第十七話 商談に向けての準備
ぶっちゃけこの回は間話みたいなもんです。
「ルナ・ヴァンビィ」が「ルフィア・ヴィスパーダ」だとバレたら結構大問題ですからね、現状として。
まあ言っちゃえばイメチェン回です。
フェミータ王国進出を図りたい私は、ヴァルディアの美容室へ足を運んでいた。
「いらっしゃい、今日は何の用だい? 嬢ちゃん。」
店主の叔父さんが私に陽気に声をかけてくれた。
「髪を切るのと……髪を染めるのとで来たんですが。」
商談に向けて、「ルフィア」だとバレないようにしなければいけないので、髪を切って、且つ染めようとしていた。
「おー、わかったわかった。それじゃ、どんぐらいまでいく?」
「長さは首の下辺りまでで……色は黒でお願いします。」
「はいよ! 任せときな!」
こうして私の髪を叔父さんは切っていき、黒い染料を私の金髪に塗りたくった。
さよなら、私の金髪。
正直名残惜しさはあるけれど、ぶっちゃけ今は仕方のないことだ。
国外追放処分を受けているのに国に入ったら、それこそ死刑は避けられないかもしれない。
だからこそイメチェンは大事。
そんなこんなで染まりきるのに3時間は掛かるそうだ。
私は叔父さんの与太話をその間に聞いた。
「不穏な噂を耳にしちまってな、嬢ちゃん……興味あるか?」
「? 不穏な噂とは? ご主人。」
「……どうやら……フェミータ王国のラヴィオ王子が、何者かによって毒殺されかけた、って話だ。」
え? 嘘でしょ?? ラヴィオが??? ただ、生きているだけで一安心といったところだろうか。
私は内心でこう思ったが、お首に出すわけにはいかない。
「……それで、ラヴィオ王子の容体は? 具体的な情報はあるんですか?」
客観的に話を聞こうとした私ではあったが、気が気でないのはわかる。
叔父さんはこう、私に話した。
「意識不明だとさ。命に別状はないとのことだけどよ……王族を殺害しよう、なんてとんでもねえことを企む輩もいるもんだよ。」
「……そうですか。」
ホッとしたのはあるが、やっぱりラヴィオが心配になってくる。
「……嬢ちゃん、スパイアから聞いたよ。フェミータに行くんだって? 商談で。」
オイ、何ひけらかしてんだ、オッサン!!
内心ツッコミを入れたが、出したらマズイ、顔に出すな……!!
そう思って私はこう答える。
「ええ……。私の作ったトマトを売りに……」
「……気いつけな。あそこは結構な……? 利権の温床だ。嬢ちゃんみてえな若えやつにそう簡単には交渉には応じてはくれねえぞ。特に国外からの売り物には厳しい。重い関税がかかるこたあ覚悟しときな。」
「……ですね。そこは覚悟はしています。」
「まあ、嬢ちゃんはまだ若え。幾らでもやり直しは効く。めげんじゃねえぞ。」
「ありがとうございます。」
そんなこんなで染髪が終わった。
漆黒に染まった髪を見て、私は新鮮な気持ちになった。
これならバレずに済む、と。
私は意気揚々と自宅へと戻っていった。
帰りに薪を購入して。
ログハウスに帰宅し、早速暖炉に薪を焚べる。
窓を開けているので、一酸化炭素中毒の心配はない。
ただ、本当になかなか寝れなかった日々が続いたので、私は眠りこくってしまった。
色々疲れたのもあっただろうが、トマト栽培に向けて、力を蓄えるために。
結構この章は長いんで、どうなるかなー……って感じですけど、ゆったりと進めていきましょうかね。
って感じでまた次回。