第十三話 事件の真相①
再調査編は、この回含めてあと3話です。
私はエリンの部屋を後にし、更に追加で調べることにした。
エリンの身辺を徹底的に調べる。
疑っているわけではない、疑っているわけではないんだ……と、自らに言い聞かせながら。
エリンの母である叔母上にもそうだが、身の回りの貴族達にも話を聞いてみる。
去年のこの時期に、エリンに怪しい動きはなかったか、と。
しかし、悉くハズレだ。
全員「ない」とキッパリと言ったのだ。
口止めをされている可能性はあるが、まあそこまで期待してても仕方がないしな、と言い聞かせて部下に命じる。
「すまないな、頼みがある。」
「ハッ。何なりと。」
側にいる執事に私は頼み込む。
「エリン王女の……監視を一週間頼みたい。ただ、エリン王女は頭が良いから慎重に頼む。」
「仰せのままに。」
そう言い残した執事は監視に赴いて行ったのだった。
私は書斎で残務書類に目を通した。
軍隊長として部下を率いねばならないが故、軍事関係の書類には必ず目を通している。
(しかし……エリンが犯人じゃないとしたら学友を招待んでパーティーを開いてまでしてじゃないと調べようがないしな……ルフィを妬んでいる学友も多かったわけだしな……現実問題として。……まったく、問題が多すぎるな、この国には……)
私はやり場のないため息を吐いた。
一週間後、執事から報告が届いた。
エリンは特に変わりはなかったとのことだった。
おかしな行動をしている素振りもなかったという。
困ったな、と私は思いつつ、こうなれば最終手段に出なければ、とは思ったが、まだ探りの段階だ、焦ってはいけない。
「よし……軍の訓練が終わったら裁判の履歴を調べると共に……ルフィの他に冤罪を犯したものがいれば秘密裏に解放する。ついて参れ。」
「かしこまりました。」
解放とはいっても、フェミータの法律上、再審請求をする場合は王宮の別の部屋で隔離させなくてはいけないので、そこに移す作業を行うと共に、エリンに対しての実験でもあった。
自白剤を使い、エリンに去年のことを吐き出させる。
それ以外に選択肢なんて何一つないのだから。
それを犯罪者、というか、受刑者にさせるのだから、かなりの量を要する。
他の部下達に自白剤入りの食事を作らせると同時に、私と執事で裁判の履歴と担当裁判長を調べることにした。
法というのは、常に平等でなくてはいけないのだから。
2人で徹底的に去年の裁判の履歴を調べて行った。
すると、同じ名前が。
「ジャン・アルツマン」という名の裁判長。
しかも去年のだけで見れば、悉く女性の被告人の裁判長を担当していたのだった。
全員軽い罪ではあるのだが、ルフィ以外の全員が禁固刑となっていた。
何故こうも出来るのか……とは思ったが、執事はこの名を見て私に進言した。
「この男……ジャンは……エリン王女の担当家庭教師だった男です。頭の切れる男なのですが……どこか手段を選ばない男でしてね……問題視した私たちから執事会を追放されたのですよ、5年前に。まさか司法の長になっていたとは……」
「ということは……」
「おそらく、エリン王女の差金でしょう。……よく見てくだされ、あの女囚達は……パーティーの時にラヴィオ様にお近づきになられた方々でございますぞ。名代で記録しておりましたが故、今、思い出しております……」
「……だが、思い過ごしというのもある……とにかく全てが明らかになれば、奴は更迭させるかもしれん。過去がどうとかで判断してはいけないからな。偶然という可能性も考えておこう。そうなれば、禁固刑の女囚がカギを握ってくるな、やはり。」
「そのようでございますな。では、行きましょうか。地下牢へ。」
私たちは地下牢へ赴き、女囚達に手当たり次第、真実を聞きに行くことにしたのだった。
次回も再調査です。
ターニングポイントになるかとは思います。