が効きすぎというものだろう。



「というか、驚いている場合じゃないですよ。その雷魔法の力、貸してください。えっと、俺も叩きますから」

「そ、そうでした!」


ひるんだ隙を逃すわけにはいかない。


「雷光一閃・エレクトリックショット!!」

「炎の一薙ぎ・フレイムスラッシュ!!」


彼女と同時に魔法を発動した俺は、短剣の先から風の一閃を放つ。


風が傷を作り、雷がその傷を焦がしながら抉る。

混ざり合って圧倒的な威力となった魔法技を首元に受けたアクアドラゴンは、ついに息絶えて湖の中へと沈んでいく。


なんとも容易に倒してしまえたらしかった。


……なんだ、これ。




人生どん底に落ちてからがスタート! のはず!


というわけで、当作を引き続きよろしくお願いいたします。ブクマや評価も嬉しいです。

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