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第十五話 直接対決

再調査編終幕です。

だいぶ駆け引きしてますけど、今回はちょっと覚悟してます。

ポイントは減ってしまうのも覚悟の上ですんで、皆様発狂の御準備だけをお願いします。

 私はエリンと再び二人っきりとなる時間が出来た。


ジャンの騒動を収めるのに相当な時間を要した。


父上やマシューが上手くそこら辺はやってくれたのはあるが、次に収束させなければいけないのは、ルフィの事件の黒幕であるエリン。


私の動きはおそらく察知されているだろう。


ジャンという、自らの手駒を私が拘束したのだから。


ともかく吐き出させるのが一番手っ取り早い、それは事実。


ただ、エリンには頭脳がある。


一国の軍師を務められるであろうぐらいには頭が切れるし、策謀も上手い。


それは私もジャンの件があって真相を知ったので、油断を見せれば死を覚悟している。


しかも私は事前に、執事からこんなことを聞かされていた。


「私を毒殺する気である」と。


エリンが黒だと知ってしまった私を口封じにするタマなのだろうが、そうなれば()()()()()()()()()()()()()()()()()


殺して仕舞えば吐いたことも全てパーになるからだ。


恐らく遅効性の強毒。


そうすることで疑いを晴らす。


そういうことも視野に入れているはずだ、だがそうはいかなかった。


意識は失っても、生きてさえいればエリンは立件できるのだから。



 そこで私が取った行動は、()()()()()()()()()()()()()だった。


まず部下に、毒キノコを山から大量に採らせて、その後で薬草を煎じた茶を用意させた。


執事や侍女からは何度止められたかはわからない、だがやるしかない。


必ずルフィの無罪を証明するためにも、私がここでくたばるわけにはいかないのだから。


毒キノコを一度に大量に食し、30分後に毒が効いてきたら茶をゆっくりと飲む。


そしてそれを大便と共に腹から吐き出した。


これを一日3回、4日これを繰り返した。


すると不思議なことに、毒への耐性は多少できた。


自然毒だけとはいえ、最低限死なないだけの抗体が出来上がっているのは分かる。


私自らが体を張るのだ、これくらいは王族といえどもせねばならない。


こうして私は、エリンとの会合に臨んだ。



 エリンの部屋に入り、私はエリンと二人っきりとなった。


さて、ここから始まるのは駆け引きだ。


他愛もない話という名の。


「最近はどうだ? エリン王女。」


砂糖の入った瓶にスプーンを入れ、砂糖を入れていく。


私は甘党なので、エリンもそこら辺はよく知っているはず。


砂糖に混ぜるなどは流石にチャチな手だと思っていたので、事前に紅茶に仕込んでいるか、カップの中に仕込んでいるかの2()()だ。


狙いならおおよそはわかる。


私は砂糖をカップに入れて混ぜるのに何の躊躇いもなかった。


「うーん……特には何もございませんわよ?」


「それならいいんだが……」


(やはりジャンのことを話す気はないか……まあ流石にそこを話す気はないが。)


「従兄様は……いかがですか?」


「軍のことで忙しくてな……今日やっと、時間が取れたところだよ。今度、クレイスター村へ視察に行こうと思っている。あとは近衛隊長に任せてるよ。」


「そうですか……お変わりないようでしたら何よりでございますわ。」


(やっぱりジャンのことを言っているのかしらね……でも従兄様は何の疑いもなく紅茶をお飲みになってる……何を考えてらっしゃるのかは分からない、でもここで潰しておかないと私の身が危ないから……)


「……エリンは何処か行きたいところなどはないか? 今すぐには予定が多いから無理だが……今度空けば連れていくぞ?」


思いがけないことを聞かれたエリンは戸惑ったような顔をしていた。


完全に、面食らったかのような。


「私は……そのようなことは……」


「どこでもいいんだぞ? 辺境の田舎でもいいし、観光名所でも構わない。時間の許す限り……何処だって行けるじゃないか。」


「そう……ですわね……強いて言うなら……チューリップ畑を歩きながら……風車をラヴィオ従兄様と二人で眺める時間があれば……」


「チューリップ畑で風車を見ながら、か……確かに絵としてはいい風情になるかもな。」


女の子らしいな、と思いながら私は紅茶を飲んだ。


「ですが何故……そのようなお誘いを私に……?」


「最近エリンが思い詰めた顔をしていたからな。気分転換にでも、と思ってな。」


「そ……そう、でしょうか……本当に、よろしいのですか!?」


「構わないさ。時間の許す限り、いくらでも付き合うよ。」


「ありがとうございます!!」


(でも……いいのかな、このようなことを……口封じにする予定だったのにこれじゃあ……)


紅潮している顔、効いているのは明白だ、動揺を誘えている。


あとは私が倒れれば完璧なのだが……


かなりの遅効性のようだ。


私は毒が効き始めるまで、エリンと他愛もない会話を繰り広げていったのだった。


さりげなく、慎重に、言葉を選びながら。



 エリンの部屋を後にし、部屋へ戻ろうとした時に異変が起こった。


急な目眩が私を襲った。


ここにきて毒が強まったか……そう感じたのと同時に、足に痺れが襲ってきて、立つのもままならない。


だが、()()()()()()()()()()


やはりエリンが、ルフィの事件の実行犯だったのだと。


やがて私の意識は彼方へ飛んだ。


(ルフィ……! 私は必ず、お前を救い出してやる……!! お前のために、私は生きてみせる……!!)


心でそう誓ったが、私の意識は徐々に薄れていったのだった。



 「今頃効いているのかしらね……あの毒が……」


苦い顔になりながら、執事にそう問いかけるエリン。


「左様、あの毒はそうそう解毒できませぬ故。」


「ならいいんだけど……」


引っかかっている箇所がある。


ラヴィオが何故、エリンに行きたいところを教えてほしいなどと言ったのか……そこがエリンにとっては気がかりで仕方なかった。


(よかったのかしら、これで……おそらく私にお気を遣ったのだろうけど……もしラヴィオ従兄様が生きていたんだとしたら……ううん、それより他のこと、考えましょ。)



 私の毒殺未遂事件が、フェミータ王国自体を大騒ぎさせる自体を引き起こしていたのだが、ルフィが知る由はないだろう。


物語は再び、ルフィア・ヴィスパーダへと移っていく。

視点ごっちゃになったな……でもラヴィオと僕で語り部を務めているので大丈夫でしょう。


ラヴィオは死んでません、御安心を。


次回からはルフィア視点にまた移ります。

村の市場で十分に売れたルフィアは、フェミータ王国での商売に舵を切るのですが……といった感じで次章がスタートします。

次章「フェミータ王国進出編」です。

ルフィアの挫折、そして行動力がフェミータを大きく動かします。

物語は終盤になりかけてますが、最後まで頑張って書こうと思いますので、次回もお楽しみくださいませ。

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