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第十八話 交渉冬の陣

今回から1ヶ月間、火曜日投稿と致します。

ルフィア、初めての商談に挑戦です。

 年が明け、トマトも無事実った。


最初は不安で一杯だったが、なんとか実ってくれて一安心、と言ったところだ。


私は慎重に厳選しながら収穫していく。


その後で私は馬車を借り、フェミータ王国まで向かうことにした。


交渉のために。


初めての商談の挑戦、緊張感が高まる。


しかも「ルフィア」ではなく、「ルナ」としての挑戦。


バレたらダメだ、バレたら……と思うと本当に怖い。


トマトを箱に詰め、馬車の荷台に乗せて出発していった。



 なんとかルフィアだとバレずにフェミータ王国へ入国することができた私は、農業組合の関係者が集う煉瓦造りの建物へ足を運ぶ。


白髪の恰幅のいいオジサンが座って待っていた。


髪を切って、且つ黒く染めていたので、まあ気付かないだろうな、と思っていた。


「君がルナ・ヴァンビィかい?」


「はい、そうです。」


「そうか。クレイスター村というところから来たという話だが……」


「そこでトマト農家をしております。今日は商談に来まして……」


利権という温床があれど、国に来るものには平等だ。


それを私はよく知っている。


「この時期にか。どれどれ……」


白髪のオジサンは、私のトマトを物色する。


「……どうでしょうか。私の作ったトマトは。」


「……悪くはない、悪くはないが……()()()()()()()()()()という感じだなあ。」


「私なりに研究を重ねた結果です。」


普通、と言われたかのような言葉にカチンと来たのか、私はこう反論した。


オジサンはトマトをひと齧りする。


お味はというと。


「……うん、思った通りだ。甘すぎず酸っぱすぎず……良くも悪くもバランスが良すぎる。」


「……そうですか。」


「決してクオリティの面では店頭に並んでいるトマトにも引けは取らない、僕はそう思う。しかし、いかんせんインパクトを君のトマトからは感じない。売れても中流階級止まりだろうね。」


褒めるところは褒め、貶すところは貶すという、そういった批評を下したオジサン。


内心訝しげに思いながらも、社交辞令として、ポーカーフェイスを崩してなるものか、と我慢する。


「だとしても、これでは王宮も買わないだろうね。ただ、君はまだ若い。まだ20だろ? ルナ、君は。……夏にまた来るといい。」


「……お心遣い感謝いたします。……ですが分かりました。まだ、王宮で買うまでには至らない、そういうことですね……?」


「ああ。そうだ。君にはまだ、超えるべき壁が多い。それが現実だ。」


「そうですか……では、私はこれで。」


私は一礼し、トマトの入った箱を持って農業組合を後にした。



 正直私はショックだった。


()()()()()()()()()()()


それでこの位置か……。


あの2年はなんだったんだ……?


久しぶりのフェミータの街を歩きながら、私は唇を噛み締める。


今日は宿に泊まる事にした。


お金は泊まれる分はあるし、部屋も一人部屋は空いているとのことだった。



 ただただ悔しかった。


何も成長していなかった、その事実に打ちひしがれる。


やるべき事をやって、それで普通という立ち位置。


これではラヴィオに顔向けできない……そう考えると腹の奥がギュウッとなる。


トマトは宿屋の人に保管してもらっているが、正直私自身に失望している。


何をやってきたんだ、寝る間を惜しんで何を作っていたんだ私は……


私の心は、この時にボキンと折れた。


交渉冬の陣は、私が初めて味わった「挫折感」だった。

努力報われず。

でも切り替えが早いのもルフィアのいいところ。

次回はそれを見せます。

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