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14話 募集もしてないのにパーティ入団希望者が多すぎな件


引き続きよろしくお願いします。

屋敷を訪れた衛兵により手渡された一通の証書が、レベッカを舞い上がらせていた。


ありがたや、ありがたや。そう、俺を拝む。


「すごい、すごいですよ、チェーロさんっ! ダンジョンの立ち入り許可のみならず、辺境伯さま直々の依頼がギルドを通さず来るなんて! チェーロさんは神の子ですか、もしかして神様そのものだったりしません?!」



不思議な話だった。

仕官話も謝礼も断った翌日の話である。



本来ならば、失礼な人間だと切り捨てられて然るべき。

だのに、辺境伯さまから与えられたのは、普通では到底考えられないような厚遇であった。


レベッカは証書を握り、飛びつく勢いで俺に身を寄せてくる。

一気にゼロ距離に入ってくるので、俺は身をのけぞった。


やっぱりこの距離感には慣れない。


「さっそくこの『ビッグトレント討伐』クエストに出向いちゃいますかっ!? さっくりあっさり、実績作っちゃいますか!」


「おいおい、ちょっと落ち着いてくれよ。気持ちがはやるのは分かるけど。

 その前に片付けなきゃいけないことがあるだろ」

「あ、そうでした。すいません、私ったら、なにかあるとつい周りが見えなくなっちゃうみたいで。

 ちゃんと正してくれてありがとうございますっ☆」


てへ、と舌を出して自分の頭を軽くこづくレベッカ。


うん、超がつくほどあざとい。


こんな振る舞いを見れば、距離感を気にしていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。


俺が苦笑いを浮かべていると、その顔の前で彼女はぱちり手を叩いた。


「よし、じゃあそっちから片付けちゃいましょうか」





クエストより先に片づけなければならないできごとというのも、例の衛兵らとの一悶着が発端となっていた。


「ぜひとも俺をパーティに入れてくれ! チェーロさんこそ、幻のSランク冒険者にふさわしいお方っ! 一生ついていきますから!」

「女性を守るために、あの悪徳衛兵をどかって倒しちゃったんでしょ? しかも、衛兵にスカウトされるだなんて、すごすぎ。私も彼の元で修行したいっ」

「わかるわかる。うちのパーティも、所属ギルドも待遇悪いってのもあるし」


あの一幕で、かなり名前が知れてしまったらしい。

屋敷の外には、パーティメンバー志望者がわんさか参集していた。



エミリイさん含め、レベッカの使用人らが応対してくれているが、収拾はつかない。


「私、チェーロさまとお近づきになりたい……じゃなくてパーティに入りたいっ」

「俺はレベッカ様と仲良くなりてぇぜ! あのやんごとなき身分に容姿……! 同じパーティに入って、ずっと眺めていてぇ」


中には、邪な思いを隠さぬ者さえ紛れていた。


俺とレベッカは、階上のバルコニーからそれを遠目に眺める。


「…‥すごいことになってんな」

「あはは〜、大丈夫です。安心してください。私はチェーロさんだけのレベッカですからねっ♡ あーいう不埒な人は、パーティにいれませんよ」

「前半の発言はともかく。そりゃあその方がいいだろうよ。でも、そういう輩を除いても、到底抱えきれない人数だぞ」


もはや、すぐにでもギルドを作れてしまいそうな人数だ。


「嬉しい悩みですよね。昨日まで誰一人申し込んでくれなかったのに、今日はパーティの志願者が屋敷にまで殺到するだなんて」

「……身分が思いっきりバレたのはいいのかー?」

「あの状況じゃ仕方ないですよ。それより、新メンバーのスカウトチャンスです! 前向きに捉えていきましょうっ」


レベッカは能天気にこう言って、拳を握り締める。


「……ま、それもそうだな」


ひとまずは彼女に同意した俺だったが……撤回せざるをえない状況はすぐそこに待ち受けていた。


俺たちが門の前まで出ていったところで、志望者たちが突然に次々と離脱しはじめたのだ。

一気に閑散とする屋敷前。


そこへリーダー格らしき男が、がなりあげる。


「おいおい、ずいぶん勝手なことをしてくれるじゃないか。俺たちのコマ……おっと口が滑った。大事な大事な魔法使いたちを引き抜こうなんてよぉ!」


一難払ったと思えば、また一難だ。


うーん、どの立場の人間にも一定数、どうしようもない人はいるらしい。


趣味の悪いカラス柄の紋で、誰なのかはすぐにわかる。

マーレシティに籍を置く商会・ノワール商会。


不当な残業を強いていたり、使えないと分かるとすぐクビにしたり、汚れ仕事もやらせているだとか。


あくまで噂とはいえ、悪名の絶えない団体からの刺客らしかった。


……というか、引き抜きをしかけたわけじゃないんだけどね? 勝手に集まってしまっただけだ。



応援いただきありがとうございます。


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引き続きよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 辺境伯が認めているパーティにイチャモンつけたら、どうなるかわかってて言ってるのかな? イチャモンつけた商会がバレた場合、辺境は勿論、もしかしたら、国中から追い出されるかもしれないのに・・・…
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