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19話 新たな仲間が増えるみたいです。

自分は毒魔法を唐突に使えなくなったうえ、自分に指示を与えていた男は倒れた。

どうしていいか分からなくなったのだろう。


背の高い少女はちょっと猫背になって、まだ立ち尽くしていた。


「これでもう、俺たちに戦う必要はないだろ?」


俺はまず、こう声をかける。


「……そうみたい。あなた、うちになにしたんですか? ヒール魔法なんて、生きてて初めて使いました……」

「ちょっとした特殊スキルだよ。君の魔法にかかっていた毒の呪いを解いたんだ」

「……うそ。それだけで解けるはずがない。

うち、これまでこの毒の呪いを解くために結構な努力をしてきたんですよ? それこそ、一流のヒーラーさんに高いお金払って診察だってしてもらった。それでも、ダメやったのに……?」


ここで、門がぎいっと軋みながら開く。


「それが本当なんです。チェーロさんにかかったら、不可能が可能になっちゃうんです。私も経験済みですから間違いありません」


俺の横までやってきたレベッカは、優しげな声で諭すように言った。


それから俺は彼女にバフ魔法のことを軽く説明した。

自分の境遇についても話を加える。


「……拾ってもらったパーティに恩義を尽くすために、どんな仕打ちを受けても我慢をしてきた?」

「あぁ、そうだ。殴られても蹴られても、魔法属性がからの俺なんかを雇ってくれてるんだから仕方ないってな」


「それって、うちと同じかもしれません。うちも、この呪いのせいで、なんの仕事にもろくに就けないでいるときに、ノワール商会の私兵団に誘われたんです。その毒は使えるって。

 で、蓋を開けてみたら、この毒で誰それを倒せ、とか毒を仕込め、とかそんな命令ばっかりでした」


そもそも彼女は人を癒すヒーラーになりたかったらしい。

だから毒をもって人を殺すなど、どうしてもできず、失敗したフリなどをして、誤魔化してきたそうだ。


デカ女、毒女と罵られ、本名であるセレーナ・フィオレという可愛らしい名前はでは一切呼ばれないような暗黒の日々に耐えながら。


「……いろいろ話しましたけど、すいません、全部言い訳ですね。逆らえなかったとはいえ、私もこの毒で、ノワール商会の悪事に加担してしまった一人です。どうぞ、捕まえてください」


「……たしかに、そういう考え方もできるけどさ。そうやって自分の罪を認められるあたり、俺は君を突き出すなんてことはできないよ」


レベッカは首を大きく縦に振って、同意する。


「そうです、まったくです。それでも捕まえようっていうなら、あなたを許してくれるよう、頼み込んじゃいますよっ。悪いのはぜーんぶ、ノワール商会ですし」

「そのとおりだな。俺ももちろん抗議させてもらうさ。聞いてくれるかはともかくな」


俺たちの言葉が、よっぽど思いがけなかったらしい。

セレーナは、その大きく目を見開く。やがて、その瞳からあふれ出したのは、透明なしずくだ。

決して、心の汚れたものには流せない真実の涙である。


「あれ、おかしいな……なんで涙なんか。ごめんなさい」


俺とレベッカはその様子を見て、二人うなずきあう。この状況で通じ合うことなんて、一つしかない。


「なあセレーナさん、俺たちのパーティに入ってくれないか?」

「…………え?」

「ノワール商会での仕事は、これでなくなっただろ? そこで、だ。実はちょうど、うちで新メンバーを募集してるんだ。君みたいな強くて心優しい人が入ってくれると嬉しいなと思ってさ」

「で、でも、うち毒しか……」


言いかけて、彼女は気づいたらしいが、一応補足として伝えておく。


「そこはえっと、俺の自動バフ魔法があれば、なんとかなるはずだから」

「……でも、デカくて邪魔になるかも」

「そんなこと断じてありませんよ。というか、デカいなんて思いませんでしたし」


これには、レベッカも深く深くうなずいた。


「ですです、むしろ可愛いくらいですよ、セレーナさん。

それに、普段は毒も扱えて、バフを受けたら今度はヒールもできるなんて、最強ですよ最強! 強くて可愛い人なんて、大歓迎です!」


ここでレベッカは、セレーナを陥落するためさらなる攻勢に出た。


「もしかして、お宿とかお賃金の心配してます? それなら、問題ありませんよっ! うちの屋敷に住み込んでもらって結構なんで!」


俺を誘ったときと同じような条件だった。

聞けば聞くほどホワイトなその条件の数々に、俺は改めて感心させられる。


が、それら条件はほとんど関係なかったらしい。

セレーナはレベッカの言葉を途中で遮って、


「ヒーラーとして誘ってもらえるだけで、うちには望んでもみないような話……。こんな、うちでよければぜひ、こちらから、よろしくお願いいたします」


腰を深く折り曲げて、丁重に頭を下げる。


「やった、やりましたよ、チェーロさん! これで三人パーティです♪」

「うん。なんだかんだ邪魔が入りつつも順調だな」



こうして夜中の襲撃事件は、意外なところに収まった。


懸念だった新メンバーまで獲得できたのだから、一石二鳥である。

このまま終われたら気分は最高だっただろうが、後始末がまだ残っていた。


「とりあえず、まずはこいつらを通報しようか。って言っても、じきに衛兵の方から来そうだけどな」

「そうでした……! 結局、衛兵がくる前に片をつけちゃいましたね? さすがチェーロさん、仕事が早いっ。基本給、昇給しちゃいます! あ、もちろん明日は今日の代休でお休みにしましょうね」


うん、めちゃくちゃホワイトだ、うちのパーティ。






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